<〔Persp
「迅通弾…!! ──炸裂弾…!!」
勢い落ちぬ賊方相手に…気を抜く暇もなく銃撃をし続けた。装填…発砲、装填…発砲、砂漠の熱さの中でひたすら同じ行動を繰り返す。
賊方を着実に削れているとは言え…こちらの体力も膨大ではない…。少しずつ…それでいて明確に疲労が全身に溜まり続けている…。
特に
その前に可能な限り頭数を減らす…それが今の
実弾を使用したとて…
故に体力の温存は致しません…! この身一つでカカ様のお役に立てるのならば本望…! 必ず己の責務を果たしてみせます…!
「近接は一旦退き、盾使い前へ出ろ…! 四方から押し潰し、無力化するのだ…!」
幹部の一言を受け、大盾を持った方々が前衛に出てきた。かなり丈夫そうな盾…
どうしましょうか…──はっ…! そうですアレがありました…! 異例の実弾許可と日の浅さのせいで失念していましたが…こんな時にピッタリな弾がありました…!
「〝
「ぐっ…フハハッ…! そんな攻撃効きは…──なっ…何だこれは…!?」
大盾は見事貫通を防ぎましたが、凍結は防ぎようがありません。着弾部分から膜を張るように凍てついていき、大盾を支える両腕さえも凍り付いた。
「下手に動かない方がいいですよ…! 凍てついた腕が粉々に砕けてしまいますので…!
取り囲まれては厄介でしたが、臆して攻めてこないのであればどんどん攻め立てるが吉。
撃ち込まれた3人は、それが
摩擦熱程度で対処できるものではないのですが…
っとは言えかなり好都合、邪魔な大盾持ちを全員削れたのは大きい。あの様子ではもはや使い物にはならないでしょうし、スルーで問題ありませんね。
問題はまだまだ控えている兵隊…、萎縮していても幹部が一声指示を出せば…死に物狂いで襲い掛かってくることでしょう…。
どうしましょうか…
「──〝
「「「 ギャアアアアアッ…?!! 」」」
「ふェ…!? リーナ様…?! どうしてここに…?!」
突然風切る音と共にリーナ様が突っ込んできた…。激しく打ち上げられた賊の方々はバタバタと落下し…ピクリとも動かない…。えっ…死なれました…?
「助けに来たよ…!! 大丈夫アクちゃん…?!」
「
「いやや大丈夫だよ大丈夫…! ちゃんと加減したから…! もしこの程度で死んだら悪いのはコイツ等だから…!」
若干暴論な気もしますが…今回はそういうことにしましょう…。死んだら天罰…死んだら自業自得…、悪は滅びる
リーナ様が加勢に駆け付けてくださったことで、賊方は更にどよめき始めた。剣先を交互に向けながら、じりじりと後ろに下がっていく。
「リーナ様、ここの賊方をお任せしても宜しいでしょうか…。
「うんっ了解…! もしヤバそうだったら私を呼んでね…! それはもうあっという間に駆け付けるから…! 気を付けてね…!!」
リーナ様は石像戦でもご活躍された確固たる実力の持ち主、あの程度の賊方に遅れをとることは決してないでしょう。
ともなれば、あとは
「私とサシで戦るつもりか…。一対一なら簡単に私を倒せると思っているのなら痛い目を見るぞ…! 私は他の者達とは違うからな…!!」
「興味ありません…!!」
弾の形状故に、他の弾丸よりも更に速く狙った先へ飛んでいく
ですが
いえ…問題はそこではありません…、
以前カカ様の指示で、カカ様を狙って撃ったことがありましたが…
カカ様が避けれたのは
防御は回避よりも難しい…それを
「ふんっ…! どうだァ…! 貴様の弾など…私にはまるで効かぬぞ…! このまま弾切れを待ち…裸同然の貴様を切り刻んでくれようか…!」
< フロン隊幹部 〝
「──作戦を変更します…」
仕組みは分かりませんが…速度任せの弾は通用しないご様子…。であれば…特殊な弾を多用し、こちらの優位を保ちながらじわじわと消耗させるのみ。
「…っ! 弾を変えたな…? 爆発する弾か凍りつく弾か…、どちらにせよ…ただ黙って弾を防ぐだけだと思わぬことだな…!」
装填を終えた
銃口から放たれた弾は瞬く間に虚空を滑っていったが…今度は見事に回避されてしまった…。装填だけなら間に合いますが…次弾を撃ち込むのは難しそうです…。
ですが
どうやら全身を覆う毛皮が…危険を感じ取る働きをしているようですね…。それも
「〝
「うぐぅ…! 重い…」
そこまで筋肉質ではない腕なのに…想像以上に重たい一撃…
「そらっもういっちょ…!〝
「あぐっ…?!」
間髪入れず空いていた左腕での追撃…。咄嗟に体を仰け反ったことで大事には至りませんでしたが…掠った爪先が右頬に切り傷を付けた…。
危機察知能力も厄介ですが…何よりあのすばしっこさが一番厄介ですね…。危険を察知してから回避行動までが凄く速い…、まるでカカ様を相手しているかのよう…。
「もう手札は出し切ったようだな…! 爆発と凍結にさえ注意を払ってしまえば…貴様など私の相手ではないわ…!」
既に勝ちを確信したかのような言葉遣い…、
っとは言え無根拠とも思えませんし…ここは一度試してみましょう…、
これで
右肩に狙いを定め…ダメもとで引き金を引いた。結果は…一度目二度目と同様に
「何度やっても結果は変わらんぞ…! 速いだけの弾など対処は容易だ…!」
「そのようですね…」
やはり…避けずに防御してきましたね…。今ので確定しました…
それも危機察知能力の恩恵でしょうか…。見てもいないのに弾の危険度を察知できるなんて…カカ様以上の危機察知能力…。
回避すべき弾は回避しつつ…防げる弾にはあえてリスクを冒さず防御の姿勢…。分かり易く相性最悪の相手ですね…、こちらの強みが殺されている…。
「次はこちらの番だ…! ズタズタに切り裂いてくれる…!!」
「申し訳ありませんがご遠慮させていただきます…!」
定石通りに攻めても効果は薄い…、であれば奇手に打って出ます…! カカ様ほど機転は利きませんが…勝つ為に色々やってやります…!
まずは
毒入り瓶を前方に放り、すかさず
即興の
次弾の準備をしていると、砂煙の中から幹部が飛び出してきた。毛皮にはパラパラと氷が付いていて、防ぎきれなかったと見て取れる。
っとは言え毛皮が邪魔して大したダメージにはいないことも窺えます…。倒すにはやはり確実に弾を当てるしかないようですね…。
「くだらん足掻きは止せ、貴様では私に勝てん…! 他の幹部が相手なら可能性はあっただろうが…私はかつて本気で七鋭傑の座を狙って鍛錬していた…! 埋めようのない実力差は明確なのだ…!」
「あぐっ…?!」
恐れのない直進で一気に距離を詰めてきた幹部の
決して浅くない傷…かなりの痛手…、ですが待ってましたよこの時を…! 傷は負いましたが…後ろに跳んだことで生まれた隙間、付かず離れずのこの距離を…!
今すぐ追撃をしたいでしょう…?! ここで勝負を付けてしまいたいでしょう…?! だから
弾の危険度が判ってしまうのなら尚更…ここで退ける筈がない…! 現に幹部は防御の姿勢で待ち構えており…その後すぐに跳び掛かかれるように膝を少し曲げている。
その姿を見た
「〝
「ぐがァ…?! な…何が起き…!?」
「貴様ァ…何をした…?!」
「何って…今まで通り〝所持している弾〟を撃っただけですよ…! お忘れですか…? 貴方自身も仰っていましたよ…!」
「何だと…?! 一体何を…──っ!」
“奴は実弾を使わないのではないのか…?! サリもトーキー様のところのエノーも…
「気が付いたようですね、もう手遅れですけど」
より深く刺さる
「グガァァァ…!! 舐めるな小娘がァ…!」
幹部は苦し紛れに嚙み付こうとしてきましたが、今更そんな攻撃を喰らうことはなく…サッと後ろに跳んで回避。
そして冷静に素早くゴム弾を装填し、がら空きの眉間にトドメの一撃を放った。
「〝
「グギャアアアアアッ…?!!」
体が少し宙に浮き…そのまま幹部の体は仰向けに倒れた。ゴム弾とは言え、頭部に喰らえば脳震盪は必至…しばらく目を覚ますことはないでしょう。
しかし…うぅ…
──第77話 忠義の弾〈終〉