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#014. 七夕イベント


 さて試練の塔をやって、次は何をやろう。


「そうだ、七夕のイベントってやってるんだよね?」

「はい。やってますよ。例えばほら、そこ」


 ガイド妖精のエリスが路地を指さす。


 ああ、確かに。

 表通りはお店がほとんどなのであまりないんだけど、裏通りの住宅街にはぽつぽつと家々に笹の葉が垂れていて、色とりどりの短冊と飾り物がついている。


「本当。確かに七夕ですね」

「和風と洋風だけど、別に一緒になってしまえば、それっぽく見えるね」

「ああ」


 それを感心して眺めた。


 俺たちも敵はかなりの数倒してきた。

 主にストートのストラとストルンだけど、そいつらも一応、七夕の「天の川の欠片」を落としてた。

 欠片には赤、青、緑の三種類があり、それぞれ10個合計30個集めると、アイテムと交換できる。


「どれどれ、それぞれ20個ずつはあるな」

「私もですね、30個ずつあります」

「あ、私もだよ、お兄ちゃん、20個ずつ」


「端数は?」

「ありますよ、いります?」

「あ、ある」

「じゃあ、端数はウタカに渡すよ」

「あ、ありがと。これで30個ずつ」


「俺が2回、タピオカさんとウタカが3回できるってことだな」

「そうですね」

「うんっ」


 ゲーム内のメニューからイベントの詳細を見る。


「えっと、ミルキーウェイ財団だっけ」

「そうですね。王都ミルシーダでは東西南北の門入口と中央広場にいます」

「ここからだと……」

「中央広場ですね」

「お、おう」


 エリスの案内の通り、中央広場に向かう。


 中央広場の隅のほう、数人が中国風の衣装をまとった人の前に並んでいる。

 緑のマーカー上段は「ミルキーウェイ財団」。下段には人名「リチャード・フロスト」と書かれていた。

 顔は西洋人だけど中国風で、その人だけ見ればちょっと外国人観光客みたいだ。

 ここは西洋風なのでコスプレのほうが近いかもしれない。


「あの人だな」

「ええ、分かりやすいですね」

「うん、なかなかイケメンじゃん」

「あはは」


 列に並ぶ。

 といっても数人だ。すぐに順番がきた。


「――はい、次の人」

「お兄ちゃんからでいいかな?」

「いいですよ」

「わかった。じゃあお願いします」


 俺が欠片を渡すと「七夕の宝石箱2047」と「七夕の引換券」を2つずついただいた。

 2人もそれぞれ3つずつ貰ってくる。


 列を離れて、さっそく開封だ。


 七夕の宝石箱2047を開ける。

 確率は以下の通りらしい。

 こういうのはガチャ箱、ルートボックスという。

 VR装置では特に規制はないが、このガチャ箱に関しては確率を明記している。


 ▼七夕の宝石箱2047の中身

 ・「魔術織姫」スキルの書物 3% (1回まで)

 ・「剣術彦星」スキルの書物 3% (1回まで)

 ・「天の川エフェクト」スキルの書物 3% (1回まで)

 ・Lv20 魔杖「織姫」 3% (1回まで)

 ・Lv20 魔刀「彦星」 3% (1回まで)

 ・夏のガラガラ引換券 5%(最大20%)

 ・即時復活ポーション30% 5%

 ・天の川乳業ミルク 15%

 ・銘菓「七日月」 15%

 ・HPポーション50%×3 15%

 ・MPポーション50%×3 15%

 ・ダークマター 10%


 1回までのものはIDあたり1回で、次回以降は「夏のガラガラ引換券」の確率が高くなる。


 ちゃちゃーん。


 ・Lv20 魔刀「彦星」


「うおぅ」


 めっちゃいいの当たった。


「お兄ちゃんやるじゃん」

「おおう、我ながら引きがいい」

「おめでとうございます」

「ありがとう、タピオカさん」


 タピオカさんが自分の事のようによろこんで、俺の手を握って見つめてくる。


「ちょっと、二人とも、ごほんごほん」

「あ、わりい」

「いいえ」


 ちょっといい雰囲気だったよね、今。

 ちなみにLv20武器は、装備必須レベルなので、今はまだ装備できない。


「もう1個」

「ああ」


 ちゃちゃーん。


 ・夏のガラガラ引換券


 お、引換券だ。


「これは、エリス?」

「これは8月イベント用の引換券ですね」

「8月イベント用?」

「はい。水着とかお皿とかが当たります」

「あぁ違うイベントがあるんだね」

「そうですね」


「次はどっちが引く?」

「じゃあ、ど、どうぞ」

「あ、お姉ちゃん先でいいよ?」

「じゃあ、タピオカさんからで」

「わかりました」


 ちゃちゃーん。

 ちゃちゃーん。

 ちゃちゃーん。


「お、3連ちゃんか」

「はい」


 ・即時復活ポーション30%

 ・天の川乳業ミルク

 ・ダークマター


 お、おう。

 微妙な引きだ。良くも悪くもない。


「まあ、普通だね」

「そうですね」


「次は私」


 西竜紅騎士団の格好の妹がびしっとポーズを決める。

 ちょっと周りの注目を浴びたが、まあ、大丈夫。

 ちなみに頭には兜ではなく、ストート帽子が乗ってるのでかわいい。


 ちゃちゃーん。

 ちゃちゃーん。

 ちゃちゃーん。


 お、妹も3連開けか。


 ・「魔術織姫」スキルの書物

 ・ダークマター

 ・銘菓「七日月」


「おおお、スキルきたわ」

「スキルだな」

「おお、すごいですね!」


「ちなみに魔術織姫と武器の織姫で威力アップみたいなんだけど」

「俺の武器は彦星だから、逆だったら強かったな、おしい」

「あはは、でもこれはこれで、いいね」

「ああ、おめでとう」

「おめでとうございます」

「2人とも、ありがとう」


 ブイブイっとカメラがあるわけでもないのに、ブイを見せてくる妹。

 これはこれで、ちょっとかわいいな、兄バカだけど。


「これは……」


 妹が溜めをくつってもったいぶる。


「これは?」

「武器とスキルを揃えるまで、敵を倒しまくるべきでは」

「そうかもしれないが」

「だよね?」

「いや、大丈夫だろう。これ、期間がひと月あるから」

「そっか、別に急がなくても、普通に狩りして偶に宝石箱貰えばいいんだね」

「そういうことだな」

「ふぅ、なんかまだ先が長いと思うと、楽なのかな」

「そうだと思う」

「ほーん」


 とりあえず、狩りにでも行くか。


「まずは、銘菓『七日月』を食べよう」

「あ、ああ」


 1つのお菓子を3分割してくれる。

 ちなみに最中の皮にこしあんが入っているタイプのものだ。


「美味しいな」

「美味しいですね」

「あまあま、おいち」


 お菓子としての評価は悪くなかった。

 ただ分割したために、料理効果を発揮しないらしい。


 MP40%の回復アイテムなんだそうだ。


「さあ、イベントもそうだけど、またマップへ行くか」

「はーい」

「ういっす」


 いつものように西門を通って、フィールドへ。


 ちなみにミルシーダ平原の南側には川が東から西に流れていて、西の先に海がある。

 すぐそこは広大な平原だけど、よく先のほうを見ると、なんとなく海っぽいものがある。


「なあ、あの先、海なんだよね?」

「そうですね」

「うんっ」


「海、まで、行ってみたくないか?」

「いいけど、行けるかな? レベル3だよ」

「そっか、もう少しレベル上げするか」

「うん」


「頑張ろうな」

「そうですね!」

「うん、頑張る!」


 2人の元気な返事を聞いて、俺たちはレベル上げ作業のワイルドボア狩りに精を出す。


 おおっ。ペットの「よぞら」たちだけど、ドロップアイテムを拾って歩いてくれる。

 これはなかなか便利だ。


 ちなみに妹のペットはニワトリ(白)のアサヤケという名前になっていた。


「うりゃぁあ」

「とりゃぁああ」

「あ、アタック!」


 掛け声は別になくてもいいけど、なんとなく出てしまうことがある。

 スキルは音声入力なので、声に出す必要がある、らしい。


「へへへ、やったまた肉ゲット、2連ちゃんだ」

「おお、やったな」

「お肉ですねぇ」


 ピコーン。


 >ルルがLv4になりました


「レベル上がった!」

「おお、おめでとうございます」

「お兄ちゃん、おめでとう」

「ありがとう」


 ▼観光ガイドブック

 ・Lv3 闘技場でPvPをしてみよう

 ・Lv4 テイムをしてみよう


 >「テイムズの好物汎用」を3つ取得


 ほほう、なるほどLv4ではテイムか。

 まだLv3のもクリアしてないんだけど、やることが多くて。

 とりあえず、今は俺だけだし後で一緒にやろう。


 この後、日が暮れる前には無事、タピオカさんとウタカもレベル4に到達した。


 さて、次はガイドの通りテイムと闘技場でもやってみようか。


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