ドロシーは一瞬
「ヌチ・ギはたくさんの女の子や私を
その声は小さいながらも、
「助けに来てくれた『アバドン』さんという魔人の行方も分かっていません。彼らを復活させ、でもヌチ・ギが復活しないようにして欲しいんです」
ドロシーは両手を胸の前で固く組み、真摯な眼差しでシアンを見つめる。その瞳には、失われた命への強い想いが宿っていた。
ニコニコしながら聴いていたシアンは人差し指を自分のアゴにつけ、斜め上を見上げる。その碧い瞳は小刻みに動き、まるでこの世界全てを理解しようとしてるかにすら見えた。
固唾を呑んで見守る俺たち――――。
パチパチっと瞬きをしたシアンはニッコリと笑った。
「オッケー!」
まるで遠足のおやつを決めるような
おわぁ! きゃぁ! うひぃー!
次の瞬間、俺たちの意識は闇の中へと沈んでいった。最後に見たのは、シアンの
◇
お? おぉ……?
目の前に広がる光景に、俺は思わず
ヌチ・ギの屋敷に戻ってきたのだと理解するまでに、しばらく時間を要した。
中央には
「うほぉ! これはすごいねぇ! きゃははは!」
シアンの
俺たちが命を賭けて戦ってきた全ての努力は、この可愛い少女の前では子供の
俺は深いため息をついた。
「あのぅ……シアンさんは時間を……操れるんですか?」
声が
「操るというか……、単にバックアップを復元しただけなんだよね」
シアンはキョトンとしながら、まるで当たり前のことのように答える。
「バックアップ!?」
俺の驚きの声に、シアンは楽しそうに笑った。
「きゃははは! そんなに驚かなくても……。この星のデータは定期的にバックアップされてるのだ。僕はそれを
その言葉に込められた意味の重さに、俺は
しかし、疑問が次々と湧き上がってくる。あの巨大なジグラートのコンピューター群、その
だが――――。目の前で現実に起きていることは否定することは出来ない。踊る女性たち、
『宇宙最強』――――。その言葉の持つ本当の意味を、今になってようやく理解できた気がした。それは単なる力の強さだけではない。この世界の
この無邪気な可愛い少女に宿る底知れぬ深淵に、俺はブルっと身震いをした。
「ちなみに……どこにバックアップは取ってあるんですか?」
俺の問いかけに、シアンは
「金星だよっ!」
「き、金星……?」
その予想外の答えに俺は首を傾げ、固まった。海王星のサーバーのバックアップが、なぜ金星にあるというのか? その
俺の
「海王星は金星のサーバーで作られておるんじゃよ」
「金星のサーバー……?」
その言葉の意味を理解するまでに、時間がかかった。なぜ海王星が金星で作られているのか……?
「えっ、もしかして……」
そして、ようやく
「海王星も仮想現実空間だったのか……」
これまで、海王星こそが