「邪魔する奴等は全員食い殺す…! それがフロン様の教えだ…! 存分に後悔しながら死ぬがいい…!!」
「 “グルルラァシャァァァァ!!!” 」
< 動物 〝
こんな所で足止めを食っている場合ではないのに…相手は
せめてあの
「んっ…? あっ…! サリさんサリさん…! コイツ等じゃないッスか…?! トーキー様を倒したっていう〝
「何…!? ──確かに…天色髪のメイドに小柄な紫頭巾…、報告と一致しているな…。まさかこんな所にも現れるとは…」
4人の
ニキ様はバレてても特に支障はなさそうですが…
「…っ? もう1人…宍色髪のメスはどこへ行った…?! オマエ達
マズい…ここでカカ様が単独行動をしていると知られれば…、カカ様のもとに刺客を送られてかねません…。
カカ様ならば…この程度の連中に後れを取るとは思えませんが…、
「ウラン…! オマエは一度拠点に戻って、この事をフロン様に伝えろ…!」
「了解ッス…! “ピィー!” 」
1人が笛を吹くと、ネコの
「行かせません…!」
「そうはいくかっ…! “ピィィィ!!” 」
すぐに
ぶすりと小さな穴は空いたものの…大したダメージはなく、貫通にも至っていない様子…。やはり通常弾では何発撃とうが意味は薄いようですね…。
「早速仕掛けてきたか…随分血の気が多いな
「誰が賊ニ…! 賊はオマエ等だけニ…!」
「よく分かんねェが…初めましてじゃないみたいだな…。今はとりあえずアイツ等と敵対するが…後で色々説明してもらうからな…」
変な疑いをかけられてしまいましたが…仲間割れ展開にはならなそうで良かったです…。さっさと邪魔な方々を片付けて…しっかり弁明しなくては…。
相手は1人居なくなって残り3人…。〝フェネック〟に〝ラクーン〟…それから〝リス〟でしょうか…? それぞれの能力をなるべく迅速に把握したいところです。
「こっちも仕掛けるぞ…!
「「 了解っ!! 」」
3人は同時に笛を小さく吹くと、それに反応して
様子見でバックステップをしながら
思わぬ跳躍…瞬間的に射線から外れる動きをされてしまい…、ほんの僅かに体が硬直してしまった…。ここから回避が間に合うかどうか怪しい…。
「そうはいかない返しニ…!」
「 “グギャ…!?” 」
危うく頭部を嚙み付かれる寸前…目と鼻の先でビタリッと
「隙ありー! その首もらったァ!」
「そうは──いかないニよ…!〝リザードハンマー〟…!!」
背後からニキ様を狙う賊に、ニキ様は掴んだままの
勢いよくぶっ飛んだ2人と2匹…あれならばすぐには態勢を整えられない筈、であれば実力の判らないベジル様の援護を…──
「〝
「 うわァ…?! 」
「 “ギャギャッ…?!” 」
むむ…凄くお強いですね…。あの大剣をあんなにも軽々と振って…結構な重量はあるであろう
ニキ様程とは言わずとも…ベジル様も中々に怪力持ちでいらっしゃいます…。いつも通りサポートメインの立ち回りでよさそうですね…。
「クソッ…、やはり只者じゃないな…簡単には殺せないか…。だが戦法は判った…! ミレルとイナナは紫を
「オイオイ…俺はスルーか…? 悪ィがただ黙って観戦するなんて…──」
「 “ピィ! ピィィィィ!!” 」
「そういうことね…」
事態を察したベジル様は何も言わずに、駆け足でオアシスの外へと向かった。そしてそれを追いかけるように、
ニキ様も戦いやすいようにか、
あの
ラクーンとリスの
「フロン様の石版集め…そしてバルバドス様の大いなる野望の為…! 邪魔をする貴様をここで殺す…!! 悪く思うなよ
< サイアック獣賊団〝フロン隊メンバー〟S
槍を真っ直ぐ構えたまま、フェネックは
さっきのように突然飛び掛かってきても今度は撃てます…! それ以外の動きをしようとも、〝軌跡〟から行動を先読みして攻撃してみせます…!
「食らうがいい…私の全力の突き…!! ──っと見せかけて… “カッ…!” 」
「わっ…!? なんです…!? 眩しい…?!」
フェネックは突然ガパッと口を開けたかと思えば、目が眩む程の強烈な閃光が放たれ…目の前を真っ白に染めた…。
とても目を開けてはいられず…顔をそむけて目を閉じた。間もなく瞼の裏から光を感じなくなったものの…敵から目を離してしまった…。
さっきまでの互いの立ち位置と、フェネックの移動速度を鑑みれば…すぐそこまで接近されていてもおかしくない…。目を開け次第…すぐに回避行動に移らねば…。
ですがそこにフェネックの姿はなかった…、まるで煙のように消えてしまったかのよう…。
「〝
「う…ふんっ…!!」
くるっと体の向きを半回転させた
直後繰り出された強烈な突き…。直撃していたら大怪我は免れない威力ですが…間一髪防ぐことができた…。
突きを防がれたフェネックは、その表情に一瞬動揺を浮かべ…すぐに後ろへ跳んで距離を取った。恐るべき跳躍力ですが…判断を誤りましたね…!
再び
「ガアアアアッ…!! クソッ…おのれェ…! 貴様…何故私が背後に居ると分かった…?! 左右を見向きもしなかっただろう…?!」
「それは…えーっとその…──貴方のような小悪党がやりそうなことだなと思っただけです…!
本当は移動の〝軌跡〟を見たからなのですけど…。
一切音を立てずに物凄いジャンプをしますね…、本当に知性を持った野生動物を相手にしている気分です…。
「さあ観念してください…! そうすればこれ以上痛い目に遭わず済みますよ…!」
「クソッ…クソッ…」
ダメもとで言ってみましたが…案外聞き入れそうな感じですね…。シヌイ山で遭った方々であれば…すぐにでも首を横に振りそうですが…。
それに…突きを防がれた時も追撃を一切考えない後退でしたし…、もしやあまり実戦経験がないのでは…?
動揺して
「私は…フロン隊の一員…、フロン様の為に…諦めるわけにはいかないのだ…!!」
フェネックは槍を左手に持ち替え、座り込んだまま
「 “カッ…!” 」
「うっ…また…、ですが無駄です…!」
口から放たれた強烈な閃光が再び視界を遮りますが…目くらましの前に槍を投げていては簡単に避けられます。
身を屈めて槍の軌道上から外れると、まだ目は見えませんが、頭上を槍が通り過ぎる音が聞えた。あとは冷静に視界の回復を待ってから目を開けた。
脅威程ではありませんが…中々厄介ですねこの閃光…。〝
懐かしいですね…ドーヴァの王都周辺に群れが出現した時に、カカ様と一緒に戦ったんでしたっけ。お鍋が美味しかった記憶があります。
それにしてもフェネックはやはり追撃をしてこない、悪あがきの槍投げすらも躱され…その表情には微かに絶望を感じる。
「クソッ…こうなったら…、 “ピィー!” 」
「 “クギャッ…!” 」
笛の音に反応した
右脚を撃たれた
少し罪悪感を感じますが…これはまごうことなき戦い…、
両脚を撃たれたことで
「貴様ァ…! 心がないのかァ…! この…腐れ外道がァ…!!」
そう言っていよいよフェネック自らが距離を詰めてきた。しっかし散々な言われようですね…自分達のことを棚に上げてよく言えたものです…。
フェネックは腰から短剣を手に取り、無我夢中で振り回しだした。訓練を受けたことのない素人の短剣さばき…まるで脅威ではありません。
無駄のない動きで短剣を避けながら、落ち着いてゴム弾を装填。
「〝
「グアアアアッ…?!!」
放たれたゴム弾は腹のど真ん中に命中し、衝撃でフェネックの体は後方へぶっ飛んだ。砂の上を転がり、白目をむいて動かなくなった。
能力は厄介でしたが、やはり大した相手ではありませんでした。もっと実力のある方が相手だったら…結果は逆になっていたかもしれません…。
「采配がちゃんとしていただけに…シンプルな実力不足が残念な結果を生んだ戦いになりましたね…。鍛えていて良かったです…」
ひとまずフェネックは気絶していますし、適当な岩陰に放置しておくとしましょう。あとで拘束して、いずれ憲兵に引き渡しましょう。
それよりも加勢です加勢…! まだニキ様とベジル様が戦っておられますし、無傷で倒せたのでまだまだ元気です…!
ニキ様は2対1で戦っておられますが…その2人もこのフェネックと同等の実力であるなら、ニキ様であれば苦戦はしない筈です。
となれば加勢すべきはベジル様の方…! あの
よしっ、ベジル様に加勢しに行きましょう…! 大丈夫…これはニキ様を信頼してのこと…! ニキ様はあんな連中に遅れをとったりしません…!
信じて待っていますから…! 頑張ってくださいニキ様…!!
<〔Persp
「ニー!〝
「ブベェェ…?!!」
「ニィィ…?!! 熱い熱いニ…!!」
簡単な説明…! ニキは戦闘開始からずっとリュックハンマーで応戦してたけど、うっかり手が滑っちゃってリュックがなくなったニ…!
しかもそのリュックを守るように2匹の
だからこうして拳一つで戦っているけど…物凄い弊害があって大変苦戦してるニ…! なんか知らないけど拳が燃えそうなくらい熱いニ…!
采配がちゃんとし過ぎてて恐ろしいニね…、そんな相手と戦ってるアクアスの方も心配ニ…。
「
「そ…うだね…、めっちゃ痛いけど…我慢してれば…勝てそう…──かな…?」
「ニキ相手に〝我慢〟なんて無駄ニよ…! ぶっ倒れるまで何度でも殴り続けてやるニ…! 殺さないけど…
──第53話 実力不足〈終〉