【タイトル】
第22話 ホテル
【公開状態】
公開済
【作成日時】
2021-12-25 15:42:24(+09:00)
【公開日時】
2021-12-25 20:00:01(+09:00)
【更新日時】
2021-12-25 20:00:01(+09:00)
【文字数】
1,061文字
【
結局、そのままワンダーランドを出てライラック号でホテルに向かうことになった。
馬車の中でお父さんとサディさんが言い合いを続けてる。
「アルが大人げなく本気出すから騒ぎになっちゃったじゃないか」
「けしかけたのはサディだろ」
「俺はアルがあんまりカッコ悪いから、アリシアちゃんの前で名誉挽回させてあげようと思ったんだよ」
う……とお父さんが言葉に詰まり、諦めたように肩を落とした。
「アリシア、悪かった。夜のパレード見られなくて」
「ううん。私、お父さんとサディさんのカッコいいところ見られてうれしかった!」
「そうか! それならお父さんも嬉しいぞ!」
「俺のおかげだってこと忘れないでよ?」
「わ、わかってる……」
サディさんのフォローのおかげでお父さんの面目が保たれました。
やっぱりサディさんは、お父さんのことよく考えててくれるんだな。
到着したホテルは、お城のようだった。
コンシェルジュの人たちがズラリと並んでお出迎えをしてくれ、案内された部屋は所謂スウィートルーム。
毛足の長い絨毯が敷かれたリビングには大きなソファ、その隣がアイランドキッチン付きのダイニング。ドアの向こうには子供部屋と夫婦の部屋がある。
夫婦の部屋! これはもちろん、お父さんとサディさんが使うんですよね!?
「すごーい! お父さん、ここ本当にホテル?」
「そうだぞ。アリシアのために用意したんだ。家だと思って寛ぎなさい」
「自分だけの手柄にしないでよ。ここを探したのは俺なんだからね。アルに任せると、とんでもないホテルに決めかねないから」
「どういう意味だよ」
うさぎの魔法を見るに、お父さんのセンスってとんでもないみたいだからな……。
でもワンダーランドもこのホテルも、2人からのプレゼントなんだもんね。
「お父さん、サディさん。ありがとうございます!」
お辞儀をすると、2人が顔を見合わせて笑った。
サディさんが跪いて私の頭を撫でる。
「こちらこそ、楽しい旅行に誘ってくれてありがとう。アリシアちゃん」
えへへ、とサディさんに笑いかけるとお父さんの視線を感じた。
「先を越された!」と言いたそうな顔をしてる。別に早い者勝ちじゃないのに。
悔しい顔を見せたくなかったのか、お父さんが背中を向けた。
「サディ、部屋に荷物を置きに行くぞ」
「もしかして、俺たち夫婦部屋?」
「仕方ないだろ。子供がいるんだから、家族向けの部屋しか取れなかったんだ。我慢しろ」
「別に嫌なんて言ってないけど~?」
なんて話しながら、お父さんとサディさんが夫婦の部屋に消えていく。
子供はさっさと寝ますので、今夜はお楽しみください。ふふふ。