【タイトル】
第47話 ストレス?
【公開状態】
公開済
【作成日時】
2022-01-20 18:17:54(+09:00)
【公開日時】
2022-01-20 20:00:29(+09:00)
【更新日時】
2022-01-20 20:00:29(+09:00)
【文字数】
1,361文字
【
「オバケがいた」という私の証言は、誰にも信じてもらえなかった。
寝ぼけていたんじゃないかとか、授業を抜け出したくて嘘をついてるんじゃないかとか、単なるイタズラじゃないかとか。
結局、マドレーヌさんに迎えに来てもらって早退することになった。
馬車に揺られながら、心配そうなマドレーヌさんが手を握ってくれる。
「マドレーヌさん、ごめんなさい。でも、私本当にオバケ……」
「お嬢様、大丈夫ですよ。きっと悪い夢でも見られたのでしょうね」
やっぱりマドレーヌさんも信じてない。
魔法があるような世界なんだから、オバケがいてもおかしくないと思ったんだけど。
でもみんなの反応を見るに、いくら異世界でもオバケなんていなそう。じゃあ一体、私が見たアレは何?
家に戻ると、ベッドに直行して寝かされた。
「お父様には連絡しております。もうじきお医者様が見えますので」
「え、大丈夫だよ」
「お父様が念のためにとおっしゃいましたので」
そりゃお父さんはそう言うでしょうよ。
病気じゃないのに……とは言い切れないけど。
「アリシアアアア!!」
医者よりも先に、お父さんが飛び込んできた。
「お父さん、お仕事は……」
「学校を早退したんだろ! どうした? どこか具合が悪いのか? 熱は? 気持ち悪いか? どこか痛いか?」
全然聞いてない。きっと仕事は早退だろうな。また苦労かけます、サディさん。
「身体は大丈夫。あのね、変なのが見えたの」
「変なの?」
「小人みたいに小さな女の子が、黒いオバケになって襲ってきて……」
お父さんが息を飲んで、「とにかく医者を」とマドレーヌさんに言った。
ああ、こんなんじゃ頭おかしくなったのかと思われる。
でもどう説明していいのかわからない。見たままを説明しても意味不明なんだから。
すぐにお医者さんが来てくれた。足をケガしたときにも診てくれた、髭のお医者さん。
いろんな検査をしてくれて、お医者さんは聴診器をはずした。
「学校に入学したばかりということですから、疲れが出たんでしょう」
「本当ですか? 重大な病気が隠れているとかないですよね?」
「可能性は低いでしょう。疲れか、慣れない環境でのストレスか……とにかく、しばらくゆっくり休むことですな」
結局、心因性のものということになった。
マドレーヌさんがお医者さんを見送りに行って、部屋にはお父さんと2人きり。
「アリシア、疲れてたんだな。気づいてやれなくて悪かった」
「ううん。お父さん、お仕事だったのにごめんなさい。もう戻っても大丈夫だよ」
「何言ってるんだ! アリシアを放って仕事になんて行けるか!」
お父さん、相変わらず私のことになると暴走するんだから。
と、お父さんに膝の上に抱き上げられた。
「マドレーヌが先生から聞いたと言っていたぞ。アリシアはもう文字の読み書きができるんだってな。クラスで1番だそうじゃないか」
「ご本読むのは好きだから」
お父さんが私の頭を撫でてくれる。
「『しっかり勉強するんだぞ』なんて余計なことを言ったから、頑張り過ぎたんだろうな」
「そんなことないよ。私……」
言い終わる前に、お父さんにギューッと抱きしめられた。
家に帰って来てから、あのオバケは現れない。
やっぱり疲れてたから? ストレス?
どっちにしても、ますます学校に行きたくなくなった。
ただでさえヤバいやつだと思われてるのに、今度こそいじめられたらどうしよう……。