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episode18


「馬車!?」


 いつの間に、ライラック号の後ろには大きな馬車が!

 さっきまでなかったのに!


「この金のハーネスは魔法使いが作ったものだから、魔力のある馬につけると馬車が現れるんだよ」


 さっきまで浮いて見えた金のハーネスは、白馬のライラック号によく映えている。

 球体の馬車はライラック号と同じ真っ白で、金色の装飾が施されていた。

 てっぺんにはティアラを模した飾りがついていて、めちゃくちゃ豪華。シンデレラが乗るかぼちゃの馬車みたい。


「これね、アルが結婚したときリリアさんに贈った馬車なんだ」

「結婚したら馬車があった方がいいと聞いたのに、リリアのやつ『これじゃ街に買い物に行けない』なんて言って1回しか乗らなかったんだ」


 いや、これ普段使い用だったの?

 結婚式用のオープンカーで買い物に行けと言われてるようなものなんですけど。


「そりゃ乗れないでしょ。自分は白馬のライラック号に跨ることすら嫌だったくせに、なんでリリアさんにはこれなの」

「女性はこういうのが喜ぶと、馬車のディーラーに言われて」


 サディさんにツッコまれたお父さんが拗ねる。

 かわいい。お父さん不器用かわいい。

 そういうところがお母さんも、もちろんサディさんも好きなんじゃないかな!


 それにこの馬車を今日出してくれたってことは、私なら喜ぶと思ってくれたんだよね。

 お母さんには目立ちすぎたかもしれないけど、6歳の私にはピッタリだと思う。


「お父さん、この馬車とってもステキだね」

「そ、そうか! 気に入ってくれたか?」

「うん! シンデレラの馬車みたい」

「しん、でれら?」


 マズイ。この世界にシンデレラはなかった。


「お姫様の馬車みたいだなぁって」

「ああ、そうだ! アリシアはお姫様だぞ!」


 お父さんが弾けんばかりの笑顔になった。お父さんの気持ち、やっと報われたみたいでよかった。


 サディさんが私の前に片膝をついて、手を差し出す。


「お姫様、お手をどうぞ」


 こ、これはまるで王子様のエスコート。

 お父さんも似合うと思うけど、サディさんこそ王子様っぽいよね。


「待て待て! エスコートは父親である俺がやる!」

「バージンロードみたいに?」

「バッ!? アリシアにはそんなところ絶対に歩かせないからな!」


 張り合うように、お父さんも跪いて私に手を差し出した。

 前世のときも縁のなかったモテ期到来? いや私がモテてどうすんだ。


 私は片手ずつ、差し出された2人の手を取った。

 両側からエスコートされて、キラッキラの馬車に乗り込む。

 馬車の中は思ってたより広く、イスはソファのようにふかふかだった。


 ライラック号がまた高く鳴いて、翼をゆっくりと羽ばたかせる。

 走り出したライラック号の後について、徐々に馬車は地面から浮き上がった。


「うわあ……!」


 窓から外を見ると、本当に空を飛んでいた。王都の街並みがあっという間に小さくなる。

 飛行機にも乗ったことなかったのに、空飛ぶ馬車に乗れるなんて。


「そういえば、どこに行くの?」

「隣の国、サウザンリーフにある遊園地だ」

「魔法使いが運営してるテーマパークだよ。サウザンリーフは魔法使いが多い国だからね。大人から子供まで、今すっごい人気なんだって」


 ディズニーランドみたいなものかな。ディズニーランド行ったことないけど。

 あっちの夢と魔法の国もすごいらしいのに、本物の魔法の遊園地か。どんなところなんだろう。






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