【タイトル】
第39話 延期
【公開状態】
公開済
【作成日時】
2022-01-12 18:31:24(+09:00)
【公開日時】
2022-01-12 20:00:26(+09:00)
【更新日時】
2022-01-12 20:00:26(+09:00)
【文字数】
1,348文字
【
次の日、訓練場までお父さんを迎えに行った。
お父さんとサディさんがこっちに歩いてくる。楽しそうに何か話してるんですけど! イチャイチャしちゃって!
ああ、もう少しこのまま2人を見ていたい。ちょっと隠れてよ。
物陰に隠れていると、やって来たお父さんが辺りを見まわした。
「アリシアはまだみたいだな」
「迎えに来てくれるの? じゃ、僕も待ってるよ」
そうそう。少し恋人になった2人を見せてくださいよ。
あの告白以来、2人が顔合わせてるところに全然遭遇できてなかったもんね。
「そういえば、再来週アリシアの誕生日なんだ。パーティーをするんだが、サディも来てくれないか」
「もちろん行かせてもらうよ! 来週のいつ?」
「20日だ。アリシアに誕生日は何が欲しいかと聞いたら、『お父さんと一緒にいたい』なんて可愛いこと言ってなぁ。サディにも来てほしいと言うから、今年は俺たちで盛大に……」
浮かれてるお父さんの横で、サディさんの顔が曇った。
「20日、って……」
「なんだ、仕事だったか? それなら終わってからでも」
「その日はミッドフルー国軍との共同訓練だよ」
「なんだって!?」
他国との共同訓練。
詳しくはわからないけど、結構重要な日だと思う。
「そうか、20日だったか……すっかり頭から抜け落ちてた……」
「普段なら俺に任せて休みなよって言えるけど、共同訓練じゃなぁ」
「な、なんとかできないのか!? アリシアに1日一緒に過ごすと約束したんだ! 共同訓練なんて早朝から夜中まで拘束される!」
「無理なことはアルが1番わかってるだろ。ミッドフルーは軍事国家だから、毎年勇者一行の俺たちに会うことを国王が楽しみにしてるじゃんか。俺らがいなかったら国際問題になりかねない」
そんなオオゴトだったんだ……。
私のためとかいって、お父さんが訓練に出なかったら国際問題……戦争とか!?
真っ青になってるお父さんの前に慌てて飛び出す。
「お父さん、サディさん。お疲れさま」
「アリシアちゃん! そんなところに隠れてたんだね」
「アリシア! お父さん約束は必ず守るからな! 誕生日は絶対一緒に……」
「お父さん、その日は大切なお仕事なんでしょう。お誕生日はいいから、訓練頑張って」
そう言うと、ホッとするどころかお父さんが泣きそうな顔になる。
「でも、それじゃアリシアの誕生日パーティーが……」
「パーティーは前の日か次の日にすればいいよ。お父さんは勇者様なんだから、訓練を休んじゃダメでしょ」
「アリシアちゃん、大人だねえ」
言いながら、サディさんがそっと目頭を押さえた。私、聞き分けの良い健気な子に見えてるんだろうな。
前世の頃は誕生日パーティーなんてしたことなかった。お母さんに「おめでとう」って言われて終わり。
それに比べたら、当日じゃなくてもパーティーをしてもらえるだけで幸せだ。だから全然気にしてないんだけど、そうは言えないもんな。
2人と相談して、パーティーは誕生日の次の日にやることになった。
お父さんは何度も「ごめんな」と謝って、サディさんは「最高のプレゼント持って行くから、楽しみにしててね!」と盛り上げてくれた。めちゃくちゃ気を使ってくれてる。
当日はマドレーヌさんたちがいるんだから1人ぼっちになるわけでもないし、そんなに気にしなくていいのに。私と2人の温度差がすごくて申し訳なくなる。