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85話:振り返って語り合う

 『癒しの森』の中には、いくつかベンチがある。設置したのは『癒しの森』自身らしい。

 大きなスズランの形をしたライトにほんのり照らされ、ベンチにはロッティとアデリナが並んで座っていた。


「さっきは話がまとまらないと思ったから黙っていたけど…、殺されて良い人間なんていないわよ」


 咎めるように見てくるロッティに、アデリナは気にした風もなく笑う。


「まあ、それは部外者、被害に遭わなかった人の意見よ。でも、実際ダーシーのように痛めつけられすぎてきた人たちから見れば、庇われるのはおかしく感じるでしょ」

「そんなこと言ってたら、殺戮だらけになっちゃうじゃない…」

「いいんじゃない?自分で尻拭い出来て、責任が取れるなら」

「…取れないわよ。役人に掴まって、せいぜい正当化を訴え喚くのが目に浮かぶわ」


 呆れたようにロッティはため息をつき、アデリナは苦笑した。


「そうね。自分じゃ責任が取れないくせに、いけしゃあしゃあと正義感気取り。人間ってホント救えないわ。でもそんなところが、面白くて好きなんだけどね」

「相変わらず、アデリナの愛情表現って歪んでる気が…」

「アタシはこれでイイのっ。真面目なロッティがいるから、安心してマイペースでいられるんだもん」


 フフッと笑って、アデリナはロッティの肩に寄りかかる。


「『魔女の呪い』を食らって、500年も過ぎちゃったのね…」


 ぼそっとアデリナは呟いた。


「ありがとね、ロッティ。随分無茶させちゃったみたいで、ホントごめんね」

「友達でしょ、私たち。それに今回のことで、新しく家族が増えた。レオンとフィンリー。フィンリーなんて弟子契約までしちゃったし」

「ふふふーん。ちゃっかりカレシまで作っちゃってぇ。さあ、洗いざらい全部白状しちゃいなさい!レオンとどう知り合ったのか、ドコまでススんでるの~?」

「スっ」


 ロッティは耳まで顔中真っ赤になり、ワタワタ慌てふためいた。


「い、今はまだそんな、フツーよ、フ・ツ・ウ!

 まあ、今の人生で16歳になったら、あんなコトやこんなコト…」

「ほうほう。キスしたり、アレやコレやするのね♪」

「キャー言わないで―!」

「あはははは」


 ロッティは両手で真っ赤な顔を塞ぎ、アデリナは心底楽しそうに大笑いしていた。



* * *



 暗い室内でベッドに寝そべりながら、メイブは誘拐されて救出されるまでを振り返っていた。


(わたくしめは使い魔なのに、何一つ役に立っておらず、むしろ大迷惑をかけていたのです…)


 意図せず、ため息ばかりが嘴をつく。頭上の双葉が元気もなく萎れ気味だ。


(ダーシーしゃんの心の傷を癒してあげることも出来ず、リリー・キャボットに利用されて、世界中にもご迷惑を。

 情けないのです。ああ…情けないのです!)


 翼でポスポス掛布団を叩く。


 コンコン


「ぴよ?」


 ドアが静かに開けられ、ダーシーが顔を覗かせた。


「メイブ、一緒に寝てもイイ?」

「ぴよぴよ」

訳:[どうぞなのです]


 枕一つを抱えて、ダーシーは静かに入ってきた。


「ぴよぴよ」

訳:[お布団がナイのですよ]

「大丈夫、硬い床でも寝られるから。ここはあったかいもん」

「ぴよぴよ!」

訳:[それはダメなのです!]


 メイブは跳ね起きて、部屋を飛び出していった。そしてダーシーが使っていた客用ベッドを運んで戻ってきた。


「…メイブ力持ちだね」

「ぴよ!」

訳:[エッヘン!]


 メイブの部屋はティーテーブルしか置いていない。ベッドはテーブルの傍に置かれ、2人はベッドに入った。


「ぴよぴよ?」

訳:[眠れませんか?]

「うん。なんか、こうしてるのが、不思議な感じ。

 ねえメイブ、アデリナって優しいの?」

「ぴよ!ぴよぴよぴよ」

訳:[もちろん!だってご主人様の親友ですもの]

「そっかあ」


 ダーシーは天井を見上げながら、アデリナの顔を思い浮かべた。


「ぴよぴよぴよ!」

訳:[リリーのような偽善者じゃありません!]

「……私は、リリーのこと、嫌いじゃない。利用されて伯爵様たちを殺したことは、別に後悔してない。理由はどうあれ、私を伯爵家あそこから助け出してくれたの、リリーだもん」

「ぴよ…」

訳:[ダーシーしゃん…]


 淡々とした表情かおをするダーシーを見つめ、メイブは複雑な気持ちになった。


(立場が変われば、見る目も変わる。ダーシーしゃんにとっては、恩人に近い存在になってしまうのでしょう。わたくしめからすれば、許しがたい存在なのですが。

 実際、リリーはダーシしゃんに危害は加えませんでした。

 ――もう、終わったことなのです。今更アレコレ穿ほじくり返して言ったところで、ダーシーしゃんの心に無用なシコリを残すことになってしまいます。

 お口チャックなのです)


「アデリナとうまく暮らしていけるかな、私」

「ぴよ。ぴよぴよ、ぴよぴよお」

訳:[大丈夫ですよ。アデリナ様はダーシーしゃんの、新しい良き家族になってくださいます]


 メイブはダーシーに、にっこりと微笑んだ。

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