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内助の脅威3話

侍女は、主の心の内を見て取ったのか、




「よろしいですか?諸葛亮の言うように、呉の女は、と、ここの、男どもに笑われているのなら、それは、呉が、各下扱いされているということです。たとえ、姫様が、正室となられていても、私共が笑われては、姫様及び呉の恥になりましょう。ですから、こうして着飾っておるのです。どうやら、劉備も、近々、こちらへ足を向けるとのこと、姫様も、女の意地をお見せなさいませ!」




と、執拗に叱咤した。



いきなりの言われように、孫朗は信じられないとばかりに侍女を見る。




今さら、しおらしくここの人間になれと言うのか。まるで、寝返ったかのような侍女の態度に苛立ちを覚えた孫朗は、さらに、声高に言い放った。




「何を調子の良い事を!劉備とは、形だけの夫婦めおとじゃ。そうゆう約束で、私は、ここへ下ったのだ。そうでなければ、30も年の離れた男の元へなど!」




「……まったく、もう、お忘れですか?兄王様の策を!」




言われて、孫朗は、はっとする。




「それは……」




「ですから、いえ、それを叶える為に、姫様は、孫朗、ではなく、母君がお好みあそばれた、尚香の名をお使いなされませ」




少しでも耳障りの良い通り名を名乗れと侍女は念を押して来た。




「……しかし……劉備は、私の名を知っておる」




ホホホと、侍女は笑った。




「そのようなこと、どうぞ、尚香とお呼びください。と言えばよろしいだけではないですか。そもそも、夫婦の契りを結ばないというのも、姫様の御希望でしたでしょ?劉備は、それをすんなり、受け入れたのですよ?」




「……」




「30の歳の差を気になさるなら、むしろ、それを利用なされませ。劉備が、すんなり受け入れたのは、姫様との歳の差を考えてのこと。若い姫君へ無理は通せぬと、劉備は折れたのです。そう、所詮は、男」




侍女は続ける。男を操るには、女に、なれと──。




「……確かに、諸葛亮も言っていたな……」




女々しい、弱々しい、そんな、姿にはなりたくなかった。しかし、と、孫朗は思う。




兄王に託された事を成し遂げるには、侍女の言うように、孫夫人にならねばならぬのだ。ここは、尚香となって、劉備を──。




「わかった。お前達は、お前達のやり方で、ここを攻めよ」




「御意」




侍女達は、うら若き主人へ期待を向けて頭を下げた。

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