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弱小貿易国家の絶倫領主、モンスターの姫を娶りまくる 〜嫁の力で再開拓する、 ハーレム領地経営〜
kattern
異世界ファンタジー内政・領地経営
2024年08月31日
公開日
39,140文字
連載中
東洋にある飛び領地のモロルドは歴代領主の放漫領地経営が祟り、本国から領土放棄されてしまう。
領主やたちが本国に戻る中、島民たちの怒りを押さえるため残された庶子のケビンは、モロルドを国として独立させ再興を図るのだが――なぜか気がつくと多数のモンスター娘を嫁に迎え、ハーレム(後宮)王国を作りあげていた。

嫁たちが戦う、無双する! 自分を捨てた国と、家族にリベンジする! あと、主人公も強くなる(たぶん)!
そして嫁たちとひたすらいちゃいちゃする! 捨てられ島の領土経営ファンタジー!

第1話 絶倫領主、海竜の姫をめとる

「ほう、人の子よ、我らが棲処である龍鳴海峡を通りたい……と?」


「はい! どうか我が願いを聞き届けください!」


「……ならぬ! 身の程をわきまえよ!」


 大陸とモロルド領の諸島を分かつ海峡。

 十隻も船が通れるかという内海。


 さきほどま晴天だった空にたちまち暗雲がたちこめる。

 黒い空より放たれた雷光が水面穿ち、飛沫と蒸気を立ち上らせる。

 殴りつけるような暴風が吹いたかと思えば、海がのたうつように大きくうねった。


 暗い海底で赤い何かが光る。

 次の瞬間、それは水面の中から巨体を伴って飛び出すと、雷轟が響く曇天へと昇った。


 青い鱗に覆われた細長い身体。

 乳白の鋭き牙を持つ大きな口。

 四つの脚には刃のように研がれた爪。


 背びれの代わりに映える金毛が、紫電を帯びてチリチリと音を立てる。

 頭から背に向かって伸びる金角はこの荒天でも爛々と輝いている。


 宝玉のような紅色の瞳。

 彼こそは龍鳴海峡の真なる王。


「人の子――いや、赤毛の小童よ! お主、目の前にいる我を誰と心得る! 千年の時を生き、この海に君臨するは精海竜王! その名を知らぬとはいわせぬぞ!」


「お怒りをお鎮めください! どうか! どうか、平に!」


 嵐さえもかき消す、竜王の咆哮が木霊する。


 一人乗りの手こぎ船が、海竜の起こした波濤に大きく揺れる。

 それでも、転覆しないのは王に対話の意思があるからだ。


 精海竜王は、礼儀をわきまえた者には寛大である。


 地元民にまことしやか伝わる話だ。

 その言い伝えを信じるなら、俺はまだ礼を失していないのだろう。


 モロルド領を守るのだろう。

 この地に残った者たちに生きる場所を与えるのだろう。

 俺は船の縁に手をかけながら、胸からぶら下げた銀色のペンダントを握りしめた。


 そして、荒天にそびえたたずむ異形の王に直談判する。


「精海竜王よ! 聞いてください! 此度、レンスター王国は、飛び地のモロルド領を国土より除外することを決定しました!」


「…………なに?」


「私は現モロルド領の領主ケビン・モロルド! この地に暮らす領民のため! なんとしてもこの地を守りたいのです! そのために、どうか精海竜王! 貴方の庇護と加護を、我らにお与えください!」


 俺の訴えに、海竜たちの王が唸る。

 曇天の中でくゆる稲光はますます激しくなる。

 しかし、それは海面へと垂れてこない。


 代わりに、俺に浴びせかけられたのは――。


「小童よ、どのようにしてこの地に暮らす者たちを守る?」


 同じ王に対する問いかけだった。


 やはり、精海竜王は話が通じる相手だ。

 そしてだからこそ、俺は最初に彼に会いに来た。


 船底を力強く踏みつけて俺は立ち上がる。

 六尺越えの巨漢の起立に船は揺れたが、俺は精海竜王の加護を信じた。


「私は、この地に新たな国を作ろうと思います! モロルドの領民も、そうでない者も、等しく暮らすことができる、楽園を!」


「…………ふむ!」


「人も、亜人も、竜も、魔性も! ともに手を取り合い、暮らす国家をつくりたい! そのために――精海竜王! まずは貴方と同盟を結びに来たのです!」


「その見返りが、龍鳴海峡を通る許可というところか?」


「はい! 龍鳴海峡は、モロルド領の誕生に深く関わる場所! そして、この海峡さえ通ることができれば! モロルドは貿易港としてまた息を吹き返せる!」


 ひとつ息を置いて、俺は天上の竜に告げた。


「私は――俺は、この地を海洋貿易の要衝地にする! 大海に轟く、海洋国家にしてみせる! だから、そのために力を貸せ、精海竜王!」


 俺が王として立つなら、これからはあくまで対等な立場だ。

 王と王とのこれは同盟であり誓約である。


 故に、俺は対等な言葉で精海竜王に迫った。


 ダメならばこのまま海に沈めるがいい。

 雷を落としても構わない。

 食らえるものなら食らってみろ。


 けれども、俺は死なぬ。

 絶対に生きてモロルドに帰る。

 そして、モロルドの領民のためにできることを尽くす。

 必要であれば、次の交渉の材料を用意して、精海竜王に挑んでみせる。


 それくらいの気概がなければ、王になどなれないのだ。

 レンスター王国から独立して、海洋貿易国家になることなどできないだろう。


 そう、これは王と王との対話であると同時に、俺の王としての器を試し、示すための儀式でもあった。


 はたして、千年の時を生きる竜の王は俺の覚悟を――。


「面白い!」


 咆哮と共に認めてくれた。


「だが、それだけでは足りぬ!」


「なに!」


 紫電が船の舳先へと落ちる。

 俺の瞳を焼き、肌を焼く白光。


 眩さに目を閉じた俺が、瞼を上げると――。


「……お、女?」


 雷が落ちたその場所に、清廉な女性が立っていた。


 身の丈は俺の肩くらい。

 華奢な身体つきに白い肌、そして整った顔立ち。

 黒い髪を腰まで伸ばし、華美な着物を身につけている。


 しかし、そのたたずまいは清廉。

 まるで盛夏の小川のような、活き活きとした美しさがあった。


 そして、両側の側頭部から伸びる――竜の証の金角。


 瞼を上げれば、精海竜王と同じ紅色の瞳が零れ出る。

 うっすらと紅をさした唇をつり上げれば、その笑顔に俺の胸は高鳴った。

 ついでに……とある悪名の元となった、身体の一部も。


「モロルドの若き王よ! お主の覚悟はしかと聞き届けた! しかし、我と対等な同盟を組むには、今のお主では格が足りぬというもの!」


「……そ、そこをなんとか!」


「ならぬ! 同盟とは、対等な立場だからこそ成立するのだ! だが、お前がどうしてもというのなら――我も竜を統べる王である! 一つ条件をつけて、その願いを叶えてやらんこともない!」


「……条件とは!」


 正直、怖くはあった。

 だが、条件を一つ飲むだけで、龍鳴海峡を開くことができるなら、安いもの。


 領民のために、俺はすでにこの命を捧げた。

 ならば、どんな条件でも臆すものか。


 はたしてそんなことを意気込む俺に――。


「まぁ、そんなに緊張なさらないでください、旦那さま」


「…………はい?」


 ひょいとその手を取ると、白光とともに現れた娘は微笑んだ。

 そして、何かの誓いのように、俺の唇に自分を重ねるのだった。


 潤んだ赤い瞳に頬。

 口内に残る甘い匂いに言葉を失う。

 そんな中、精海竜王は俺に、同盟の条件を告げた。


「年に一度! 龍鳴海峡に生け贄を捧げよ! 生まれたばかりの赤子だ!」


「な、なんたる非道! そんなこと、許されると思っておいでか! 精海竜王!」


「案ずるな! 子を成す相手は用意してやったわ! そこにいるは、我が娘――星鈴セリンである! その者との間にできた子を、龍鳴海峡に沈めるがいい!」


「そんな! 貴方の娘ということは、生け贄に捧げられるのは貴方の孫ですよ!」


「そうだ! かわいい孫をいっぱい作るがいい!」


「この人でなし! 鬼! 悪魔! 竜王!」


「わっはっはっはっは! なんとでもいえ! 我は千年を生きた竜王ぞ! そろそろ、可愛い孫にいっぱい囲まれて、楽しい余生を過ごしたいんじゃ! せいぜい、我の娘とたくさん子作りするがよい! 安心しろ、孫たちは責任持って我が育てる!」


「くっそ~~~~~~~~! これが竜王のやり方かぁ~~~~~~~~!」


 かくして、俺は精海竜王に生け贄を捧げることで、対等な同盟を結んだ。


 後に「これってつまり、婿入りしていっぱい子供作れよってことなんじゃないか?」と気づくのには、随分と時間がかかってしまった。


 だって。


「よろしくお願いしますね、旦那さま。いっぱい、赤ちゃん作りますので」


「あ、うん、よろしく……」


「……そ、そんな、熱っぽく見つめられては。困ってしまいます」


「すみません。セリンさんが、あんまりにも美しいから」


「……う、美しい? も、もうっ! 人間とは、こうも軽薄に女性を褒めるものなのですか! 私には、そういうの通じません! 私は誇り高き精海竜王の娘なのですよ!」


「いや、美しいものは美しいですから」


「…………はうぅうぅ♥♥♥」


 精海竜王の娘――セリンの美しさに、すっかり心を奪われてしまっていたから。


 この時より、俺のセリンとの子作りの日々がはじまった。

 いや、セリンだけじゃない。


 多くの亜人の姫たちと、同盟のために子作りをする。

 ハーレム領地経営が。

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