「どうだ…? まだ先か…?」
「はい、まだずっと先に続いています」
一斉にどこかへと向かった
ただでさえ
しかし…さっきの爆発──とても自然のものとは思えねぇ…。爆発を狩りに用いる生物は何種か存在してるが…、あれは明らかに山を狙った
それも魔物の仕業なのか…? それとも…〝人為的〟な爆発…? だとしたら何の為に…? そもそも誰がそんなことを…?
考えれば考えるほど増えていく疑問の数々…、爆発があの一回きりで終わったのがまた謎だ…。
はぁ…私は一体何が気になっているんだろう…。 巣への入り口か…? 魔物の動向か…? 爆発の詳細…? ニキの素顔…?
なんだか考え過ぎて頭が痛くなってきた…、
「カカ様…! あちらを…!」
「うん…? おおっ…!? あれが…そうなのか…?」
目に飛び込んだきたのは、弧を描くように反り返った崖。その下にぽっかりと穴が開いており、おそらくあれが入り口…なんだろうねきっと…。
まだ残ってたのは理運だったが…、あそこまでどう行きゃいいんだ…? 岩肌の感じからして登れなくはないが…、まあまあ高いぞ…?
誤って落下すれば…軽傷じゃ済まないほどには高い…。文字通り…高い壁にぶち当たったわけだ…。
「さて…どうしたもんかな…。上から吊られる感じで侵入するか?」
「ニッキッキッ…! ニキに言い考えがあるニ…!」
怪しい笑いを浮かべるニキ…、こういう時…大体ニキは力技で強引に突破するんだよなぁ…。今回は何をするのやら…。
▼ ▽ ▼ ▽ ▼
「──よっ…しょっと…! ふぅ、大丈夫そうゴロー!」
「分かったニ! じゃあメラニも送るニよっ! せーの…〝ゴロ投擲〟!!」
「わああああああっ…!!」
何をするのかと思えば…力いっぱいゴロ’sをぶん投げた…。ルークに長いロープを持たせてたから、この先の展開は大体分かるが…なんて強引な…。
メラニが無事に着地すると、ルークは体にロープをぐるぐると巻き、余った部分を下に垂らした。メラニはルークの上に乗っかって重石役。
先行きたい奴と聞くと、予想通り真っ先にニキが手を上げたので、快く先に行ってもらう。さて…リュック込みの重さに耐えられるかどうか…。
ずるずると引きずられてゴロ’s諸共落下するニキの姿が浮かんだが…意外と順調に上っているようで安心した。
この感じなら全員問題なく上れそ “ブチッ!” うとか思ってたのになぁ…。
明らかにロープが切れたような音が聞こえ…間もなくしてニキが勢いよく落下してきた。幸いリュックが衝撃を和らげたみたいだが…落下した原因でもありそう…。
「大丈夫かニキ…? ったく…やっぱ重すぎんだよこのリュック…」
「ニ~…、変ニね…途中まで全然問題なかったのニ…」
ややしょんぼりしているニキを眺めながら…千切れたロープを手繰り寄せて腕に巻いていく。またニキに投げさせるとして、これ長さ足りるかな…?
「…っ? カカ様…そこなんだか変ではありませんか…?」
「んあっ? どこ? ──これは…?!」
それはロープの切れ端、リュックの重さで切れた…っと思っていた部分。重みで切れた箇所は普通、千切れたような断面になる。
だがこれは…まるで〝切られた〟ような…、切られたような…? あれ…? なんかめっちゃ心当たりあるな…。
「──…ルーク?! メラニ?!」
2人を呼んでみても返答がない…、どんどん顔が青ざめていくのを感じる…。まっ…まさかなのか…!?
「ちょっ誰かー?! あそこまで上がれる誰かー! 今すぐ様子見てきてー! ゴロ’sがヤバいことになってる気がするー!!」
ニキに投げてもらえば誰でも行けるが、力加減ミスって激突でもしたらシャレにならないので…自力で跳んでいけるナップに行ってもらった。
ググッと屈んで力いっぱいジャンプしたナップは、綺麗に穴の中へと着地。穴の中を少し見つめて、すぐに私達の方に顔を向けた。
「2人共居なーい! 多分
やっぱりかー…! 声も上げずにぐるぐる巻きにされるとは…恐ろしいな最近の若者は…。 ※多分関係ありません。
まあ…なってしまったものは仕方ない…、石版の前にゴロ’sを回収しよう…。アクアスの
ナップにロープを投げ渡し、今度は杭を打ってもらってそこにロープを縛り付けさせた。外れる心配はあるが…もうこれしかない…。
ナップに一度降りるよう指示し、まず私が上ることにした。本っっ当に嫌だが…また誰かが攫われてしまうのは避けたい。最悪私なら事前に逃げられるし。
なんとか上り終え、恐怖を堪えながら全員が上ってくるのをジッと待つ…。頼むから来ないでくれ…せめて誰かが上がって来たらにしてくれ…。
そう心の中で強く願ったおかげか、全員が上り終えた後も
「よ…よし…! じゃあ行くぞ…! ニキ発進…!」
「結局先頭はニキなのニね…まあいいけどニ…」
ひとまず道は真っ直ぐ伸びているので、周囲を警戒しながら奥へと進んで行く。このまま変に枝分かれせずに真っ直ぐなら嬉しいが…。
そう心の中で強く願ったにも拘らず…がっつり分かれ道にぶつかった…。右の道は上に続いており、反対に左の道は下に続いていた。
「アクアスどっちだ…? ゴロ’sはどっちに運ばれてる…?」
「そう…ですね…、
アクアスの
爆発が原因で外に出ていた
「オッケー、じゃあ左の道を進むぞ。全員改めて心の準備を済ませておけよ…! いつでも私を守れるように…!」
「「 戦えニ…
戦ってよ… 」」
あれからどんどん先へと進み、何度も分かれ道とぶつかった。その度にアクアスは頭を悩ませ…私は肩をぽんぽんと叩いてやった。
道中何度か採餌兵と思しき
そして私達は謎の広い空間へと辿り着いた。切断されたであろう血生臭い糸玉が、雑に地面に置かれており、上から糸で吊られているものもある。
「ルークとメラニもここに連れてこられたのかな…?」
「ここで間違い筈ですが…もっと先の方に連れていかれているようです…」
足元に転がる糸玉を避けながら、ゴロ’sが無事と信じて奥へと進んで行く。徐々に血の臭いが濃くなっていき…全員が顔をしかめた。
それでも歩を止めずにいると、突如目の前に白い壁が現れた。ニキが松明で上の方を照らすと、それは山のように積まれた糸玉だった。
血の臭いとは違う腐臭が漂い…思わず私も鼻を塞いだ…。
「んっ…?! んんーーー! んーーー!」
「んんんんーーーー!!」
松明の灯りに気付いてか、ゴロ’s達が声を上げ始めた。どこから声がするのかを必死に探ると、私の足元付近に動く糸玉を見つけた。
血の様な染みが見えないので、ひとまず怪我はしてないようだが…あんまり大声出してほしくはない…!
「ちょっゴロ’s静かに…! 今助けてあげるから…! あんま声出すと
“──キーン…!!”
「ほらァ…!!」
私は
今までの
思ったよりも攻撃が重い…、他の
反対の脚で追撃されるのも面倒なので、先に胴体に蹴りを入れて距離を取った。足から伝わる
「申し訳ありませんカカ様…! お怪我はありませんか…?!」
「鳥肌すごい鳥肌すごい鳥肌すごい鳥肌すごい…」
「無事みたいニね」
脳がビリビリするくらいに鳥肌が立っている…。ヤッバい泣きそうだ…その気になればがっつり泣けるわ今…。
アクアスの後ろに隠れながら、
しかも4匹共戦う気満々…。どうやらここは行き止まりだし、引き返す道は
先に仕掛けるべきか…カウンター狙いでジッと構えるべきか…──
「先手必勝の理! ガンガン攻めるニ~!」
「オイっバカ…?! 1人で突っ走るな…!」
ナップに松明を託して1人前に出たニキに、当然
左右斜め上から首を狙った攻撃…だがニキはその前脚をあろうことか手で受け止めた。咄嗟とは言え…んな無茶な…。
「ニキ様…?!」
「ニッキッキッ! 大丈夫ニよ! 刃物と一緒…圧しただけじゃ切れないニ!」
そう言ったニキは、そのまま
粉塵が晴れると、グチャッ…と地面で潰れる
「…にしたってオマエ…、本当どんな怪力してりゃこんな芸当…──ってどうした…!? オマエそれ…?!」
「ニヘヘッ…ちょっと油断しちゃったニ…」
ギュッと押さえているニキの左腕からは…ぽたぽたと血が滴り落ちていた。傷口から見えるに…明らか
さっきの粉塵で視界は塞がれた一瞬に…攻撃を仕掛けられてしまったのだろう…。ニキが傷付くなんて…あの前脚の切れ味は相当だな…。
「ここは
「この程度なんてことないニ…! …ニ? カカどうしたニ…?」
「いやぁ…オマエにもちゃんと血が通ってるんだなぁって…」
「物だと思ってたニ?」
不思議とニキに対しての親近感が強まったところで、改めて
さっきより激しく前脚を動かして臨戦態勢、所かまわず前脚ブンブン振り回されたら…それはそれで厄介だ…。
「ナップ! オマエは今のうちにゴロ’sを救出しろっ!」
「オッケー! 数でゴリ押し作戦だな!」
ナップはああ解釈したが…実際は私が隠れられる盾が欲しいだけ…。でも言わない…年上の威厳…大事…。
ナップがゴロ’sを救出するまでの間…そこだけは私も頑張ろう…! アクアスの後ろから全力でサポートしよう…!
“──キーン…!!”
「 “キシャーーー!!” 」
再び予備動作のない跳びかかりを仕掛けてきたが、〝音〟で攻撃を察知していた私は、ロングスカートを引っ張って事前にアクアスに知らせた。
意図をすぐに理解し構えていたアクアスは、前脚を振り下ろしてくるより速く引き金を引いたが…
それを見た私は瞬時に
直後アクアスの顔の前を横切った鋭い前脚…、危うくアクアスの顔が裂けてしまうところだった…。
私は着地した隙を見逃さず、上から
少し目眩がした程度のダメージしか与えられていない印象だったが、そこに容赦なくアクアスが弾丸を撃ち込んで止めを刺した。
力、速さ、そして発達した前脚は脅威だが、肉体強度は対して変わっていないようだ。これなら冷静に対処していけばなんてことない敵だ、アクアス達にとっては。
“ガキンッ! ガキンッガキンッ!!”
右の方から…聞きなれない刃物同士がぶつかり合う様な音が聞こえる…。目を向けると…火花を散らしながら
ニキの両手には見慣れない武器が2つ…、いや正確には見たことあるのだが…どうみてもあの
素早い動きで猛攻を仕掛ける
だが徐々に斬りかかっている
「ニッハッハッ! ニキがちょ~っと本気を出せば敵なしニ!」
「オマエそれ…さっき叩き潰した
だがこれで残るは1匹のみ、あとは2人に任せて私はナップの手伝いに行こう。3人で共闘するのも意外と難しいしね、邪魔にならない為にね。
私は糸山の方に駆けていくと、既にナップの手によって救出されたゴロ’sの姿があった。まるで子供の様に泣いてしまっている。
「ガガー…!
「
「おーよしよし、ごめんなニキの強引な作戦のせいで怖い思いさせて」
泣きついてきた2人をなだめ、4人でアクアス達の方へ戻ると、またニキがバチバチに斬り合っている。アイツちょっと楽しんでるだろ…。
“ガキンッガキンッ! バキーンッ!!”
「ニ…!?」
あっ…今度はニキの方が砕けた…。完全無防備になったニキに
冷や汗を拭くニキと、その様子を見てクスクスと笑うアクアス。あの様子からして…やっぱり楽しんでやがったなニキの奴め…。
だがこれで邪魔な
──第24話 群盗蜘の