【タイトル】
第53話 ナーガ
【公開状態】
公開済
【作成日時】
2022-01-26 19:58:40(+09:00)
【公開日時】
2022-01-26 20:00:03(+09:00)
【更新日時】
2022-01-26 20:00:03(+09:00)
【文字数】
1,324文字
【
ナーガさんが帰ると、お父さんがドサッとソファに沈み込んだ。
「あー……何をどうしたらいいんだ」
「怒涛の展開だったね。でも、オバケの原因がハッキリしたのは良かったじゃない」
「それはまあ、な」
アリシア、と呼ばれて私もソファに腰かける。お父さんが私の頭を撫でた。
「まさか妖精が見えてたとはな。アリシアには都会暮らしは合わなかったのに、無理に学校に行かせたりして悪かった」
「ううん、お父さんは悪くないよ」
むしろ、お父さんのパーティーにナーガさんがいてくれたから原因がわかったんだから。
「ナーガさんは、どうしてお父さんたちのパーティーに入ったの?」
サディさんが腕を組んで、懐かしそうに語る。
「あれは僕が敵の呪詛を受けたときだったよ」
「リリアの回復魔法じゃどうにもならなかったとき、たまたま通りがかったナーガに助けられた」
「強力な呪詛をあっという間に祓ってくれたんだよね」
「魔法使いの中でも、ナーガの魔力は相当なモノらしい。リリアも驚いていた」
そんなにすごい魔法使いなんだ! それじゃ、ナーガさんがいる間は妖精たちが出てこないはずだよね。
「ナーガさんって、すごいんだね!」
「ああ、あいつはお父さんたちのパーティーに不可欠な存在なんだ」
「珍しい~。アルがナーガのこと褒めるなんて」
サディさんが茶化すと、お父さんが拗ねたように黙り込んでしまった。
「お父さんとナーガさんって、仲が悪いの?」
「悪いってわけじゃないけど、さっきみたいな言い合いはよくしてたね。子供のじゃれ合いみたいなものだよ」
「お前、バカにしてるだろ」
「微笑ましく思ってるんだよ」
お父さんとサディさんが生涯のバディで親友なら、お父さんとナーガさんはケンカするほど仲が良い友達、って感じなのかな。
そういう友情も腐女子的には大好物です。
「でも魔王討伐してからナーガは大変だったね。覚えてる?」
「あれはなぁ」
お父さんとサディさんが顔を見合わせた。
「なに? 何かあったの?」
「ナーガって、いろんなパーティーを追い出されて転々としてきたんだって。それで僕らのパーティーに入ったら魔王討伐しちゃったから、ナーガを追放してきた人たちが『あいつは自分たちの仲間だったんだ』って言い出し始めてさ。今更だよね」
パーティーを追放された僕が魔王討伐大成功。今更昔の仲間なんて言われてももう遅い。
ざまぁ系ってやつだ!
「ナーガさん、すごい魔法使いだったのにどうして追い出されちゃったの?」
「アルみたいに、ナーガを苦手に思う人が多かったんだよ。きっと」
お父さんが頭をガシガシと掻いた。
「仕方ないだろう。あいつは何を考えてるのかさっぱりわからないからな」
「でも私のことを助けてくれたよね。サディさんのこともでしょ」
「アリシアは、ナーガが好きか?」
「うん」
私がうなずくと、お父さんが真面目な顔をした。
「ナーガに弟子入りして、田舎で暮らしたいか?」
ナーガさんは悪い人じゃないと思うけど、それはまだ結論が出せない。
「魔法のお勉強はしたいけど、でもお父さんたちと離れて暮らすのはイヤ……」
「そうだよな。お父さんもアリシアと離れたくなんてないよ」
お父さんが私の肩を抱いて引き寄せた。
「でも、アリシアが苦しむのはもう見たくない。なんとかしないとな……」