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第13話 絶倫領主、セイレーンに花街を任せる

 かくして絶倫領主はその肉棒――ではなく肉体により、セイレーン四姉妹を成敗した。

 男たちは解放され、絶倫領主たちに先んじて本土へと戻された。


 事件は丸く収まった……。


 と、終われればよかったのだが。


「やはりこの件、俺の一族絡みのできごとだったか」


「はい。我らセイレーンたちは、代々モロルドの領主にこの島で飼われておりましたの」


「この島はそもそも逆ハーとは真逆の、セイレーンたちを飼育するための島」


「ここで私たちは、西国の貴族好みの商品として仕上げられ、商船の荷に紛れ込ませて出荷されていくのです。私も、モロルドが領土放棄されることがなければ、数ヶ月後には本土の貴族に売り渡される予定でした……」


 燕鴎四姉妹から語られた、セイレーン逆ハー島の真実は俺を打ちのめした。

 今から本土に逃げた父上とカインを、とっちめてやろうかと思うほどに。


 俺の一族はセイレーンの奴隷商売を行っていたのだ。


 有翼であることを除けば、普通の人間と大差がないセイレーン。

 そこに目をつけたモロルドの祖先は、密かにこの地図にない島にセイレーンを囲い、文字通り彼女たちを飼育・繁殖してきた。


 若い男を島に放り込み、セイレーンに精を絞り取らせ、子を産ませる。

 そして、妙齢まで育ったセイレーンから、その翼をそぎ落とし――普通の人間と見栄えを変わらなくする。


 あとは本土の好事家にお任せあれ。


 そんなあくどい商売に俺の家族は手を染めていたのだ。

 弟のカインまで。


「領地を召し上げられた領主の手の者は、鎖を外すなり『どこへなりとも行くがよい』と無責任に言い放ちましたわ……!」


「先に私たちを籠の鳥にしたのは、アイツらだっていうのに!」


「そこで、私たち――血統書つきの高級セイレーン奴隷として、特別に飼育されていた四姉妹が、島のセイレーンをまとめあげて蜂起したんです」


「とはいえ、セイレーンは女しか生まれることのない生き物ですの。種を残し、次の世代を産むためには、男の精がどうしても必要になりましてよ」


「飼われる側から飼う側へ! 私たちは――男たちを速やかに集めることにしたのさ!」


「それが旧都を襲った理由にして、逆ハー島誕生のいきさつです」


「…………なるほど」


 この地を治める領主として。

 そして、彼女たちに辛い宿命を負わせた一族につらなる者として。

 どういう言葉を紡ぐべきかとても迷った。


 自分のやったことではない。

 水に流せと言うこともできる。

 だが――彼女たちの苦労を思えば、そんな無責任な言葉は吐けない。


 俺はすぐさまその場に膝を突き、額を地面に擦りつけた。


「すまない。俺の家族と祖先が、君たちに酷いことをした。この罪は、俺とその子孫が、何代もかけて償っていこう。どうか、許してくれ」


「…………なっ! 絶倫領主が、我らに頭を下げるといいますの!」


「ちょっ! ちょっと待ってよ、絶倫領主さま! たしかに、私たちは酷い目に遭わされたけれども! それはアンタじゃないよ!」


「そうです! 絶倫領主さまは、なにも悪くはありません! むしろ、私たちのことにこんなにも理解をしめしてくれて……! うぅっ、絶倫領主さまが、私たちの本来の領主さまだったならば、どんなによかったことか!」


 ただただ一族の愚行を詫びることしかできぬ俺を、彼女たちは寛大にも許してくれた。

 ここにセイレーンと人類――というより、モロルド家とのわだかまりはなくなった。


 とはいえ、問題はまだ残る。

 このセイレーンたちを、これからどうするかだ。


「……ざっと、この逆ハー島だけでセイレーンは100人ほどいるようだな?」


「そうですわね。孵化待ちの娘もいますから、まだ増えますわよ」


「セイレーンは卵生だからね! 繁殖速度はものすごいよ!」


「もちろん、ちゃんと避妊すれば無精卵になりますよ。卵を産むのは、セイレーンにとって生理現象のようなものですから。そうそう、セイレーンの卵は滋養強壮に効果があることでも有名で、勃起しなくなった男性も卵を飲ませればあら不思議……♥♥♥」


「君たちに行くあてはあるのか?」


 この狭い島で自由を奪われたまま、この美しい乙女たちに朽ちていけというのは、いくらなんでも残酷すぎる。彼女たちに領主として、生きる場所を用意してあげなければ。

 とはいえ、そんな場所があるだろうか……。


 いや、あるな。

 ひとつ、ぴったりな場所が。


「燕鴎四姉妹……いや、セイレーンたちよ。ものは相談なのだがな?」


 俺は一族の手により、性技を仕込まれた有翼の乙女たちに、その技術を自由意志で使ってみないかと提案してみることにした。もちろん、それ以外の選択肢も含めて。

 ちょうどこの島は、船夫たちの癒やしの場を必要としていた。

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