「キャ――――!!」
夜の静寂を破る悲鳴が、かすかに窓の外から聞こえてきた。俺の
空耳……? いや、違う!
幻聴がこんなに生々しく響くはずがないのだ。
俺は息を潜め、そっと窓の外を覗いた。離れの倉庫の窓から、かすかな明かりが漏れている。その光は、夜の闇の中で不吉な
あんなところ、夜中に誰かが使う訳がない! あそこだ!!
俺は迷わず窓から
倉庫の窓に顔を寄せ、中を覗き込んだ瞬間、俺の血の気が引いた。
男に組み敷かれ、服を
(ドロシー!)
俺の心が
(絶対に救わなくては!)
しかし、どうやって? 俺は
男がズボンを下ろし始めた。時間がない。俺は急いで鑑定スキルを使った。
イーヴ=クロデル 王国軍二等兵士
剣士 レベル三十五
(なんてこった。兵士じゃないか! しかもレベル三十五……)
絶望的な状況に、俺の
余計な事をすれば俺も標的になりかねない中で、俺は必死に頭を必死に回した。
(考えろ……考えろ……)
俺の心臓が
俺の心臓が激しく鼓動を打つ。迷う時間はない。意を決すると、俺は窓をガッと開け、震える声で叫んだ。
「クロデル二等兵! 何をしてるか! 詰め所に通報が行ってるぞ。早く逃げろ!」
突如響き渡った声に、男は跳び上がる。子供の声であることに一瞬
「チッ!」
舌打ちと共に、男は慌ててズボンを上げ、ランプを掴むと夜の闇へと逃げ去った。その背中に、俺は
「うわぁぁぁん!」
ドロシーの
月の光に照らされた彼女の顔は、涙と鼻水で
「もう大丈夫、僕が来たからね……」
俺はそっとドロシーを抱きしめる。その小さな体が、俺の腕の中で震えている。
「うぇぇぇ……」
ドロシーは
やがて、ドロシーの
「トイレに……起きた時に、倉庫で明かりが揺れてるのを見つけて……何だろうって……」
その
窓から差し込む淡い月明かりに、ドロシーの銀髪が
「うぇぇぇ……」
思い出したようにまたドロシーは嗚咽をあげる。
俺は再びゆっくりとドロシーを抱きしめ、何度も何度も背中を優しく
『ドロシーに幸せが来ますように……、嫌なこと全部忘れますように……』
俺は心の中で
二人の姿は月明かりに照らされて静かに青白く輝いていた。