目次
ブックマーク
応援する
2
コメント
シェア
通報
三・五話  なかまにいれてよ

ここ・・よね、幽霊がたくさん出るとこ。

自殺の名所。心霊スポット。

…ホント、岩だらけ。

墜ちたら…バラバラね。

でも波が綺麗にしてくれるよ、うん。


聞いたの、自殺したら地縛霊になるって。自分が死んだのよく分かんなくて、ずっとその場にいるって。

ここ・・ならそんな人がたくさんいるはず。

幽霊とか視た事ないけどね、あたし。霊感とかそんなの無いから。

でも、いる・・んでしょ?


生きてるの辛くて、どうしようもなくて…違うかな。

もういいやって面倒くさくなった?

あたしもそうだよ。   

そりゃアイツに騙されてたのは辛いよ。結婚してくれるって言ったから貯金全部渡したのに……

部長だって同期の皆だって殺してやりたい。大卒がそんなに偉いわけ?高卒の事務は奴隷扱いしていいと思ってんの?ふざけんなよ!


……相談できる友達でもいればさ、良かったけどね。

でも自殺サイトまであんなコミュニティ出来てるなんてさ。皆悩みとか打ち明け合って、楽しそうで……

あたし、そういうグループに後から入れないもん。親が離婚して、ママが働き過ぎて死んじゃって、転校ばっかでさ。クラスではもう仲良しグループもカーストも出来上がってて、あたしは誰にも相手にされなくて……


顔もブスだし頭も悪いし、陰キャだしコミュ障だし、スマホのお金も無かったもん。

そのまま大人になったんだから。無理だよ、今さら。



でもここ・・なら、いっぱいいるんでしょ?

だったら、あたしみたいにどうしようもなくなって、居場所が無くなって、飛び降りた人もいるよね?

何人か…ううん、一人でもいい。

一人くらいいるよね?

あたしの話聞いてくれる人。

『分かるよ』って、『大変だったね』って言ってくれる人、いるよね?

そんな人達が集まってる場所なんだよね?


ねえ、仲間に入れてよ。


お願い──







………なんで?


なんで誰もいないの?


自殺の名所じゃなかったの?


痛いよ。


誰か返事して。


誰か。ねえ、痛いってば!


独りは嫌だよ!


誰かあ!



 ……自殺して地縛霊になると、何十年、何百年とその場で自殺し続けるという。

 苦しさからせめて誰かに気付いてもらいたいと自分の存在をアピールしても、霊感の無い者にはその姿は視えない。


 例え幽霊同士でも。





「──というのはどうでしょう?」

 真見まみが無表情で問う。

 訳あって少年野球チームのお泊まり会で怪談を披露する事になった彼女が、試しに考えてきた話だそうだ。

 隣にいるマヨねえが両手で口を覆っている。きっとオレと同じ感想なのだろう。


 怖過ぎる。

 子供は絶対泣く。


 固まるオレ達の様子に、真見は首を傾げる。

「やっぱりあっさりし過ぎてますか?長いお話は子供達が飽きるから、こういう短いのを百話しようかと思ったんです。百物語って事で、最後に蝋燭ローソク消して──」


 やめて。



コメント(0)
この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?