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episode_0079

【タイトル】

第79話 いちゃいちゃ


【公開状態】

公開済


【作成日時】

2022-05-28 16:33:07(+09:00)


【公開日時】

2022-05-28 20:00:34(+09:00)


【更新日時】

2022-05-28 20:00:34(+09:00)


【文字数】

1,174文字


本文70行


 数日後、サディさんはナーガさんと(ほとんど強引に)一緒に杖を買いに行く約束を取り付けた。

 私とお父さんは一晩お留守番。久しぶりの2人きりだ。


 そして当日、お昼を食べ終わるとナーガさんがやってきた。最初に会ったときと同じ、真っ黒いローブを着てる。


「ナーガさん、魔法の杖よろしくお願いします」


 フードの下からチッと舌打ちが聞こえる。


「僕だけなら移動魔法で日帰りできるのに、サディアスがいると時間が掛かる」


 やっぱりサディさんと行くの嫌だったんだな……。

 でもサディさんは気にしていないように、ナーガさんの顔を覗き込む。


「いいじゃん。また一緒に旅してると思えば」

「面倒くさい」

「アルと一緒の方が良かった?」

「……サディアスの方がマシ」

「俺だってお前と2人旅なんてごめんだ」


 お父さんがイラつきながら口を挟む。やれやれ。

 さっさと行きたそうなナーガさんをスルーして、サディさんは私の前に屈んだ。


「行ってくるね。アリシアちゃんにピッタリの買ってくるから」

「いってらっしゃい! 楽しみにしてるね」


 ナーガさんとサディさんはサウザンリーフまで行ってくれることになった。

 魔法の杖なんてどこにでも売ってるモノじゃない。どうせ遠出するなら本場のとこまで行って買おうと、サディさんが説得してくれたらしい。

 ナーガさんは完全に不服そうだけど。


「アル、食事の作り置きはしなかったけど本当に大丈夫?」

「ああ、今晩は先輩の店に食べに行ってくる。明日の朝飯と昼飯くらいは任せとけ」


 こういうとき、私が作れるようになったらいいんだけどな。

 でも、ハドリーさんのお店のご飯も楽しみ。


「ハドリーさんの店か……」


 サディさんがふっと目を伏せた。それから、ぐっとお父さんに顔を寄せて――


「浮気するなよ」

「す、するわけないだろ!? 何言ってるんだ、子供の前で!」

「アルって流されやすいし、ハドリーさんはすぐアルをからかうから心配なんだよ」


 既に1回やられてますしね。

 お父さんが目を泳がせながら反論する。


「サディこそ、ナーガと一晩同じ部屋じゃないか」

「へー、僕とナーガが2人きりなの心配なんだ?」

「別に心配じゃないが……」


 サウザンリーフの方は観光地だから、ホテルを押さえるのも大変らしい。2部屋押さえられず同室になったとサディさんが言ってた。

 サディさんがニヤッとお父さんを見上げる。


「嫉妬? 嫉妬してるの? アル、かわいいー」

「違う! お前がからかってどうする!」

「だってさー、一晩留守にするくらいで大騒ぎなんだもん。昨日だって」

「ここで言わなくてもいいだろ!」


 何!? 昨日の夜何があったの!

 ああ、一晩離れるくらいで寂しくってイチャイチャするなんて。よく目に焼き付けておかないと。


 そんな私とは対照的に、ナーガさんは死んだような目で2人を見つめていた。


「バカップルのイチャつく出汁にされるの……最悪」


 それはその、すみませんでした……。




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