「い、いや、あ、あれはですな! そう! せ、せっせ、正当防衛でして……」
レヴィアは
「まぁ、いいよ。別にキミらを収監したって楽しくないしねっ!」
シアンの声には、超越者の
「そ、そそそ、そうですな。楽しくは……ない、ないですよ!」
レヴィアは冷や汗を流しながら、ぎこちない笑みを浮かべる。
「で……、蜘蛛なんですが……」
俺は急いで話題を転換する。シアンの気が変わる前に、興味の矛先を変えなければ。
「そ、そうです。く、蜘蛛が……」
レヴィアも慌てて同調した。
「ハイハイ、パパッとやっちゃいましょ!」
シアンは楽しそうに腕を振り上げる。無邪気な声が、重苦しい空気を軽々と切り裂く。
「ちょ、ちょっと待って! あなた……なの?」
話を聞いていたドロシーが突如として立ち上がり、俺を
本来の姿に戻ってから明かすつもりだったが、運命は思いがけない展開を選んだ。
にゃぁ……。
俺は
「あなた……。こんな姿になって……。可愛い……」
ドロシーは俺を慈しむように抱きしめ、頬ずりをしてくる。その仕草には、なぜかいつも以上の愛情を感じてしまう。温かな吐息が耳元をくすぐり、心が震える。
うにゃぁ……。
温もりに包まれて、俺の心は複雑な感情の渦に巻き込まれる。愛おしさとやや腑に落ちない思いが、光と影のように交錯した。
「あっ! 僕の猫ちゃん! ダメ!」
シアンは突如として声を上げ、俺の胴体をガシッと
「な、何を……。これはうちの主人です!」
ドロシーもまた、宇宙最強の存在に臆することなく全力で俺を抱きしめ、
「僕が連れてきたの!」
シアンの声が鋭く響き、空気が震える。
「うちの人は渡しません!」
ドロシーの声には
「ふぅん……。懲役一万年の共犯……懲役千年にしてやろうか?」
碧眼を鋭く光らせ、視線で殺さんとばかりにドロシーに迫るシアン。その
「何よ、脅すの? ひとの旦那を奪うならあなたも犯罪者よ?」
一歩も引かないドロシー。その
(ま、マズい……)
宇宙最強の少女の機嫌一つで、世界の運命が変わりかねない。そもそも俺は、女性に奪い合われるような男ではない。単に猫の姿が彼女たちの本能を刺激しているだけなのだ。
くぅ、かくなる上は……。
俺は奪い合いの手の中で、深呼吸を始める。海王星から戻ってきたようにすれば、本来の自分の体に戻れるに違いない。
すぅぅぅ……、はぁぁ……。
すぅぅぅ……、はぁぁ……。
呼吸を重ねるたび、意識が澄み渡っていく。
直後、意識が
おぉ!
ベッドで毛布に包まれた本来の身体に、意識が還ったのだ。温かな毛布の感触が、人間の体に戻ったことを実感させる。
直後、猫の身体は
「あっ!」「あちゃー……」
二人は
「そ、そんなことより蜘蛛退治に行きましょう!」
俺は冷や汗を流しながら、話題を転換する。首筋を伝う汗の冷たさが、緊張を際立たせる。
「せっかく可愛かったのにぃ!」
シアンは口を尖らせ、青く輝く微粒子が徐々に消えていく様を残念そうに目で追った。その表情には、玩具を失った子供のような
「ね、猫ちゃん……」
なぜかドロシーまで残念そうだ。その声には深い
「しょうがない、蜘蛛と遊ぶわ!」
シアンは不機嫌な瞳で俺を一瞥すると、宇宙を統べる者の
「へ?」「きゃぁ!」「ひぃぃぃ」
俺たちは切り裂かれた空間の向こうに広がる漆黒の
風を切る音が耳を