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#018. フィールドボス・ビッグスライム


 ミルシーダ・ダンジョンの1階平原フィールドで、フィールドボスを目指す人についていく。


 平原の移動先には、15人ほどのプレイヤーが集まっていた。

 その中心には人間よりも大きいビッグスライムの姿がある。


 たまにポヨンと移動して、タックルしたりして攻撃している。

 のし掛かられたプレイヤーは大ダメージを受けているように見える。


 ボスのHPはまだ80%ぐらい残っていた。


「よし、加わるぞ」

「「はい」」


 まだ転職前で装備も変えていないナイフなので、攻撃力は心もとない。

 それで、これでやるしかない。


「てりゃあ」

「うりゃぁ」

「にゃぁ」


 俺たち、それからテイムモンスターたちがビッグスライムの側面から攻撃を仕掛ける。

 デカい的だけに、どこからでも攻撃は当たるけれど、HPが異常に多いらしく、なかなか割合が減って行かない。


 スライムがその場で縦に3回、プルンプルンプルンと揺れた。


「全員離れろ、スライムボンバーくるぞ」

「「「おおっ」」」


 みんながささっと離れていく。

 俺たちもそれを聞いて、なんとか一時退避する。


「スライムボンバー!」


 喋るのかよく分からないが、低い声でそう聞こえた。

 ビッグスライムの周り360度、数メートルにわたって、赤いエフェクトで爆発する。


 ちなみにこのゲームでは攻撃スキルの危険範囲を示す、いわゆる「赤床」は実装されていない。


「よし、いまだ、かかれ」


 リーダーらしい人が号令を掛ける。

 一度スライムボンバーを発動すると、しばらく大人しいようだ。


「アタック」

「「あ、アタック」」

「ダブルアタック」


 おお、ダブルアタックを使っている人がいる。

 確かLv10スキルなので、もうLv10に到達しているらしい。


「チアリング」

「エリアヒール」


 すでに転職している人もいるようで、これらはヒーラーのスキルだ。


「マジックソード」

「ポイズンフォグ」


 マジックソードは魔法剣士、ポイズンフォグはアルケミストの毒攻撃の状態異常だ。

 確かにボスのマーカーの上に状態異常の毒アイコンが表示されている。

 ボスにも効くらしい。


「魔術織姫」


 おお、星と夜空のエフェクトが綺麗だ。

 綺麗なだけでなく、かなりダメージの数字もデカい。


 他人の戦闘はあまり見る機会がなかったが、なるほど参考になる。


 俺たちも攻撃する。

 ビッグスライムのターゲットは他の人に向いているようで、こちらに攻撃は飛んでこない。

 一方的に殴れている。かなりお得だ。

 自分たちだけだったら誰かがビッグスライムの攻撃を受けなければならないので、他の人たちがいてよかった。


「うりゃあ」


 5分、10分と戦闘は続いたが、HPは残り10%。


 スライムが俺のほうを向いたのが分かる。


「げっ」


 ターゲットが移動したらしい、俺は別にこの中では強いほうではないが、ランダムターゲットかもしれない。


 ポヨン。


 スライムから酸弾が飛んできて命中、俺のHPは全損した。

 やっぱり強いわ。


「お、お兄ちゃん!」

「ああ、死んじまったよ」

「今復活の結晶使ってあげる」

「小でいいぞ、まだジャムサンドの効果残ってるから」

「分かった」


 妹が復活の結晶小のビンのふたを取り、中身を俺に振りかける。


 倒れてピクリともしなかった体が再び動くようなった。

 助かる。


 俺は素早く離れてHP回復を待った。

 料理の効果は死んでも継続するらしい。

 よく毒状態などは死ぬと状態異常が解除されるので、別扱いなのかもしれない。

 ジャムサンドは10秒に1回、回復する。


「よし回復した!」


 俺が全快になって再び戦闘に参戦すると、もう敵のHPは残りわずかだ。


 すると最後の悪あがきなのか、5匹周りにスライムが召喚された。


「周りの奴をやろう」

「了解です」

「りょ」


 攻撃力も高くない俺たちは周りのスライムを相手にすることにした。


「おりゃあ」

「てやぁ」


 別に普通のスライムだった。

 召喚されたからといってもなんてことはなかった。

 あっさり倒してしまい、拍子抜けする。


 そして再びビッグスライムに攻撃をしたら、最後だったらしくHPがついに0に。


 ちゅどーん、とそれっぽい効果音が出てビッグスライムが消えていく。


「「「うおぉおおおお」」」

「「「やったあああ」」」


 男たちの野太い声と女性キャラクターの可愛い歓声が響いた。


「何か出たか?」


 >ルルが「魔石」を取得

 >タピオカが「魔石の欠片」を取得

 >ウタカが「スライムのネックレス」を取得


 レアアイテムはログにパーティーメンバーの分が表示される。


「魔石が」

「私はスライムのネックレス」


「どちらもたまに出るな」


「お、俺!! なんか出た」


 1人の男性プレイヤーが手を上げた。


「なんだ?」

「スライムクラウン、攻撃力15、魔法力15、防御力15……」

「おお、なかなか強いな」

「初めてみるぞ」


 実体化して装備して見せてくれる。

 名前の通り王冠だ。

 金細工にスライムの青色の透き通った綺麗な宝石が埋められているのが特徴だった。


「綺麗」

「お、けっこういいな」

「Wikiに書いておけよ、情報提供はお互いさまなんだから、相互支援だからよ」


 なるほど、こういう人がWikiの更新してくれてるんだな。

 俺たち以外に15人くらいいるから、誰か1人くらい書き込むだろう。


「では、はい解散! おつかれっした」

「「「お疲れさま」」」


 みんなでハイタッチしたりして、解散になる。


「ひよっこちゃんたちも頑張れよ」


 背中をバシバシ叩かれて、激励された。

 そのまま数メートル先で雑談をしている。


「ちょっとリーダー、少女相手に馴れ馴れしいっすよ。あのルルちゃんですよ」

「ルルちゃん?」

「ルルちゃん知らないっすか。ストート帽子被ってる珍しい美少女プレイヤーって有名で」

「ああ、そうなのか」

「これだからリーダーは」


 なんか俺、有名なの?

 いや、帽子が有名なのか?


 ふむ、なるほど分からん。

 とりあえず聞かなかったことにしよう。

 話に加わって真実を知るのが怖い。


「でもルルちゃんだって、中身男だろ?」

「JKだって噂ですが」

「JKねえ」


 本人の聞こえないところでしてくれよ、そう言う話。

 もしくは、本人の前で直接話すか。

 でもJKではないぞ。俺は男だ。

 くっ、訂正したい。したいが、ぐぬぬ。


「お兄ちゃん、あはは」


 爆笑してる人がいる。妹よ。兄がJK扱いされてそんなに楽しいか。


「かわいいもんねぇ」

「だよねぇ」


 くそう。タピオカさんまで一緒に笑ってるわ。

 ぐぬぬ。


 ボスは1時間に2体。

 30分の間にランダム湧きだ。

 場所もランダムなので、ここで待ち伏せてても次は違うところに出るはず。


 ダンジョンのフィールドボス初討伐はこうして終わった。


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