“──エギャアアアアアッ…?!!”
「おっ! 向こうも派手にやってるニね~、何をしたらあんな高く飛ぶんだろニ~」
<〔Persp
あっちは確かベジルとリーナの方向、どっちかがハッスルハッスルしてる証拠ニね。まあ多分リーナだと思うニけど…、アクアス関係でブチ切れてそうニ…。
「よそ見するとは…よっぽど余裕だな貴様ァ…! ならお望み通り今度こそ地獄に突き堕としてやる…! ふんぬァ…!!」
「うわっ…またこれニ…。戦法少ないニねー…心配になるニ…」
尻尾が扇子のようになっているイタチ女は、尻尾を生かして砂を巻き起こしてくるものの…それが何回目かもはや分かんないニ…。
砂で目くらましして、砂が晴れる前に集団で叩く。戦法は悪くないんだけど…純粋にニキが頑丈過ぎて効きがイマイチなのよニー…。
相手がカカやアクアスだったなら…また結果は違ってただろうけどニ…。でもコイツ等に同情なんてできないし、容赦なく叩き潰してやるニ…!
「〝
「
「げぶゥ…?!!」
左側から殴りかかってきたカンガルー女に、無慈悲の
「〝
「痛たたたたっ…! えェいっ許さないニ…!〝
「ぐがァ…?!!」
今度は右側から剣を持ったシマウマ女が斬りかかってきた。素早く剣を5回振るう剣技で…右腕から出血した…。
でもそこは流石のニキ…! 斬られて出血したと言っても、精々小さな刃物の切り傷程度。こちらも同様に無慈悲な
こちらも即撃沈、どいつもこいつも柔いニ。シヌイ山で戦ったあのサイ男は骨があったニけど、コイツ等は全員大したことないニ。
「〝
「むむっ…! ハァ…!!」
頭上から姿を見せた幹部と思しきイタチ女は、血管が浮き出る程に力んだ両腕で斧を振り下ろしてきた。けどそれももう何回目も見た。
今までは律儀に避けてたけど、今度は真っ正面から力勝負に出る。振り下ろされた斧の刃を右手で掴み、イタチ女の全体重が乗った斧を止めた。
「嘘…だろ…?! 何なんだ貴様は…?!」
「ニッキッキッ…! ちょこーっとばかし怪力持ちな
驚愕するイタチ女に余裕を見せつけ、ニキはそのまま真上に投げ返した。少しずつ晴れていく砂煙の上空で、逃げ場を失ったイタチ女と再度目が合う。
ニキはググっと膝を曲げて思いっきりジャンプし、落下してくるイタチ女を空中でキャッチ。そしてそのままァ…力任せに砂地へ叩きつける…!
「〝
「うげェ…?!!」
地面より硬くないとは言っても、勢いよく叩きつけられれば大ダメージは必至。イタチ女は吐血し、すぐには立ち上がれないご様子。
ニキは華麗に着地し、軽い足取りでイタチ女のもとへ。周りの手下達はニキの強さに圧倒されてか、全然攻撃を仕掛けてこない。
「くっ…ぐぅ…、本当に何なんだ…貴様は…」
「だからニキは…ああっ、ひょっとして別の答えをご所望ニ? じゃあ教えてあげるニ──ニキは親友の為なら…修羅にでもなれる女ニ」
「ぐえ…?! 何…を…?!」
ニキは這いつくばるイタチ女の首を掴んで、無理やり顔の高さまで持ち上げた。両腕でニキの手を引き剥がそうとしてくるけど…ニキの手はビクともしないニ。
「アクアスが…オマエ等が攫ったメイドが手を怪我してたニ…。ニキ達と一緒の時はしてなかった怪我ニ──何をしたニ…?」
「メイドの怪我…? それが何だと…うげェェ…?!!」
「黙って質問に答えるニ、じゃないともっと絞めるニよ…?」
本当ならもっともっとギチギチに絞めてやりたいところを頑張って抑えてるんだから…あんまりニキの気を刺激しないでほしいニ…。
ただでさえこっちはもう…感情を押し殺すのも疲れてきたんだからニ…。
「部下から…聞いた話…じゃ…、エギル隊…サリ班のメンバーが…腹癒せに拷問したと聞いてる…。両手の爪と…奥歯を抜き取ったってよ…」
「なるほどなるほど…身動きできないアクアスに好き勝手やったってことニね…? ──ふぅー…やっぱりもう我慢できないニ…、許せないニ…!」
ニキは左手で首を掴んだまま、右手を強く握りしめた。爪が食い込んで流血しそうなほどに強く…深い深い怒りを込めて…。
地獄の淵まで送ってやるニ…! ニキの親友に酷いことした罪…その身で受けろニ…!!
「〝
「うがァァァァ…?!!!」
ニキの怒りの鉄拳によって、イタチ女は自分でもビックリするほどの速度で後方にぶっ飛んでいった。
まるで水面を跳ねる石のようにどんどん遠ざかっていくイタチ女は、一切勢いが衰えることなく自分達のアジトに突っ込んだ。
壁を突き破る音が聞こえ、そのすぐ後に同じ音が耳に届いた。間違いなくアジト貫通、確認するまでもなく意識飛んでる筈。
そしてニキを囲む残された手下達は、真っ青な顔で完全に怖気づいていた。武器は手放さずに持っているけど、いつでも放って逃げ出しそうな様子。
カカじゃないけど、今のコイツ等からは微塵も戦闘の意思を感じられない…憐れみすら抱きそうな変わりよう。でも今回ばかりはダメ、絶対許してやらんニ。
ニキは再び拳を握り、キッと左を睨み付けた。ビクッと体を揺らす手下達に狙いを定め、一切躊躇せずに拳を突き出した。
「〝
「「「 うぎゃあああああっ…?!!! 」」」
叫びながら勢いよくぶっ飛ぶ手下達、うーんこれはスッキリするニねー。ひとまずここに居る奴等全員ぶっ飛ばして、それでも治まらないなら他の奴等もぶっ飛ばすニ。
そうと決まってからは蹂躙の一言、次々とぶっ飛んでいくイタチ女の手下達。殴って蹴って放り投げて叩きつけて──あらゆる攻撃で蹂躙していった。
怒りの赴くまま、殺してしまわぬように必死に力を抑えながら暴れ回る。徐々に手下達は失神していき、数がみるみる減っていく。
まだまだ怒りの灯は消えない、もっともっともっと──
「──ぉぉぉおおおおっ…!!〝踊り子チョーープ〟…!!」
「あびゅ…!? ふぇぇ…?! 何でニキに攻撃するニ…?!」
「そっちの攻撃がこっちにまで届いてるからだよ…! さっき私もぶっ飛んだかんね…?! 横方向だったから良かったけど、危うく死ぬとこだったわ…!!」
怒れるリーナのチョップで、ニキは少し冷静を取り戻した…。明らかにちょっとやり過ぎちゃったニ…これじゃ一緒ニ…。
冷静に辺りを見渡してみると…それはまあ酷い有様で…。あちこち武器が散乱し…手下共は白目をむいて力なく倒れ込んでいた…。
ひとまずニキの方は全部片付いたとみていいニね…結果良ければ全て良しニ…。まだリーナの方が残ってるし、先にそっちを手伝…
「 “ピィーーー!!” 」
響き渡る笛の音、どうやらまだ意識が残ってた奴がいたみたい。リーナと背中を合わせて周囲を警戒するけど、何が出てくるのやら…。
そう思っていると、すぐに砂の中から大きな前足が飛び出した。続々と頭部・胴・後ろ足・尻尾も砂からこんにちはをして、やがて大きなトカゲが姿を現した。
全身を覆う灰色の鱗に紫の水玉模様が特徴的な大トカゲ。ポチを見慣れた後だと…かなり小振りに見えてしまうのが残念ニ…。
「〝
「ニー…
何毒かにもよるけど…ニキは毒持ちとは大体相性悪いニ…。リュックハンマーは強力だけど決定打にはなりにくいし…もう色々嫌な相手ニ…。
倒すには攻撃しなきゃならない…でも刺激したら毒を分泌する…。どうにか分泌した毒の影響を受けない攻撃を考えないと…──ニッ!
「ピキーンッ! 名案が浮かんだニよー! リーナは手を出さないでニッ!」
「ええっ…!? ちょっとどうするつもりなの…?!」
フッフッフッ…ニキは気付いてしまったニ…アイツを完璧に完全に安全第一に倒すベストアンサーに…!
刺激を与えると毒を滲ませるってことは…何もしていない今は無害…! すなわち毒を滲ませる前に…一撃で仕留めればいいってことニ…!!
「〝
あのバカ硬い石像にも通用したこの技…そこらへんの危険生物に耐えられる筈もナシ。
そして盛大に勢い余り…近くで気絶していた手下達もついでに四方へ飛んだ。その光景と、殺さないように抑えてた力を解放できたことでかなり気が晴れた。
「ふぅ、だいぶスッキリしたニ~! いや~良かった良かったー」
「なんも良かねェよ…」
「あっ、砂駆屋だ」
スッキリしたニキのもとに大剣担いだベジルが合流。少し負傷しているけど、全然大丈夫そうニ。ただちょっと不機嫌そうな感じがするのは気のせいかニー…。
「ど…どうしたニ…? 何かあったニ…?」
「急に上から雑兵共が雨みてェに降ってきてよォ…絶対オマエの仕業だろ…? 危うく下敷きになるところだったぞ…」
「うーん…それはちょっと誰が悪いか判別できないニね」
「絶対ニキだよ…」
ベジルとは結構離れてた気がしたけど…相当遠くまで飛んだんニね…、自分恐るべし…。ベジルに直撃しなくて良かったニ…。
もしそれでベジルが倒れちゃったら…どう償っていいか想像もできないニ…。加えて後でカカに死ぬほど説教されちゃうニ…。
「…ってこんな吞気に話してる場合じゃないよ…! どうする…?! まだこっち全部処理しきれてないけど…誰か1人はアクちゃんの手助けに行った方が良くない…?!」
「そうだな、戦闘の意思がある奴はまだまだ残ってるが…多少無理してでも人員割いてメイドの方に手を貸すべきだろ」
2人はそう結論を出すと、まるで最初から決まっていたかのようにリーナは行ってしまった。なんて行動力…メイドオタク恐るべし…。
ってなわけで強制的に後始末はニキとベジルに決定。正直ニキだけでも充分ニけど、ベジルが居てくれれば自然と力加減できそうだから2人でやるニ。
「それじゃま、さっさと全員伸して俺達も加勢に行くぞ」
「んー、まあもちろん気張って戦うニけど…そこまでアクアスの加勢は必要ないと思うニよ…? だってカカを除いたニキ達の中だと、一番怒ってるの多分アクアスだからニ…」
<〔Persp
“バァン! ──バァン!”
「あぎゅっ…?!」
「うあっ…?!」
よし…あの2人にも利き腕に撃ち込めた、これで戦力は大幅ダウン。次は脚を狙って機動力を削ぎ、どんどん戦況を
敵がこちらを狙いやすくならないよう常に動きながら、状況に適した弾を可能な限り高速で装填し、どんどん攻撃し続ける。
無駄撃ちで弾を浪費しないよう、狙いを腕・肩・脚に絞って引き金を引く。意識すべきことが多いですが…泣き言を零す暇はありません。
「考え無しに攻めるなオマエ達…! いくら素早い
周囲の方達に指示を出すあのミンク女…恐らくあの方が幹部。カカ様の為にも…
先程から采配ばかりで一向に前線へ出て来ませんが…このままこちらだけ消耗させられるのはいただけませんね…。
こちらも少し乱暴に立ち回るとしましょう…。カカ様からの〝実弾許可〟がいただけたからこその立ち回りを見せてあげましょう…!
まずはこれまで通り眼前の相手の脚に
戦闘員方は幹部の指示に従い、近接武器を持つ方達が強引に攻めてくる。
「〝
「「「 うわああああっ…?!! 」」」
剣を振り上げていたシカ女に強烈な一撃を見舞いつつ、砂地に着弾した
もちろん
「〝
「チィ…?!」
的確に右肩を狙って撃ち込みましたが…手に付けている
威嚇射撃にはなったでしょうが…こちらも突破策を講じなくては…。
「アーシラ様ご無事で…?!」
「ああ問題ない…。しかしどうなっている…、奴は実弾を使わないのではないのか…?! サリもトーキー様のところのエノーも…ゴム弾しか使わなかったと報告していたのに…」
賊な方々には思いもしないでしょう…自分達の行いが原因でこうなってるなどとは…。これはカカ様を怒らせた罰…そしてカカ様を傷付けた罪によるもの。
一切の慈悲を捨てて、
「全員覚悟することです…! 自分達が犯した大罪…その体に銃痕として一生刻み込んでさしあげます…!」
──第76話