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異世界探偵~悪役令嬢は転生王子とデスゲームを生き残り、神を人気配信者にします~
東雲飛鶴
異世界恋愛悪役令嬢
2024年08月30日
公開日
115,833文字
連載中
■腹黒ヒロインに勝利して乙女ゲーの皮を被ったデスゲームを王子と生き残れ!■
【更新:月・水・金】

事故死した元OLの私を、悪役令嬢として乙女ゲーム世界に
送り込んだ娯楽の神様は、神界の配信者だった!

この世界は、娯楽の神のチャンネルで神界にLIVE配信されている。
スパチャが飛べば神アイテムでテコ入れが!!

さらに神は、手違いで婚約者の王子様役まで転生者を送り込んでしまった。
彼は元大学生のゲーマーで、ファンタジーMMOの世界で無双する予定だったから大変!
勝手の分からない乙女ゲームの世界で困惑しきり……。

ゲームのストーリー上、王子様は王室の抗争に巻き込まれて
つねに暗殺の危機に。私は腹黒ヒロインの計略による処刑が待っている。
このままでは、どちらも地獄行き!!

こうなったら協力して、神アイテムの【セーブボタン】と
王子様のギフト【超回復】を駆使し、
見えない敵を炙り出して全ての障害を排除するしかない!!

で、王子様とのロマンス……?
それどころじゃないわよ! こっちは命かかってるんだから!
え? 視聴者さんが期待してるって? 無責任な!

とはいえ乙女ゲームの攻略対象だから、
もちろんイケメンなんだけど……。

は、果たして、戦友は恋愛対象になるのでしょうか?!
※大丈夫です!(作者・談)

【更新:月・水・金】ぜひブックマークを!

プロローグ

※原稿モード・横書き表示を推奨しています。 



 ===================== 



 「犯人は貴方よ!」


 女子生徒のヴィクトリアは、王立高等学院の廊下で若い男性教師を指差しながら、声高に告げた。重厚な石造りの校舎は、彼女の澄んだ声を響かせる。



 夕刻のため、ほとんどの生徒は下校しており、ヴィクトリアと教師の二人だけが長い影を石床に落としていた。



 彼女の腰まで伸びた長いつややかな黒髪はゆるやかなウエーブを描き、令嬢が身に付けるには質素なデザインの学院制服を、いくばくか優雅に見せている。



「何の話だ、気分が悪い。失礼させてもらう」

 やや緊張した面持ちの教師は、ヴィクトリアの言葉に臆せず答えた。



 ローブを翻して立ち去ろうとする教師の腕を、柱の影から現れた男子生徒のレオンが掴む。その拍子に小さな薬瓶が教師のローブのポケットから転げ落ちた。



 しまった、と慌てる教師を拘束するレオン。



「な! お、王子……どうして生きてるんだ!」

 真っ青になる教師。



「まあ、普通なら死んじゃってますよね。この瓶の中身、猛毒なんでしょう?」

 金髪碧眼の美男子は、いたずらっぽく教師に尋ねた。



 王国の第三王子であるレオンは、令嬢ヴィクトリアの婚約者であり、王位継承に関わるお家騒動の真っただ中にいて、常日頃から暗殺の危機に見舞われていた。



「レオン王子暗殺未遂の犯人は貴方でしょ」

 ヴィクトリアが問う。



「いや、ち、違う」

 教師はレオンの手を振り払おうとするが、ビクともしない。彼の腕は大人の男でも解けないほどの強さで掴まれている。華奢な見た目とは裏腹に、レオンの力は驚くほど強かった。



 教師が、抵抗は無意味だと悟るに時間は要らなかった。



 レオン王子はニヤリと笑う。



「結構苦しみましたよ。死なない程度には」


「何故――あ、」


「何故でしょう。ふふふ」



 なぞなぞを話す子どものように、レオンは暗殺の実行犯に問いかける。



 確かにあり得ない。

 致死量の毒を飲ませた。ちゃんと飲み干すまで見届けた。

 それなのに。



 教師は目の前の事象が理解できず、混乱していた。



「これ、中身は毒よね?」


「ち、ちがう! ただのポーションだ!」


「そう……。毒じゃないなら飲んでみて。毒じゃないんでしょう?」



 小瓶を拾い上げ、教師の顔に近づけるヴィクトリア。

 二三度、中身の液体を振ってみせると、教師は短く悲鳴を上げて身をよじった。



「や、やめてくれ! 猛毒なんだぞ!」


「フン、やっぱり毒じゃないか」とレオン。


「誰の命令なの?」


「それは……」


「黒幕を教えてくれないなら、貴方も飲んでみる?」

 ヴィクトリアは小瓶の蓋を取った。


「や、やめろ!」

 首を左右に振って抵抗する教師。


「本気で嫌がってるわね。ということは……すごい毒なのね」

 ヴィクトリアが小瓶に鼻を近づけて匂いを嗅ぐと、


「やめなよ、危ないだろ」とレオンが止める。


「あんがい匂いしないのね」


「だから食品に混ぜやすいんだろうさ」



 レオンは先刻まで猛烈な腹痛に襲われ、床を転げまわっていたことを思い出し、ひどく渋い顔になった。

 神からのギフトがなければ回復出来ず、とっくに死んでいる。



 ――これはヴィクトリアだけが知るコトだが。



「ちょっとだけ舐めてみませんか? そうすれば僕の気持ちも少しは理解できると思うんだけど……」


「死ぬ! ちょっとでも死ぬ! 死ぬから無理! 無理無理無理!」

 首をブンブン振って抵抗する教師。

 恐ろしさのあまり、半ベソをかいて鼻水をたらしている。


「先生、そろそろ白状してくれない? 私達忙しいんだけど」


「そうですよ。まだまだ僕らの敵はたくさんいるんだから……ね?」


 ガンギまった二人の目に観念したのか、教師は依頼者の名前を白状した。




「なるほど……それは仲介者ですね。黒幕じゃあない」

 落胆するレオン。


「序盤の雑魚キャラが、そうそう大物と繋がってるなんてないわよ」


「それもそうだね、ヴィクトリア」


「あの……雇い主を教えたんだから、逃がしてくれないか?」


「「は?」」

 レオンとヴィクトリアは、思いっきり教師の足を踏んづけた。



 静まり返った校内に、教師の絶叫が響く。



     ◇◇◇



 叫び声を聞きつけてやってきた警備兵に、教師を引き渡したヴィクトリアはつぶやく。



「まずは一人……」


「そう、だね」



 自分たちの敵の多さと、勝利への道のりに気が遠くなるヴィクトリアとレオンだった。 

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