「これから
「は?」
また
しかし赤いダボシャツのトラック野郎な漫画家はオレの『黙れオーラ』にちっとも気付かず、呑気に与太話を続ける。
「だって今時の若者って体に入れ墨─タトゥー入れるのに抵抗無いコいるじゃん?そんで外国人が漢字のタトゥーを『愛』とか『家族』とか、勘違いしてるヤツは『人参』とか『痛風』とか入れちゃうのを面白がって真似してさ。それがエスカレートしたら全身に梵字入れちゃうかもしれないだろ。そしたら渋谷のスクランブル交差点とかが透明人間で溢れ返る事になるんだぜ。激突しまくりで、危なくって歩けやしねえ」
「ちょっと何言ってるか分かんないんスけど……」
「ヤダなあ、有名な話だぞ」
施術台にうつ伏せになっている文太さんはわざわざ首を持ち上げて、オレを振り返りニヤニヤしている。首が痛くて回らないとか言って
「そんな、
隣のベッドで
「全身に梵字──般若心経を書いて
「あっそういう事?」
それならオレだって知っている。平家の怨霊に気に入られて毎晩墓場でライヴをさせられていた琵琶法師が、このままでは
「アハハ、もうバレたか。諸行無常だな〜」
ゲハゲハ喜ぶ文太さん。両耳を引きちぎりたい衝動を何とか抑え込む。
そんなワナワナしているオレに、真見が告げた。
「ご心配なく
「ちょっ、えっ?」
物騒な事を言う真見に文太さんが慌てて上体を起こした。真見は一番太い八番鍼を手に彼を見下ろしている。長い髪の隙間から覗く無表情が怖い。文太さんが怯えた目で見上げる。
「冗談…だよな?」
「神経の宝庫とも言われる耳にはたくさんの
金縛りに遭ったかの様に動けない文太さんの耳に向けて真見が鍼を構える。オレが呆然としていると、背後からトントンと肩を叩かれた。振り向けば受付のマヨ
それによると神門は自律神経を整え血流を促す、健康にとても良いツボだ。
「て、天国の門とかまだ行きたくないんだけど……」
「地獄の門よりいいでしょう?」
「わあっ、ふざけてすみませんでしたっ!」
焦って謝る文太さんの様子に、真見は薄く笑った。
──という訳で現在、ぎゃらん堂シリーズに代わる新作シリーズを執筆中です。春には連載開始できると思いますが、その予告編的なモノをお届けしました。新作にはこのぎゃらん堂メンバーは全く出てきませんが、今回のネタが新作に微妙に繋がっています。どう繋がっているか、是非お確かめください。