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第27話 お仕置き作戦タイム

事件当日の朝食時。


私はレオン君とお話しがあるから、と言ってアルト君とユノス君に同席を遠慮してもらった。なにせ未来の話をするのだから、聞かせるわけにはいかないわよね。


「植木鉢の件、ただの姉へのいたずらにしては度が過ぎるわ。確実に私を傷つける目的だったでしょうね。レオン君じゃなければ死んでたかもしれないわ」


「だよね。君に当たらなくてよかった……」

しみじみと言うレオン君。

こんなとき、どんな顔をすればいいか分からないわ。


「もし私が死んでいたら、それでもリセットボタンは有効だったかしら?」

「あっ! そうだよ、なんで今まで気づかなかったんだろう」

「私もよ。うかつだったわ。神に確認するまでは死ねないわね」

「大丈夫、僕が絶対護るから」

「お願いね」


自分で言っていてなんだけど、心苦しいったらないわ。

たまには私が彼の役を代わってあげたい。

……って、今回は私の暗殺(?)だったわね。


「私が狙われているこの状況、クラリッサの狙いはいくつか考えられるわ。

1つは、クラリッサのターゲットが第三王子レオンである場合。

ヴィクトリアを傷者にしたあと婚約者の首を妹のミーアとすり替える」


「まさか……、前回の落馬、そして今回の植木鉢で、君が狙われるのは二度目?」

「その可能性はあるわね」

「くそッ」


「そして、頭が悪くて人脈もなく潰しやすいミーアを罠にかけて、姉も妹も王子の妃にふさわしくない状況を作り、ベルフォート家からの輿入れを失敗させる。

伯爵令嬢フローラを利用して自分を新たな婚約者としてゴリ押ししてもらえば、自分の手を一切汚さずにまんまと第三王子の婚約者のイスを手に入れられる」


「あまりにもゲスくて眩暈がしそうだよ……」

「まあ、そういうゲームですし」


とはいえ自分で言っててイヤになるけども。


「それ以上ムリをしなければ、王家の一員として、まあまあリッチな生活は送れるでしょうね。それで彼女が満足するのなら」


「はあ……」

レオン君が額に手を当ててため息をついた。


「そして別のプランがあるとすれば、そもそもクラリッサのターゲットは第三王子じゃなく、君を操るとメリットがある人物……たとえば第二王子とか」


「DQNの第二王子に婚約者がいなければ、落とすのはそう難しくなさそうだね。だけど、どうやって第三王子を操り人形にするんだい?」


「そこよ。クラリッサたちは、我々がNPCではないことを知らない。シナリオどおり、ミーアを介して第三王子を意のままに操れると。プレイヤーの立場なら、自我を持つのは自分だけなのだから、NPCを操ることなんて造作もないと思うはずだし」


「なるほど。でも、向こうも転生者だったら?」


「その可能性は極めて低いわね。だって、自分と同じ転生者だとしたら、さっさと協力を申し出るか、さもなくば――」


「さもなくば?」


「真っ先に殺すわ」


「うっ……」

あらら、レオン君が真っ青な顔になっちゃった。

敵が転生者なら、これほど危険な存在はないのだけど。


「大丈夫よ。こんな回りくどい事をしてる時点で、彼女はこのデスゲームの駒でしかないわ。そして他のキャラクターに裏を描かれることを想像してもいない。彼女はね、プレイヤーキャラクターという役を演じているNPCなのよ」


「そっか、よかった」

レオン君が少しほっとした顔になったわ。


「つまりクラリッサはね、狡猾そうなフリをしてるAIのようなもの。それこそが、私たちが付け入る隙であり、生き残るために穿つ蟻の一穴なのよ」


「僕らが穿つ穴……か」

レオン君が段々いい顔、いや最初から顔はいいけどそういう意味じゃなくて。

いい面構えって意味のいい顔になってきたわ。


「それにしても、落馬イベントなんてあったかしら。まああったから実家で寝てたんでしょうけども、一生懸命思い出そうとしてるんだけど思い出せないわ」


「サブキャラのイベントだから記憶にない、とか?」

「……あ。そういえば!」

「思い出せた?」


「いつのまにか令嬢ヴィクトリアが消えて、彼女の妹が第三王子の婚約者になったことが一度だけあったわ。

どうでもよかったから理由は覚えてないけど、何かのフラグで令嬢が退場して……妹に交代するという……。

このイベント、意味あんのかな? 謎すぎるって思ってたけど。そうか。これがアレだったのね。

となると、やはり落馬もクラリッサに操られたミーアの仕業……」


「ひどい話だけど、中学生の女の子が一人でそんなこと出来るのかな?」

「あの二人が協力していたのだとしたら、不可能ではないでしょう」

「確かに」

「あのね、レオン君。私と貴方が出会ったのは、正に落馬事故のタイミングなのよ」

「まあ、そうだったよね」

「あの時、じつはヴィクトリアは死んでいた。――そして私が入れ替わった」

「な、なるほど!!」


「いや、これはあくまでも、あくまでも仮定の話よ。

でも、ヴィクトリアがあのまま死んでいたら、ミーアはまんまと第三王子と婚約していたのかもしれないわね。となれば、ミーアをお妃レースから排除するわ」


「排除!? どうやって?」


「まずはあの子を学園から追放すれば、最初の憂いは消える。

植木鉢事件や落馬事故の証拠を掴んで、あなたからパパに報告してもらう。

娘の言い分よりもずっと信ぴょう性があるからパパも信用するでしょう。

まあ、会ったことないんだけどね」


「あはは、まあ僕もだけど」


「あの子を家に缶詰めにしておけば、クラリッサと連絡を取り合う手段もなくなる。そうすれば、ほとんどの悪さは出来なくなるわ。でしょ?」


「たしかに!」

「まったく……。プレイしてない部分を出すのやめて欲しいわね」

「というか、そういうルート設定を神がしたってことかな……」

「ムダに難易度上げてくれるわよね。ムカつく!」

「一緒にこのデスゲーム、クリアしてやりましょう! 遥香さん!」


「ええ! 落馬事故の証拠を掴んで、お妃レースから妹を排除するわ。そうと決まれば、あしたは家に帰るわよ!」


「やってやりましょう!」


レオン君が元気になってきたわ。やっぱり盛り上げるって大事ね!

そして私は不敵な笑みを浮かべた。ふふふのふ~。


「まずは今日の犯行を止める。そして実家に戻って落馬事故が事件である証拠を掴む。この段取りで行きましょう」


「了解!」

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