馬車の中でマドレーヌさんに作ってもらったサンドウィッチを食べていたら、あっという間に到着した。
ライラック号が芝生の上に着陸する。馬車も揺れることなくそっと停車した。
馬車から降りると、芝生の先は黄色いレンガの道になっていた。その上には、大きな虹のアーチが架かっている。
そして奥には華やかな街並み。その至るところにカラフルな風船が浮き、白い鳥が飛んでいる。
「うわあ……!」
これが魔法の国。すべてが輝いて見える。まだ一歩も中に入ってないけど。
と、ふわふわとシャボン玉が飛んできた。
目の前でパチンと割れると、水色のドレスを着た金髪のお姉さんが現れる。
「ようこそ、奇跡と魔法のワンダーランドへ。馬車はこちらでお預かりいたします。お荷物はホテルにお届けいたしましょうか?」
「ああ、よろしく頼む」
お父さんが答えると、お姉さんが星型のステッキを振った。ライラック号ごと馬車がキラキラと光り出し、消えてしまった。
「ライラック号!?」
「大丈夫だよ、アリシアちゃん。魔法使いのお姉さんが預かってくれただけだから」
これが魔法! そして魔法使い!
森のモンスターやサディさんの回復魔法は見たけど、こういうザ・魔法を見ると異世界に暮らしてるって実感する。
「さあ、アリシア。今日はめいっぱい楽しみなさい」
「うん!」
「1番楽しみだったのはアルなんじゃないの~?」
「そのセリフ、そっくりそのままお前に返す」
魔法のワンダーランドには、前世の遊園地と同じくアトラクションやパレード、そしてキャラクターたちがいた。
でもキャラクターは着ぐるみじゃない。本物のエルフや妖精、ゴブリンにドワーフ、狼男だ。
パレードは本当に種も仕掛けもなく、突然雪が降ったり妖精たちが空を飛んだり。
スタッフさんは全員魔法使い。そこかしこで不思議な魔法が繰り広げられていて、それを見てるだけでも楽しい。
私も魔法使いさんに作ってもらったシャボン玉の中に入って空を飛んだ。馬車で飛ぶのとはまた違って、自分で飛んでいるみたいで気持ち良い。
地上に降りて、ベンチで一休み。
「私も魔法が使えたらいいのになぁ」
「リリアは魔法使いだったんだから、アリシアもできるかもしれないぞ」
「お父さんは魔法使えないの?」
「俺は……」
お父さんが口ごもると、サディさんがニヤリと笑った。
「使えないことはないよねぇ、魔力は誰にでもあるんだから」
「俺はそういう見えないものをコントロールするのが苦手なんだ。剣はわかりやすくていい」
誰にでもってことは、私にも魔力があるんだよね。
魔力があれば勝手に魔法が発動するのかと思ったけど、練習しないと使えないってことなのかな。
「アリシアちゃん。魔法が使ってみたいんだったら、いいところがあるよ」