「フーハッハッハ! ということで! 今宵も素敵な回答者のメンバーが集まってくれたぞ! まずは、神仙の叡智の結晶――終末決戦人型仙宝白星娘々!」
「どうも。白星娘々あらため、ヴィクトリアです」
「続いてモロルド島の鬼子母神! 東洋アラクネ――絡新婦のルーシー!」
「なんですのん? 帰ってよろしいやろか?」
「そして! 我らが絶倫好色王! 不肖の弟子候補No.88! ケビン・モロルド!」
「ですから、弟子はお断りさせていただくと言っているでしょう」
結界術の力か、はたまた黒天元帥の話力か。
俺たちは流れるように、彼のクイズに答えることになった。
ただ――誰に紹介しているか不明だが――俺たちの素性にずいぶん詳しい。
神仙に造られたヴィクトリアを知っているのは納得できる。
だが、俺とルーシーのことまで知っているのはどうしてだ。
死してなお、人を見通すのか。
これが神仙――。
「おや、我が不肖の弟子よ? 私に心を読まれて動揺しているのかな?」
「だから、弟子になるつもりはないと」
「心配しなくても、この余興が終わる頃には、キミも心が読めるようになるさ……!」
「……本当ですか?」
「師である私の親心がね! フーッハッハッハッハ!」
どうしよう。
島の未来は大事だが、この男を師と仰ぐのは嫌だ。
死んだ神仙とはいえ、この人の門人だと思われるのはツラい。
そしてひたすらノリが苦手だ。
神仙なのだからもっと落ち着いてくれ。
「旦那はん、あきまへん。ウチ、堪忍袋の緒が切れそうですわ」
猿叫大師を倒して手に入れた槍を手にルーシーが冷ややかな笑みを浮かべる。
気持ちは同じだが、ここは堪えてくれと俺は逸る愛人をなだめすかした。
「フハハハッ! さて、クイズに全問正解しろとは言ったが、流石に私も鬼ではない! せっかく三人いるのだから、一問につき三回まで回答権を与えよう!」
「理不尽なくせに、妙なところで優しい……!」
「それでは第一問! この私――黒天元帥についての問題!」
『ピンポン♪』
さっそく、ヴィクトリアが台のベルを叩く。
どうやら回答する時は鳴らすらしい。
ただ――。
「まだ問題は出ていないというのに、分かったというのかヴィクトリア娘々! 流石はコンロンの神仙が造ったスーパー人型決戦仙宝!」
まだ、クイズを読み上げてないんだよな。
「答えは……『バカの総大将』!」
「残念、不正解だ! 元帥だから総大将はあっているかな!」
『ピンポン♪』
「おっと、ルーシーくんもはやい! 回答をどうぞ!」
「脳みそが心太(ところてん)ですんやろ?」
「ハッハッハッハッ! ぷるぷるなのは唇と肌だけさ! フハハッ、不正解ッ!」
問題も聞いていやしないのに、さっそく嫁が回答権を使い切った。
ルーシーもヴィクトリアも武闘派だ。
考えるより手が出る方。
完全に人選を見誤った。
助けてくれ――セリン、ララ!
心で描きながら、俺は黒天元帥のクイズにしっかりと耳を傾けた。
「私、黒天元帥は瘟神、財神の神格と共に、もう一つの神格を持っていますが、いったいなんでしょうか? さぁ、不肖の弟子よ答えたまえ!」
「し、神格……?」
そしてまた内容が東洋由来で難しい。
神格とは?
神は神ではないのか?
まず神格の意味が分からない。
考えあぐねいていると、なぜか俺の戸惑いを肯定するように黒天元帥が頷く。
「そうだろうとも! キミは西洋の人間だからね! こちらの神々のシステムについてはよく知らないだろう! しかし、知らないことを知るのも修行の内だゾ!」
「はぁ……」
「仕方ない、特別にヒントをあげよう! 名は体を現すというだろう! 見たまえ、この私のゴージャスでエレガントな服装を! 私の姿をよく観察すれば、もう一つの神格についても自ずと分かるというものだよ!」
そう言うや、華を口に咥えて黒点元帥が決めポーズをとる。
まったく分からない。
むしろ嫁たちの答えがしっくりくる。
ついつい、神に言うにはばかられる言葉が頭をよぎった。
そんな中、ふとその腰に結わえられた武器に気がつく。
金色の二振りの鞭。
実用性はなさそうだが、それは間違いなく武器だ。
よく見ると、彼の履く厚底のブーツは軍靴だ。
羽織っているのも燕尾服ではなく、撥水性のよさそうなマント。
ただの貴人や奇人の格好ではない……。
「さあ! 答えは分かったかな! 我が弟子、ケビンよ!」
「軍に関係するもの……? 戦神や軍神というところでしょうか!」
「ベリーナイス! キミなら分かると思っていたよ! しかしね、もっと分かりやすいヒントがあるじゃないか! もう一度、私の名前を呼んでみたまえ!」
「金髪ゴージャスバカ元帥」
「ワーッハッハッハッ! わんぱくな弟子だ! だが、そうでなくては!」
そうか元帥号。
軍隊の最上級の階位を彼は冠している。
ということは、黒天元帥は武を司る神に間違いない。
名前の時点でヒントがあったのに、それに気がつかないとは……!
そして、こちらの知恵を試すような、考えれば分かる問題を出してくるとは……!
「黒天元帥。道化なのか、それとも本気なのか……侮りがたい!」
「フフフフフ! では、次の問題に行こうか! 頼むから、今度はもっとスマートに答えておくれよ! とくに、我が不肖の弟子の姫君たち……!」