う、うぅ!
手のひらで光を遮りながらゆっくりと目を開く。瞼の隙間から
「こ、ここは……?」
上質な木の
へっ!?
青空に向かって
「と、東京タワー! な、なんで!?」
驚きの声を上げた瞬間、自分の声の異変に気付く。高く澄んだ声は、もはや人間のものではなかった。戸惑いに駆られて手を見下ろすと、そこには桜色の肉球が!
「な、な、な、なんだこりゃ!」
慌てて手鏡に目を凝らす。映し出されたのは、まるでぬいぐるみのような柔らかな毛並みを持つ猫の姿。
自分の変貌に
「
振り向いた先には、懐かしい美奈先輩の姿。
会議テーブルの向こうで、先輩は一人の男性に
「いや、ちょっと、誤解だって!」
「何が誤解よ!」
美奈先輩は机上のティッシュ箱を
「痛い、痛い、やめてー!」
頭を抱えてテーブルに突っ伏す男性の姿は、まるで喜劇のワンシーンのような
久しぶりに目にする先輩の溌剌とした姿に、懐かしさが込み上げてきて思わず笑みがこぼれる。
しかし――――。
あのおてんば娘がこの世界の創造神……。その事実は、俺の理解の範疇を超えていた。創造神とは、
俺がその矛盾に思いを巡らせていた時、耳に飛び込んできた言葉に全身が凍りつく。
「シャトル奪われて誰だかわからないって余程の間抜けだわよ!」
美奈先輩の一喝に、俺の心臓が鼓動を高める。その言葉は、まるで罪を暴く
「いや、だってきれいさっぱりデータ消されてるんだよ?」
「誰が消したか調べればいいじゃない! あんたバカなの!?」
美奈は怒りを募らせ、ティッシュボックスで男性の頭を
「だから今それやってるんだよ!」
「そんなのちゃっちゃとやんなさいよ!」
「はいはい……」
男性は渋々人差し指を空中でクルリと回し、空中に青く浮かび上がる画面を展開する。その指先には、疲れが滲んでいた。
(マズい……)
奪われたシャトルとは、間違いなく俺たちの一件に違いない。レヴィアは痕跡を消したようだが、この世界の管理者たちの目をどこまで欺けるのか。不安が心の中で渦巻く。
俺が冷や汗を流していると、一陣の春風のように、にこやかな女性が近づいてきた。
「みぃつけた!」
「あなたが豊さんね、僕はシアン、よろしくねっ!」
その
にょわぁぁぁ!
頬ずりされる感触に、猫の本能としてのどを鳴らしそうになる。人としての意識と猫の感覚が混ざり合う不思議な感覚。この非現実的な状況に、夢か現かの境界が曖昧になっていく。