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第53話 黒天元帥、チキチキクイズをする

「フーハッハッハ! ということで! 今宵も素敵な回答者のメンバーが集まってくれたぞ! まずは、神仙の叡智の結晶――終末決戦人型仙宝白星娘々!」


「どうも。白星娘々あらため、ヴィクトリアです」


「続いてモロルド島の鬼子母神! 東洋アラクネ――絡新婦のルーシー!」


「なんですのん? 帰ってよろしいやろか?」


「そして! 我らが絶倫好色王! 不肖の弟子候補No.88! ケビン・モロルド!」


「ですから、弟子はお断りさせていただくと言っているでしょう」


 結界術の力か、はたまた黒天元帥の話力か。

 俺たちは流れるように、彼のクイズに答えることになった。


 ただ――誰に紹介しているか不明だが――俺たちの素性にずいぶん詳しい。

 神仙に造られたヴィクトリアを知っているのは納得できる。

 だが、俺とルーシーのことまで知っているのはどうしてだ。


 死してなお、人を見通すのか。

 これが神仙――。


「おや、我が不肖の弟子よ? 私に心を読まれて動揺しているのかな?」


「だから、弟子になるつもりはないと」


「心配しなくても、この余興が終わる頃には、キミも心が読めるようになるさ……!」


「……本当ですか?」



「師である私の親心がね! フーッハッハッハッハ!」



 どうしよう。

 島の未来は大事だが、この男を師と仰ぐのは嫌だ。

 死んだ神仙とはいえ、この人の門人だと思われるのはツラい。


 そしてひたすらノリが苦手だ。

 神仙なのだからもっと落ち着いてくれ。


「旦那はん、あきまへん。ウチ、堪忍袋の緒が切れそうですわ」


 猿叫大師を倒して手に入れた槍を手にルーシーが冷ややかな笑みを浮かべる。

 気持ちは同じだが、ここは堪えてくれと俺は逸る愛人をなだめすかした。


「フハハハッ! さて、クイズに全問正解しろとは言ったが、流石に私も鬼ではない! せっかく三人いるのだから、一問につき三回まで回答権を与えよう!」


「理不尽なくせに、妙なところで優しい……!」


「それでは第一問! この私――黒天元帥についての問題!」


『ピンポン♪』


 さっそく、ヴィクトリアが台のベルを叩く。

 どうやら回答する時は鳴らすらしい。


 ただ――。


「まだ問題は出ていないというのに、分かったというのかヴィクトリア娘々! 流石はコンロンの神仙が造ったスーパー人型決戦仙宝!」


 まだ、クイズを読み上げてないんだよな。


「答えは……『バカの総大将』!」


「残念、不正解だ! 元帥だから総大将はあっているかな!」


『ピンポン♪』


「おっと、ルーシーくんもはやい! 回答をどうぞ!」


「脳みそが心太(ところてん)ですんやろ?」


「ハッハッハッハッ! ぷるぷるなのは唇と肌だけさ! フハハッ、不正解ッ!」


 問題も聞いていやしないのに、さっそく嫁が回答権を使い切った。


 ルーシーもヴィクトリアも武闘派だ。

 考えるより手が出る方。


 完全に人選を見誤った。

 助けてくれ――セリン、ララ!


 心で描きながら、俺は黒天元帥のクイズにしっかりと耳を傾けた。


「私、黒天元帥は瘟神、財神の神格と共に、もう一つの神格を持っていますが、いったいなんでしょうか? さぁ、不肖の弟子よ答えたまえ!」


「し、神格……?」


 そしてまた内容が東洋由来で難しい。


 神格とは?

 神は神ではないのか?

 まず神格の意味が分からない。


 考えあぐねいていると、なぜか俺の戸惑いを肯定するように黒天元帥が頷く。


「そうだろうとも! キミは西洋の人間だからね! こちらの神々のシステムについてはよく知らないだろう! しかし、知らないことを知るのも修行の内だゾ!」


「はぁ……」


「仕方ない、特別にヒントをあげよう! 名は体を現すというだろう! 見たまえ、この私のゴージャスでエレガントな服装を! 私の姿をよく観察すれば、もう一つの神格についても自ずと分かるというものだよ!」


 そう言うや、華を口に咥えて黒点元帥が決めポーズをとる。


 まったく分からない。

 むしろ嫁たちの答えがしっくりくる。

 ついつい、神に言うにはばかられる言葉が頭をよぎった。


 そんな中、ふとその腰に結わえられた武器に気がつく。 

 金色の二振りの鞭。

 実用性はなさそうだが、それは間違いなく武器だ。


 よく見ると、彼の履く厚底のブーツは軍靴だ。

 羽織っているのも燕尾服ではなく、撥水性のよさそうなマント。

 ただの貴人や奇人の格好ではない……。


「さあ! 答えは分かったかな! 我が弟子、ケビンよ!」


「軍に関係するもの……? 戦神や軍神というところでしょうか!」


「ベリーナイス! キミなら分かると思っていたよ! しかしね、もっと分かりやすいヒントがあるじゃないか! もう一度、私の名前を呼んでみたまえ!」



「金髪ゴージャスバカ元帥」



「ワーッハッハッハッ! わんぱくな弟子だ! だが、そうでなくては!」


 そうか元帥号。

 軍隊の最上級の階位を彼は冠している。

 ということは、黒天元帥は武を司る神に間違いない。


 名前の時点でヒントがあったのに、それに気がつかないとは……!

 そして、こちらの知恵を試すような、考えれば分かる問題を出してくるとは……!


「黒天元帥。道化なのか、それとも本気なのか……侮りがたい!」


「フフフフフ! では、次の問題に行こうか! 頼むから、今度はもっとスマートに答えておくれよ! とくに、我が不肖の弟子の姫君たち……!」


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