『癒しの森』の中には、いくつかベンチがある。設置したのは『癒しの森』自身らしい。
大きなスズランの形をしたライトにほんのり照らされ、ベンチにはロッティとアデリナが並んで座っていた。
「さっきは話がまとまらないと思ったから黙っていたけど…、殺されて良い人間なんていないわよ」
咎めるように見てくるロッティに、アデリナは気にした風もなく笑う。
「まあ、それは部外者、被害に遭わなかった人の意見よ。でも、実際ダーシーのように痛めつけられすぎてきた人たちから見れば、庇われるのはおかしく感じるでしょ」
「そんなこと言ってたら、殺戮だらけになっちゃうじゃない…」
「いいんじゃない?自分で尻拭い出来て、責任が取れるなら」
「…取れないわよ。役人に掴まって、せいぜい正当化を訴え喚くのが目に浮かぶわ」
呆れたようにロッティはため息をつき、アデリナは苦笑した。
「そうね。自分じゃ責任が取れないくせに、いけしゃあしゃあと正義感気取り。人間ってホント救えないわ。でもそんなところが、面白くて好きなんだけどね」
「相変わらず、アデリナの愛情表現って歪んでる気が…」
「アタシはこれでイイのっ。真面目なロッティがいるから、安心してマイペースでいられるんだもん」
フフッと笑って、アデリナはロッティの肩に寄りかかる。
「『魔女の呪い』を食らって、500年も過ぎちゃったのね…」
ぼそっとアデリナは呟いた。
「ありがとね、ロッティ。随分無茶させちゃったみたいで、ホントごめんね」
「友達でしょ、私たち。それに今回のことで、新しく家族が増えた。レオンとフィンリー。フィンリーなんて弟子契約までしちゃったし」
「ふふふーん。ちゃっかりカレシまで作っちゃってぇ。さあ、洗いざらい全部白状しちゃいなさい!レオンとどう知り合ったのか、ドコまでススんでるの~?」
「スっ」
ロッティは耳まで顔中真っ赤になり、ワタワタ慌てふためいた。
「い、今はまだそんな、フツーよ、フ・ツ・ウ!
まあ、今の人生で16歳になったら、あんなコトやこんなコト…」
「ほうほう。キスしたり、アレやコレやするのね♪」
「キャー言わないで―!」
「あはははは」
ロッティは両手で真っ赤な顔を塞ぎ、アデリナは心底楽しそうに大笑いしていた。
* * *
暗い室内でベッドに寝そべりながら、メイブは誘拐されて救出されるまでを振り返っていた。
(わたくしめは使い魔なのに、何一つ役に立っておらず、むしろ大迷惑をかけていたのです…)
意図せず、ため息ばかりが嘴をつく。頭上の双葉が元気もなく萎れ気味だ。
(ダーシーしゃんの心の傷を癒してあげることも出来ず、リリー・キャボットに利用されて、世界中にもご迷惑を。
情けないのです。ああ…情けないのです!)
翼でポスポス掛布団を叩く。
コンコン
「ぴよ?」
ドアが静かに開けられ、ダーシーが顔を覗かせた。
「メイブ、一緒に寝てもイイ?」
「ぴよぴよ」
訳:[どうぞなのです]
枕一つを抱えて、ダーシーは静かに入ってきた。
「ぴよぴよ」
訳:[お布団がナイのですよ]
「大丈夫、硬い床でも寝られるから。ここはあったかいもん」
「ぴよぴよ!」
訳:[それはダメなのです!]
メイブは跳ね起きて、部屋を飛び出していった。そしてダーシーが使っていた客用ベッドを運んで戻ってきた。
「…メイブ力持ちだね」
「ぴよ!」
訳:[エッヘン!]
メイブの部屋はティーテーブルしか置いていない。ベッドはテーブルの傍に置かれ、2人はベッドに入った。
「ぴよぴよ?」
訳:[眠れませんか?]
「うん。なんか、こうしてるのが、不思議な感じ。
ねえメイブ、アデリナって優しいの?」
「ぴよ!ぴよぴよぴよ」
訳:[もちろん!だってご主人様の親友ですもの]
「そっかあ」
ダーシーは天井を見上げながら、アデリナの顔を思い浮かべた。
「ぴよぴよぴよ!」
訳:[リリーのような偽善者じゃありません!]
「……私は、リリーのこと、嫌いじゃない。利用されて伯爵様たちを殺したことは、別に後悔してない。理由はどうあれ、私を
「ぴよ…」
訳:[ダーシーしゃん…]
淡々とした
(立場が変われば、見る目も変わる。ダーシーしゃんにとっては、恩人に近い存在になってしまうのでしょう。わたくしめからすれば、許しがたい存在なのですが。
実際、リリーはダーシしゃんに危害は加えませんでした。
――もう、終わったことなのです。今更アレコレ
お口チャックなのです)
「アデリナとうまく暮らしていけるかな、私」
「ぴよ。ぴよぴよ、ぴよぴよお」
訳:[大丈夫ですよ。アデリナ様はダーシーしゃんの、新しい良き家族になってくださいます]
メイブはダーシーに、にっこりと微笑んだ。