【タイトル】
第43話 2人の時間
【公開状態】
公開済
【作成日時】
2022-01-16 18:34:00(+09:00)
【公開日時】
2022-01-16 20:00:19(+09:00)
【更新日時】
2022-01-17 23:09:52(+09:00)
【文字数】
985文字
【
……あれ?
私、何してたんだっけ。
盛大に誕生日パーティーを開いてもらって、ケーキやご馳走をいっぱい食べて、みんなで歌ったりゲームしたり遊んで……
そっか。はしゃぎすぎて寝ちゃったんだ。
お父さんとサディさんの声がする。私、部屋のベッドに寝かされてるみたい。
せっかくだから、このまま寝たふりを続けてよう。
「アリシアちゃん、すっかり寝ちゃったね」
「昨日はだいぶ夜更かしさせたからな」
「起きて待っててくれたの?」
「ああ。『お父さんにおめでとうって言ってもらう』と、頑張って起きていたとマドレーヌが言っていた」
「ギリギリ間に合って良かったじゃない。俺も協力した甲斐があったよ」
「ありがとな、いろいろと」
本当は訓練の片づけなど作業がまだ残っていたらしい。それをお父さんの分まで、サディさんがやっておいてくれたと。
本当にいつもありがとうございます、サディさん。
と、お父さんの手が私の頭を撫でた。
「今回のことで改めて思ったよ。これから先、アリシアは日々成長していく。その姿を傍で見守っていきたい。もっとアリシアと一緒にいたい」
「けど、騎士団にいる以上は限度があるよ。上はそろそろ俺たちを昇進させたがってるみたいだし」
「昇進!? そんなことになったら休みもロクに取れなくなる。上官なんて家族を顧みない男たちばかりじゃないか! 俺にそれを求められたら発狂する!」
「大げさ……じゃないよね、アルの場合。でも、確かに今のようにはいかないね。遠征とかも行くことになるだろうし」
「遠征なんて、アリシアに何日も何週間も何ヶ月も留守番させることになる。アリシアには俺の身勝手でずっと寂しい思いをさせてきた。これ以上、この子を1人にさせたくない」
私も、お父さんと離れ離れになるのは嫌。だけど、騎士はお父さんの大切なお仕事だから。
でも、お父さんは諦められないらしい。
「俺は地位や名誉よりも、アリシアの父親でいることの方が大事だ」
強くはっきりした言葉に、サディさんが「アル」と応える。
「俺は、アルがどんな選択をしてもついていくから」
「サディ……」
「俺たちは生涯のバディだろ。それに、今は……」
お父さんの手が私から離れた。
ちょっと! 今どうなってんの!? 見たい! けど今起きたら絶対に2人の邪魔しちゃう~~!
私の頭の上で、小さくリップ音が聞こえた。
2人の世界が続く気配を感じながら、私は起きるタイミングに悩むこととなった。