【タイトル】
第24話 お母さんの花
【公開状態】
公開済
【作成日時】
2021-12-27 17:59:22(+09:00)
【公開日時】
2021-12-27 20:00:04(+09:00)
【更新日時】
2021-12-27 20:00:04(+09:00)
【文字数】
2,023文字
【
ベッドに戻ったけど、結局ロクに眠れなかった。
お父さんとサディさんがBL関係? そんな腐女子の夢みたいなことある?
でも、あるんだからしょうがない。
だけどあの様子だと、私に隠れて付き合ってるってことはなさそう。
たぶんまだお互いの気持ちに気づいてないんだ。お父さんなんて朝になったらキレイさっぱり忘れてそうだし。
本当に両思いなら(絶対そうであってほしいけど)、私が2人の仲を取り持たなきゃ!
腐女子、愛のキューピットになります!
翌日。
案の定お父さんは二日酔いでベッドから起き上がれなかった。
「悪いアリシア……今日はお父さん寝てるから……サディと一緒に遊んできなさい……」
ベッドに突っ伏して、ヘロヘロのお父さんが呻いてる。
サディさんがベッドサイドに水差しとグラスを置いた。
「だから飲み過ぎるなって言ったのに。アリシアちゃん、どうする?」
「今日はホテルでのんびりしたいな。私も昨日あんまり眠れなかったの」
誰かさんたちのせいでね。
お父さんが青い顔をしながらうなずく。
「アリシアは繊細だからな。枕が変わると眠れないんだろう。俺と同じで」
「酔っ払いと一緒にするなよ」
ということで、今日は旅行の中休み。ホテルでまったり過ごすことになった。
サディさんとゆっくり朝食を食べて、その後はカードやおもちゃで遊んでもらった。
昼食はホテルのレストランに行って、お子様ランチを食べた。ホットケーキがクマの顔になっていてかわいい。
「おいしい? アリシアちゃん」
「うん! おいしい!」
「よかった。いっぱい食べな」
こういうの、親子の休日って感じがしていいよね。
……本当のお父さんは二日酔いで寝てるけど。
「午後はお土産屋さん見に行こうか。ホテルの中にいくつかあったから」
「うん、マドレーヌさんにお土産買ってくるねって約束したの」
食事を済ませ、サディさんと一緒にホテルのショッピングモールに行く。
このホテルはホテルというより、ひとつの街だ。施設内にお店はもちろん、プールや公園、映画館まである。お金持ちが別荘代わりに長期滞在することも多いらしい。
こんな大富豪の世界、私には縁がないと思ってた。アリシア、幸せ者め。
お土産屋さんをいくつかまわり、マドレーヌさんにはレースのハンカチを選んだ。
白地に黄色い星の刺繍が細かく入っている。星は魔法使いの象徴。サウザンリーフらしいお土産だ。
「アリシアちゃん、お母さんにも何か買って行ったら?」
「お母さんに?」
「今度お墓参り行くときに、持って行ってあげたら喜ぶよ」
そういえば、夢の中の記憶を辿るとそろそろお母さんの命日だ。
毎年お父さんと一緒にお墓参りに行っている。
前世でも両親の命日には、毎年お墓に花を飾っていた。
「うん、お母さんにお花を持ってってあげる」
お土産屋を出て花屋に移動する。
いろとりどりのブーケや、フラワーアレンジメントがいっぱいに飾られていた。
「ここのお花は魔法使いの人たちが作ってるから、永遠に枯れないんだよ」
「永遠に!? すごい!」
それならお墓に飾っても、お母さんの傍にずっと咲き続けてくれる。
でも、命日って難しい。おめでたい記念日じゃないし、どんな気持ちでいたらいいのかわからない。
前世の父親は亡くなってから10年以上経っていたけど、今のお母さんが亡くなってからはまだ数年しか経ってない。
アリシアとしてはほとんど覚えてないけど、お父さんはまだお母さんの思い出が鮮明なはず。
お母さんにも喜んでほしいけど、お父さんの悲しみも和らいでくれるようなものがいいな。
「お父さんって、お母さんにお花をプレゼントしたことないのかな?」
「あるよ。毎年リリアさんの誕生日には、必ず花束を渡してたからね」
「どんなお花あげてたの?」
「ユリの花。アル的にリリアさんのイメージはユリなんだって」
ユリの花、上品で凛としてるイメージだ。
お母さんって、そんな感じの人だったのかな。
「アル、プロポーズのときにピンクのユリの花束を渡したんだよ。100本くらいドーンと。跪いて」
跪いて……お父さん、ロマンティックなところあるなぁ。
サディさんが何かを思い出したのか、急に笑い出す。
「ピンクのユリの花言葉って『虚栄心』なんだ。カッコつけたがりなアルにピッタリっていうかさ。それをプロポーズに選んじゃうセンスもアルらしいよね」
「お母さんは花言葉知ってたの?」
「もちろん。だって僕、リリアさんにユリの花言葉教えてもらったからね。魔法使いは植物に詳しいんだよ」
せっかくロマンティックなことをしてるのにどこか抜けてる。お父さんらしい。
お母さんも、お父さんのそういうところが好きだったんじゃないかな。
それからきっと、サディさんも。
「じゃあ、ユリの花にする!」
「そうだね。キレイなアレンジのを買って行こう」
お父さん、プロポーズの日のこと思い出してくれたらいいな。
でもお父さんって、今でもお母さんのこと大好きだよね。
素敵なことだけど、もしかしたらそれがサディさんとのBLの障壁になっているのかも……!?