「ハーイ! 朝よ起きて起きて!」
「ふぁ~ぁ」
俺は大きく
マリー=デュクレール 孤児院の院長 『闇を打ち払いし者』
魔術師 レベル八十九
「えっ!?」
俺は一気に目が覚めた。寝不足の
(何だこのステータスは!? あのおばさん、称号持ちじゃないか!)
今まで単なる面倒見のいいおばさんだとしか認識していなかったが、とんでもない。一体どんな
食堂に集まり、お祈りをして朝食をとる。ドロシーの姿を見つけた俺は、胸が
また、院長にも報告しなければ。二度と同様な事故が起こらないように対策をしてもらわないとならない。
「あれ? ユータ食べないの?」
突如、アルの声が俺の思考を
「欲しいなら銅貨二枚で売ってやる」
俺はすかさず彼の手をピシャリと叩いた。
「何だよ、俺から金取るのか?」
アルは
「ごめんごめん、じゃ、このニンジンをやろう」
俺が煮物のニンジンをフォークで取ると、
「ギョエー!」
と喚きながらアルは自分の皿を後ろに隠した。その
この穏やかな朝の光景。昨夜の恐ろしい出来事が嘘のようだ。しかし、俺は決して忘れない。ドロシーを守ること、この孤児院の仲間たちを守ること。そして……、折を見て院長の秘密も探ってみたいと思った。
俺は口に運んだパサパサしたパンを
俺は転生商人として必ず成功する。そして、この仲間たちを守ってみせる。
朝日が差し込むにぎやかな食堂で、俺は一人秘かにグッとこぶしを握った。
◇
食事の時間は
つい昨日まで、俺もこの
(これからは世話する側に回らないとな)
その思いが、俺の心に重くのしかかる。
硬くてパサパサしたパンを
(鑑定でひと財産築こうと思ったら……やはり商売……かな)
転生した職業が『商人』だったのも、何かの
(何で元手を稼ぐか……)
俺はふと、前世でプレイしていたゲームを思い出す。そこでは薬草集めから始めたのだった。鑑定スキルさえあれば薬草を探すのは簡単なはずだ。何しろ手当たり次第に鑑定していって【薬草】って表示されたものだけを集めればいいのだから。
よしっ!
その瞬間、俺の目に決意の色が宿る。まずは元手稼ぎに薬草を集めてやるのだ。
食堂の
俺は最後のパン
必ず成功してみせる。この鑑定スキルを使って、みんなの幸せを掴み取ってみせる!
◇
食事を終えた俺は、決意を胸に秘めて院長室へと向かう。扉の前で深呼吸し、気合を入れるとコンコンと
「院長、ちょっとお話があるんですが……」
俺の声は、自分でも驚くほど
「あら、ユータ君……何かしら?」
扉が開き、院長の
俺は慎重に言葉を選びながら、まず昨晩の出来事を話す。
「えっ!? そんなことが!?」
院長はあまりの驚きで目を大きく見開いた。
「でも、大丈夫です。ドロシーはもう落ち着いています」
「それは助かったわ……ありがとう。対策は……ちゃんとやるわ」
院長の声には、感謝と共に深い
そして、俺は本題に入る。
「それからですね、実は薬草集めをして、孤児院の運営費用を少しですが稼ぎたいのです」
「えっ!? 君が薬草集め!?」
院長の目が再度
「もちろん安全重視で、森の奥まではいきません」
俺は慌てて付け加える。院長の
「でもユータ君、薬草なんてわからないでしょ?」
「それは大丈夫です。こう見えてもちょっと独自に研究してきたので」
俺は自信に満ちた笑顔を浮かべ、胸を張って答える。もちろん薬草なんて全く分からないのだが、俺にはチートスキルがあるのだ。
院長は
「これが何かわかったらいいわよ」
ニヤリと笑う院長の顔には、大人の余裕が