「さぁて、どうしよっかなー? くふふふ」
シアンは
ヌチ・ギの魂は必死に形を変えて抵抗しているようだったが、身体を失った魂にはもはやできることなどなかった。ついさっきまで世界を脅かしていた強大な敵は、もはやただの玩具と化している。
「後で悪事を洗いざらい吐かせるから保管しといて。それからレヴィアの
クスッと笑ったヴィーナは淡々と指示する。
前代未聞のピンチを超えたばかりだというのにもう平然としている彼女に俺は少なからず驚いた。彼女にとってはひと時のイベントに過ぎないのだろう。
「はいよ!」
シアンは綿あめをポケットに詰めると、指先で空間をツーっと裂いた――――。空間が歪み、そこから漏れ出す光の粒子が周囲に舞い散る。
空間の裂け目に手を入れたシアンは虹色に
「よいしょっと!」
キョロキョロしながら出てきた女性は、なんと海王星で見た大人のレヴィアだった。
「え? あれ? なんじゃ?」
ブロンドの長い髪を流し、大きな胸を揺らすその
「あれ? ずいぶん育ってない?」
ヴィーナは
「本人の希望が混ざり込んじゃったみたいだねぇ。きゃははは!」
シアンは
「これからはこの身体で行くとするかのう。うっしっし」
レヴィアは豊満な自分の胸を持ち上げて満足そうな表情を浮かべる。その目には子どものような
「あんたねぇ、次殺されたらババァにするからね?」
ヴィーナはジト目でレヴィアを射貫いた。
「バッ、ババァ!?」
レヴィアはビクッと体を震わせる。
「きゃははは!」
シアンはその滑稽なさまに笑い、俺もドロシーもつられて笑ってしまった。この笑いの
「な、なんじゃ……、そんな笑わんでもええのに……」
レヴィアは俺たちを見回しながら口をとがらせる。その
何はともあれ、これですべて解決である。俺はすがすがしい気持ちで木星を見上げた。木星はそんな俺たちの顛末など何の関係もないように、ただ静かに赤い光を降り注いでいる。
危機は去り、新たな始まりの予感が、ホール全体に満ちていた。俺はドロシーの肩を抱き、二人で安堵のため息をつく。彼女の温もりが、今まで感じていた緊張をゆっくりと溶かしていく。世界の危機を乗り越えた今、この穏やかな時間がどれほど尊いものか、改めて噛みしめる――――。
◇
シアンはホールを元の地球に戻し、空には
ヴィーナはビキニアーマーの女の子を優しく手で導きながら宮殿に合流させた。その
「これで片付いたかしら?」
と周りを見回した時、突如としてドアがバン!と勢いよく開かれた。その音は、静寂を破る鐘の音のように響き渡る。
「旦那様~! 姐さ~ん!」
アバドンが息を切らせながら必死に走ってくるではないか。
その姿に、思わず胸が熱くなる。魔人でありながら、身を挺してドロシーを守った英雄――――。その真っ直ぐな感情が、どこまでも純粋で
「おぉ、アバド~ン!」
俺はアバドンへ思いっきり抱き着いた。汗臭い体温も今は頼もしく感じられる。
「ありがとう! おかげで解決したよ!」
俺はパンパンとその筋肉質な背中をたたく。俺の声は少し震え、目には涙がにじんでくる。
「え? 私、まだ何もやってないんですが……」
アバドンの困惑した表情には、純粋な
ドロシーも駆け寄ってアバドンに抱き着き、堰を切ったように泣き出した。その震える背中からは、彼女が経験した恐怖と、今ようやく手に入れた安心が
「アバドンさ~ん! うわぁぁん!」
その声には、言葉にならない感情の塊が詰まっていた。恐怖、安堵、喜び、感謝――――あらゆる感情が
「あ、
アバドンは困惑気味に聞く。その優しげな眼差しには、心からの心配が宿っていた。