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第92話 見世物

「それでそれでっ?! その後どうなったんですかお師匠様っ?!」


「その後は上空から一気に落下して、その勢いを活かして刺さったままの毒ナイフに一撃を叩き込みんだんですよ。それが決定打となってデカサソリを倒しました」


──昼前ひるまえ -石碑の森-


危うく反逆罪で死刑一歩手前だった窮地を逃れた私達は、2つ目の石版をあるべき場所に戻すべく、石碑を目指して森を歩いていた。


グヌマさんは色々あってお留守番を言い渡され不在だが…代わりにムネリ女王とラヴィ王女が同行している。


ラヴィ王女は目を輝かせて冒険譚に耳を傾け、ムネリ女王は相変わらずよく転んでいる…。普段より賑やかな雰囲気を連れて、私達は石碑に辿り着いた。


「女王様! 王女様! それに皆さまも! ここへ来たということは、2つ目の石版も持って帰ってきたんですねっ?!」


「ええ、これが2つ目の石版です。今回は何か変わったことが起きたりは…?」


「何の異変も起きてはいませんね」


そうか…前回は石碑から光が飛び出したらしいが…、特に変化のなかった今回が良いのか悪いのかは分からんな…。


前回だけ特別…? 今回は何か条件を満たした…? 倒し方は一緒だぞ…? ──考えるの止めよ…どうせ答え出ないから…。


念の為女王と王女をアクアス達に守らせ、私は兵士と一緒に石版をはめにいく。何も起こらなければいいが…。


石版に描かれた模様と石碑に刻まれた模様が合致する箇所に…恐る恐る石版をはめ込んだ。特に変化はー…無いか…良かった…。


じゃあやっぱ前回だけ特別だった可能性があるな…、だからなんだって話だが…。


「大丈夫そうだな、ニキカモーンッ!」


「任されたニっ!」


危険がないと分かれば、後はニキが次の行先を感じ取るだけ。行先が分かり次第、すぐにでも出発してしまおう。


ラヴィ王女との手合わせで軽く運動したとはいえ、療院のベッドで寝まくった体はまだ鈍ってる。これ以上ゆっくりする支障が出そうだ…。


ニキが感じ取るまで、アクアスは女王達の気を惹き、私は兵士達の気を惹いてそれとなく誤魔化す。この瞬間が変にドキドキする…。


「カカ~! 用は済んだしそろそろ行こうニ~!」


「おう分かった! それじゃ兵士さん、今後も見張りお願いします」


無事に用を済ませた私達は城まで戻り、ムネリ女王とラヴィ王女と別れ、どこにも寄らずに真っ直ぐ発着場へと向かった。


「っで? 次なる目的地はどこなんだ?」


「えー? 今聞いちゃうのは面白くないニよー? こういうのはギリギリで明かした方が絶対面白いニ! ニキはエンタメの分かる女ニね~♪」


「いやいや私には教えてくれよ…私がオマエ等を運ぶんだから…。──教えてくれないと出発できないってェ…! オイ聞けェ頭巾…! バカタレ紫…!」







──明昼あかひる -リーデリア領 上空-


「カカ様ー…そろそろわたくしにも教えてくださいよー…。ズルいですよ…自分は教えてもらったのに…」


「恨むんなら企てた張本人を恨むんだな。──おっ? いよいよ雨ゾーンか…」


ファスロを発って少し経つと、厚い雲が空を覆い始め、今では飛空艇の下に広がる雲海は時々閃光を放っている。雲下は珍しく雨模様、雷も轟々唸ってる。


静月じきでは珍しいが…もうそろ餓鬼月がつきに入ってしまう前兆なのだろうか…。鬱だねェ…面倒が増えるねェ…。


「っと…そろそろかな? アクアス、護煙筒の準備頼むっ!」


「もう目的地に着いてしまったんですか? ──結局最後までわたくしには教えて下さらなかったですねカカ様…」


「怖い顔すんな…ここはまだ目的地ではねェよ。昨日消耗品の在庫チェックで少ないのあったろ? それの買い足しをしにちょっと寄るんだよ」


護煙筒を焚き、飛空艇を厚い雲に沈めていく。雲を抜けて雲下に出ると、やはり外は一面雨模様、雲上とは異なり薄暗い。


そんな飛空艇の先の方に、予定していた町の灯りが薄っすらと見える。雲で地上は見えないながらもほぼジャスト、今日も速度計算バッチリですわ。


地図によればあそこは〝娯楽の町〟らしく、街ほどの規模ではないのだが、連日町の外から観光客が訪れるそうだ。


そこなら十分消耗品も補充できるし、何より本来の目的地の間にあってちょうどいい。あんまり雨に濡れるのも嫌だし、ぱっぱと済ませちゃおう。




     ▼   ▽   ▼   ▽   ▼




<娯楽の町 -レクターン- >


今日は生憎の雨だというのに、外を歩く人影は普通に多い。こんな悪天候の中でも何か催しをやっているのだろうか。


興味がないと言えば嘘だが…今回は遊びに来たわけではないので、残念だが長居はしない。足早に商人商会マーチャントギルドへと向かう。


必要なのは護煙筒3種に、〝滾騰石こんとうせき〟と〝バイオピークン〟。お金に余裕もあるし、いつもより多めに買い足した。


大き目の紙袋3つ分、護煙筒の袋は重いからニキにパス。それぞれ1つずつ紙袋を持ち、濡れないように外套の中に隠す。


そのまま店を後にしようとしたが、アクアスが何かを見つめていた。何を見ているのかと気になり、アクアスの視線を辿ってみる。


「──〝〟…貴族か…?」

※ミスレイスにおいて、傘は権力の象徴。


「付き人も居るし、間違いないニね」


外套を身に纏う人々の中にぽつんと1つ、雨を凌ぐ黒い傘があった。青いドレスとつばの広い帽子を着飾る女性、見るからに貴族だ。


横に立つ執事らしき人物が傘を差し、その後ろには付き人と思しき人物が3人。この惜しげもない人使い…ただの貴婦人ではあるまい…。


生憎の雨天だというのに、傘を差してまで貴族が訪れるとは…それほどの特大イベントが行われているのか…?


「ねェねェカカ、ニキ達もちょっとだけ見に行こうニ! 貴族が足を運ぶなんて、よっぽど面白いことをやってる証拠ニ!」


「何言ってんだ…ここには軽く寄るだけって言っただろ…? 用が済んだんだからもう行くぞ、出発だ出発。オマエも何か言ってやれ」


わたくしもちょっぴり興味が…」


「オイオイ…──しょうがねェな…ちょこっとだけだぞ…」


私達は一旦荷物を置きに飛空艇へ戻り、再び町へと入った。貴族の後を追うように大通りを進んで行くと、徐々に人数が増えてきた。


ほとんどの人が同じ方向へ進んでおり、中には子連れの姿もある。人の流れはまるで川の水のようで、どこかへ誘われているかのよう。


流れに逆らわず歩いていくと、やがて家と家の間に大きな建物が見えてきた。カラフルな色彩をしたその建物は、まるで闘技場のような円形をしている。


どうやらこの中で、雨天にも関わらず人を惹き付ける娯楽が行われているらしい。流石にちょっと興味が湧いてきた。


入口のところで入場料を払うと、1人1つ袋を貰った。中には石が詰められており、これが何なのかはまるで分からなかった。


中へと入ると、既に沢山の歓声や拍手の音が響いていた。他の客は左右の階段で上に向かっているので、私達も階段を上がる。


観客席エリアに出ると、歓声は一層大きくなった。中央のステージを囲む様に観客席があり、見渡す限り全ての席を人が埋め尽くしている。


座ることのできなかった人は立ったままステージを眺めており、私達も同様に立ったまま観覧することに。


皆が歓声を上げ拍手を送るステージでは、華々しいパフォーマンスが行なわれていた。3本の火柱が上がり、その間を誰かが高速で飛行している。


どうやら〝火吹族イグミ〟の子供3人が火を吹き、その火を〝鳥賊ゾバ〟が華麗に避けるショーらしい。あの力強くも正確な飛行には、確かに拍手を送りたくなる。


しばらく息を吞んで眺めていたが、次第に妙な違和感を覚えた。あの3人の火吹族イグミ…ただ火を吹いているわけじゃない…。


全体を客観的に見てみると、火吹族イグミ達は空飛ぶ鳥賊ゾバ目掛けて火を吹いているように見える…。


それにあの4人…全員首枷をつけている…。身に付けている服もどこか古ぼけているし…何よりもその表情に鬼気迫るものを感じる…。


[終ーー了ーーー!!! それまでェーー!!]


ステージ脇に居た司会らしき男が大きな声でそう言うと、鳥賊ゾバの男は息を切らしながら降りてきて…3人の子達は何故か今にも泣きそうになっている…。


観客達は皆笑顔で拍手を送っているのに…何なんだあの場の空気感は…。


[勝ったのはレイダ!! 実に見事な飛行でしたねェ、流石は鳥賊ゾバの戦士と言ったところでしょうかっ! ──さァ皆様お待ちかねですっ!! 無様にも負けてしまったこの哀れな子等へ! 拍手代わりに敗北の礫をっ! お送りくださいっ!!]


その司会の一言で、観客達は一斉に子供達へ何かを投げつけ始めた。それはさっき貰った袋に入っていた石…それを躊躇なく投げつけている…。


子供達は互いに身を寄せ合い…延々と降り注ぐ無情な礫をその小さな背中で受け止めていた…。


「何…なんだこれ…、悪趣味過ぎる…」


「見てらんないニ…」


吐き気を催しそうなほど惨い光景に…反射的に顔を逸らして瞼を閉じてしまう…。耳に入ってくる不快な声の全てが…この上なく気持ち悪い…。


投石はしばらく続き、ようやくストップがかけられた頃には…子供達の服は血で滲んでいた…。そのまま4人は男達に連れられ、奥へと消えていった。


[実に素晴らしい戦いでしたねェ~! それでは皆様っ! 本日は貴族様が来ているということで、とても珍しいものをお見せしましょう!! どうぞォ!!!]


司会の男が大きく手を上げると、鉄格子のゲートがゆっくり開き、その奥から2人の人物が登場した。一方は関係者と思われる男だが…もう片方は子供だ…。


子供には手枷と首枷がつけられており…首枷に繋がれた鎖を屈強な男が握っている。もうすでに嫌な予感しかしてこない…。


珍しいものと言っていたが…頭の触覚からしてあの子は蟲人族ビクトだ…。リーデリアからすりゃ火吹族イグミ鳥賊ゾバの方が珍しい筈だが…。


[一見何の変哲もない蟲人族ビクトの子共ですがァ~、なんとこの子供は超能疾患クァーツ! 要するに〝悪魔の使い〟なのですっ!]


その一言で会場全体がざわつき始めた…。近くに居る観客の声が聞こえる…「気持ち悪い」…「不気味」…「さっさと殺せ」…、どれも聞くに堪えない…。


[では実際に、悪魔の使いだけが持つという不可思議な能力チカラをご覧にいれましょう! サマリー家のご令嬢、よろしければこの不浄なる存在と目を合わせていただけますかァ?]


何が〝不浄なる存在〟だ…、嬉々として人に石を投げる娯楽を提供してる奴が何言ってんだ…。テメェ等の方がよっぽど不浄で醜穢しゅうわいだろうがよ…。


今全てが許されるなら…ここの関係者全員に地獄を見せてやりたい気分だ…。あの子がオマエ等に何をしたってんだよ…!


[この子供は〝目を合わせた相手の情報を得られる〟能力チカラを持っています! 試しに知る由もないご令嬢の名を当ててもらいましょう! もし合っていましたらお客様っ!ありったけの礫をお願いしますっ!! それではどうぞォ!!]


子供に振ると、屈強な男は拡響石かくきょうせきらしき物を子供に渡した。子供は涙を浮かべ…今にも泣き出しそうな顔でゆっくり貴族と目を合わせた…。


「──モ…モリソン・サマリー…です…」


「…っ?! ──気持ち悪い…!!」


名を言い当てられた令嬢は、鋭い目つきで子供に石を投げつけた。それを皮切りに観客達も石を投げ始め…畜生共の鬼畜行為を一身に受け止める…。


会場を埋め尽くす罵詈雑言と…床に落ちた拡響石かくきょうせきから僅かに響く子供の泣き声…。そこで限界を迎えた私は…無言でその場を離れた…。


受付の男に袋を投げ返し、外套のフードも被らず外に飛び出した…。私は真っ直ぐタウンマップを目指し、雨に濡れるマップを凝視する。


「カカ様…フードを被ってください…、風邪を引いてしまいます…」


「カカ…大丈夫ニ…?」


「──大丈夫なわけねェだろ…! オマエ等も見ただろあの胸糞悪い見世物を…! 反吐が出そうだ…!」


瞼を閉じれば鮮明に聞こえてくる…さっきの子の悲痛な泣き声…。脳裏にはあの4人の表情かおが浮かぶ…絶望に打ちひしがれた表情かおが…。


あの5人が何したってんだ…! あんな仕打ちをされるだけのことをしたのか…?! 石を投げられて笑われて…家畜以下じゃないか…。


「憲兵に相談するのはどうですか…?」


「無駄だよ…、貴族の護衛の為か知らねェが…あの場所には憲兵が複数人居た…。あの見世物を見てたんだ…! なのに…平然と石が投げ込まれるのをただ黙って傍観してるだけ…! 多分…この町の憲兵は買収されてる…」


「憲兵はダメでも兵士なら問題ないんじゃないニ…?」


「兵士なら確かにそうかもな…でも見てみろ…、この町には駐屯所が無ェ…。ここら一帯は極端に危険が少ないんだろう…だからやりたい放題なんだこの町は…」


奴隷制度は近年色んな国で規制が進んでる…きっとリーデリアも規制してる筈だ。でなきゃ人手が必要な王都再建に…奴隷を使わない理由がない…。


兵士は王族と国の為に尽くすから、国法を軽んじたりしない。だが憲兵はあくまで組織の一つ…善を貫こうが悪に染まろうがおかしくない…。


兵士が居ない以上…町の秩序を守る憲兵が規範の全て…。つまりこの町は根底から腐り果ててる…蛆のたまり場だ…。


時々兵士達も見回りに来てるんだろうが…呑気に見世物を楽しんだりはしないだろうし…、バレないように上手く隠蔽してる筈だ…。


だからと言って強行策に出ても…ありもしない事実を捏造されて犯罪者にされるだろう…。どうにか助けたいが…普通にやったって望みが薄い…。


にやれば──。


「2人共…、私…あそこで苦しんでる全員を助けたい…。でも危険が伴うし…正攻法でもない…。それでもいいなら…私のわがままに付き合ってくれないか…?」


「──わたくしはどんな時もカカ様の為に尽力致します…!」


「ニキも親友の為ならチョー頑張るニ! やったるニ!」


2人の言葉で…私は少しだけ心が軽くなった…。おかげで決心もついた…、1人じゃ難しいが…この2人が居れば必ず成就する…!


助けられる…人以下の不当な扱いで虐げられている人達を…!


「ありがとう…、そんじゃ早速準備だ…! アクアスは私と一緒に来てくれ、あれこれ買う物がある。ニキはまた頼まれてくれるか…? 作ってほしい物があるんだ」


「頼まれたニ!」


この町にはちょっと寄っただけ…、それだけの筈だったのに…いつの間にか凄い展開ことになってしまった…。


だが知ってしまった以上…無視はできねェ…! 他者の苦痛・哀傷で懐を肥やすゴミ共に…必ず報いを受けさせてやる…!







──深更しんこう


「よし、全員準備はできたな…?」


「これはまた…職人技の光る小道具ですね…」


「へへへ~♪ 照れちゃうニ~♪」


雨は止み夜は更け、住民達が眠りについた町は真っ暗。明かりは澄んだ空から零れる月と付喪暦月ツカヤの僅かな光のみ。


そんな静まり返った町の中、擬態するかのように私達も静かに行動を始めた。店で買った黒いローブで闇に紛れ、私達はあの建物を目指す。


顔にはニキお手製の仮面をつけ、アクアスとニキはカツラを被る徹底ぶり。正攻法じゃないのだから…これは当然の準備だ。


そして最後の仕上げにベンゼルデ土産の〝一角族ホコスなりきり角〟を取り付けて、準備万端だ。私達の正体が人族ヒホとは夢にも思うまい。


「カカはカツラ被らなくてもいいニ? それにアクアスは武器違うし…」


「私はいいんだ、これも策だからな。武器が違うのは仕方ねェ…衝棍シンフォンはあまりに目立つし、折畳銃スケールも不安要素が多い」


衝棍シンフォン使いは絶滅危惧種、バカ正直にそんなものを使ってたんじゃ…顔を隠した意味がなくなる…。


威力こそあるが、重量と反動の観点から折畳銃スケールはまだ世界的に普及してない。衝棍シンフォン使いより数は居るだろうが、それでも目立つにゃ目立つ。


故に今回アクアスは弓使い、私はニキと同様に素手で挑むことになった。っと言っても私は敵の武器を奪うつもりでいるけど。


「兵士の方々は…ちゃんと来てくださいますよね…?」


「何の為にムネリ女王から貰った王紋をチラかつかせて極秘に手紙を出したと思ってんだ…。来てもらわにゃ困るぜ…」

王紋おうもん=王族との繋がりを示す国章のペンダント


明昼頃にここから一番近い駐屯所へ手紙を出した。向こうに届いて中宵ちゅうしょう、そこから兵士が出発してここへ着くのが深更しんこう


すなわち今がベストタイミング…! 私達が目的を果たし、そこへ追い打ちのように兵士達が流れ込む…! それでゴミ共は一網打尽だ…!


腐った憲兵諸共連行され、囚われている人達は保護される。──けど全員じゃねェ…、だからこその私達だ。


超能疾患クァーツのあの子も無事に救われるとは…私にはとても思えない…。そのまま放置か…最悪その場で斬り捨てられるだろう…。


そこだけは…例えムネリ女王が治める国の兵と言えども信用はできない…。他の誰にも任せてはおけないんだ…。


並々ならぬ決心を胸に、私達はあの建物に着いた。正門には門番が2人、正面突破はできるけど…ゴリ押しは最終手段に取っておきたい。


ってことで建物を囲む高い塀の上に登り、外周を回りながら侵入できそうな箇所を探すことに。気付かれないよう慎重に──


「何だオマエ等…?! そこで何してる…?!」


めっちゃバレた…闇に紛れる為にローブまで買ったのに…。流石に満月の夜では無謀だったか…? ちょっと悲しい…。


塀の上に立つ私達のもとに、続々と武器を持った男達が集まってきた。こうなっちゃ隠密行動は無理だな…よし、最終手段に出よう…。


「何者だオマエ等…?! 名を名乗れ…!」


「名…? ──ふふふっ…いいだろう…!!」


私達は堂々と塀の上に立ち、月明りを背に受け…群がるゴミ共を見下ろす。数は増していくが…私達は一切怯まない。


そして想像通り〝名前〟を聞かれた…! キタキタ…! この時の為にわざわざ憲兵ディーテ君に切られた角をつけてきたんだ…!


「我が名は〝盗賊ルナール〟…! 貴様等が平然と犯した非道・悪行…それによって築いてきた日常の全てを奪いに来たァ!!」



──第92話 見世物〈終〉

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