<〔Persp
「──よし…これでもう少しだけカカ様の為に戦えます…」
幹部相手にからく辛勝を掴んだ
どれほど役立たずであろうと…戦いが終わるまでは戦い続けなければ…。それすらできないでは…カカ様に合わせる顔がありません…。
「──アクちゃーん!! そっち大丈夫ー? 怪我とか…──してるゥ…?!!」
「ご心配には及びません、既に
「こっち? こっちはもうほぼ全滅だね、口ほどにもない奴等ばっかりだったよ」
ひとまずここは片付いたみたいですね…っとなれば別の場所に向かわなければ…。きっとニキ様もベジル様もまだ戦っておられる筈…急がなければ…。
残り弾数は心もとなくなってきましたが…それを言い訳にはできない…。もっと貢献しなければ…でなければ
「 “キュルゥゥ…!!” 」
「…っ!? アクちゃん避けて…!!」
突如背後の砂地から飛び出してきたのは大きなクモ…。脚を大きく広げ…剝き出しの牙で今にも嚙み付こうとしてきている…。
避けようにも逃げ場がない…どこへ回避しても脚で捕えられてしまう…。そしたら瞬く間にあの牙の餌食にされる…その結末が目に見える…。
「 “ジャラッ” 」
“バクンッ!”
「あっ…」
「うわっ…クモ食べちゃった…」
一瞬死を悟ったのと同時に…音もなく右側から接近していたポチ様がひと口で死を平らげてしまわれた…。
毒を持ってそうな感じがしましたが…食べても大丈夫なのでしょうか…。恐るべき健啖家…流石は生ける神話級生物のポチ様です…。
「めいどのお姉さーん! こわいの全部ポチが食べちゃったよー! 人は食べちゃダメなんだったっけ?」
「そうですね…人は食べずに、ほどほどに攻撃するだけに抑えてください…!」
「はーい! じゃあ悪者たいじだっ! ポチしゅっぱーつ!」
「 “ジャララッ!” 」
そう言ってユク様&ポチ様はどこか楽しげに行ってしまわれた…。
向こうではまだ激しく砂煙が上がっている、恐らくニキ様とベジル様が暴れているのでしょう。微力ではありますが、
カカ様はまだ七鋭傑の方と戦っている…、となれば万が一にもその戦いに邪魔が入らぬようしなければならない…。
それが今
<〔Persp
「 “キシャアアアアッ!!” 」
「〝
空を飛ぶクギャの背に乗ったまま…幾度目かの強烈な攻撃のぶつけ合い…。
攻撃で軌道を逸らすのが関の山…あの尾が破壊できずにいた…。しかもそんな尾が3本もあるときた…、どうかしてるぜあの生き物は…。
「ンッフフ…! 防戦一方で苦しそうね~、アタシの出る幕が無さそうで残念だわ~。さっさと諦めて殺された方が楽なんじゃなーい?」
「なんとでも言えよ…! すぐにテメェを舞台上に引きずり出してやっからよ…!」
「あらそう? それならアタシも張り切って妨害しないとね…! すぅー…── “キィィィィィィィィ…!!” 」
またやってきた…この全身のあちこちで鳥肌が立ちそうな嫌な音…。筋肉が音に押さえ込まれているかのように力が入りづらくなる…。
服の切れ端を耳栓代わりにしてある程度は抑えられているが…それでもかなり支障が出てる…。本能が拒絶しているのだろう…、これ以上の対抗策はもう無ェ…。
「 “キシィィ…!” 」
「またくるぞ…避けろクギャ…!」
「 “クギャ!” 」
鋭い針をこさえた尾っぽが再び私達へと伸ばされた。クギャは翼を畳んで急降下し、ギリギリ攻撃を回避。
しかしまだ攻撃は続く…、下に逃げれば次はデカいハサミが待ち受けている…。私とクギャを重ねても余裕で
右腕のハサミで攻撃を仕掛けてくるようだが、左腕も準備が済んでいるな…初撃を躱させて次の一手で仕留める算段か…。
だがそこまで分かっても現時点で有効な手は無し…、ここはクギャに素直に避けてもらって…左腕は私がまた対処しよう。
クギャに避けるよう指示を出すと、今度は力強く翼を羽ばたかせ急上昇。大した飛行能力…しがみつく私の方が必死だ…。
この急上昇のおかげで初撃は見事に回避、しかし予想通り二段構えで
「ちょっと我慢しろよ…! そんでその後ちゃんと私を回収しろ、いいな…!」
「 “ギィ…? ギャギャッ?!” 」
私は勢いよくクギャを踏み付け上にジャンプし、踏み台にされたクギャは減速。結果ガチンッと閉じたハサミに挟まれずに済んだ…危機一髪ってやつだ。
私は表面がザラつくハサミの上に着地し、効くか分からない攻撃を叩き込んだ。まるで岩の様な甲殻…だが内部への衝撃の響きに手応えを覚えた。
「 “キシャリッ…?!” 」
尾とは違ってちゃんと衝撃が沈み込んでいくのを感じる…これは効いてる…! 思わぬ収穫だ、もしかしたら胴や頭部にも効くかもしれない。
その可能性が浮上しただけで希望が湧いてきた。正直
「 “キャシャッ!!” 」
「おっと! そうはいくかっての!」
ハサミの上に立つ私目掛けて
「── “クギャギャー!” 」
「ナイスキャッチ! 流石は私の舎弟だ、頼りになるな!」
再びクギャの背に乗り、高所から
割と知性あるみたいだし…同じ手が通用するとは思わない方が良さそうだ。どうにか別の手段で近付いて、頭部に一撃叩き込みたいところだが…。
「ふぅん、中々抵抗してくるじゃない…。邪魔な耳栓のせいで妨害の効きも悪いし…やんなっちゃうわねェ…」
「なんだ弱音かァ…? 吠え面だけはかかないでくれよ…? こっちが加害者みたいになっちまうからなァ…!」
「本当減らず口ね…戦況見えてる? 妨害が効かなくたって、
うーん…コイツ全然感情的にならねェな…。腐っても七鋭傑か…やっぱ前に戦ったイタチ女とは比べ物にならないほど格上だな…。
そんで言ってることが事実なのもムカつく…。妨害してこないのはありがたいが…だからと言って
動きはクギャより鈍いが、充分過ぎるだけの速さが備わってる。攻撃力は言わずもがな…攻撃範囲は広すぎ…、トドメにクソ硬いときた…頭が痛ェぜ…。
一撃で仕留めれるなら仕留めたいが…なんせあの巨体だ…絶対に無理…。少なくとも4~5発は必要だ…、全て同じ個所に当てられれば…の話だが…。
「 “キャシャアアッ!!” 」
「策を考える時間はくれねェか…」
クギャはすぐさま上へ回避、
左手でクギャの体をぽんぽん叩き、今度は横方向に攻撃を躱させた。上に逃げてもいいが離れ過ぎては反撃に出られないからな…少しずつ近付いて行かねェと。
横移動をする私達に、
次はクギャの体をグッと押し込んで下へと回避させ、そのまま
無論
私はクギャの背中から落下し…内臓が浮き上がる間隔を覚えた…。っがすぐにクギャは下へ回り込み、足で私の両肩をキャッチ。
「うわあああっ…?! いきなり逆さになんなよバカタレ…! せめてなんか合図出せや…! 死ぬかと思ったわ…!」
「 “ギャギャッ! クギャー!” 」
「あんっ…? なんか考えがあんのか…?」
クギャは自信あり気に宙吊り状態な私の顔を覗き込んできた。この状態で何をしようとしているのか分からんが…ちょっと危険な予感がする…。
だが現状名案は浮かばないし…ここは大人しく従うしかないな…。頼むぞクギャ…こんな情けない宙吊り状態で死にたくはねェからな…。
私の両肩を掴んだまま、クギャは迎撃する気満々の
クギャは素早い飛行で尾やハサミを躱していくが…中々
このままじゃ一方的に疲弊させられるだけだ…持久戦はウマくねェ…。どうにかしないとヤバいぜクギャ…。
「 “キィシィシィシィィ…!!” 」
「おうっ…?
尾3本の内1本を伸ばして攻撃、その後は残りの尾かハサミでってのが
最初に比べて攻撃が明らかに雑になっている…。怒りは判断力を鈍らせる…もしかすると思わぬ隙を晒してくれるかもしれない。
「 “キャシャーー!!” 」
シンプルに凄ェけど…遠心力で内臓苦しい…、クギャはこの後私に何をさせようと言うんだ…。そろそろキツいぞ…吐く5歩手前って感じ…。
尾を完璧に避け切ったクギャは
突然クギャは急降下…そしてまさかのリリース…! まだ空中なのに手放された私の体は…
その後すぐにクギャは
だがまあ…やり方はどうあれ
「〝
痛みと引き替えに、渾身の一撃を脳天に振り下ろした。バキバキと音を立てて甲殻がひび割れ、ガクンッと
本気打ちに落下の勢いが加わり、通常よりも威力は上がっている筈だが…手から伝ってくる感覚はまるで真逆…。
堅い甲殻こそひびを入れられたが…衝撃が内部に全然届いていない…。デカい図体なだけあって身もかなり肉厚…、だから衝撃が浸透しづらい…。
だが甲殻がひび割れたこの状態なら…さっきよりも攻撃は効く筈…! もう一撃本気打ちを喰らわせれば…衝撃は脳まで──
“──キーン…!!”
「〝
「…っ! がァ…?!」
〝音〟が聞こえた刹那…左頬に鮮烈な痛みが走った…。皮膚が弾け…血の滲む肉が剥き出しに…、叫び出したくなるほどの痛み…。
十中八九
私は素早く左手で毒ナイフを取り出し、ひび割れた甲殻の隙間に突き刺した。そしてすぐにその場を離れる、フロンに追い打ちはさせない。
「
「いーや違うね、テメェがあまりに小者すぎて見えなかっただけだ…! いい目覚めのビンタだったぜ…親切にどーもな…!」
これで二度目だ…コイツに頬をやられたのは…。一層闘志が燃えてきたぜ…この借りは何倍にもして必ず返してやる…!
だがその為にはやはり先に
「トーキーから聞いてるわ、これ毒ナイフよね? でも残念…
ウゼェェェ…マジ何なのコイツ…。私は反骨精神であれこれ物言うけど…コイツほど純粋に性格悪い奴初めてだぜ…。
体全体を血液みたいに殺意が巡っていくのを感じる…、気持ちが乱れている証拠だ…。この状態じゃ到底
冷静になるんだ…怒りを殺せ…。
もうすぐだ…もうすぐテメェを安全な玉座から引きずり落とせる…! 首を洗って待ってやがれよクソエナ…!
──第78話 竜騎師〈終〉