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#013. 試練の塔


「どうしょうか、お兄ちゃん。4000無料ジェム」

「そうだな、とりあえず初心者アーマー以外のアバターを手に入れたらどうかな」

「そうする」


 妹とアバターの話をする。

 初心者アーマーは、ダサいとまでは言えないものの、シンプルでかわいくはない。

 点数でいうなら20点ぐらい。


「アバターなのですが、1回目は初回特典としてレア以上のものが出るようになっています」

「あ、そうなの?」

「はい。そのため2回目以降では、もっと単純なものが出る傾向があります」

「あぁ、まあそうだよね」

「おすすめは11連ガチャですね。1回分お得ですしこれくらい引けば1個くらいはまともそうなものが出るかもしれません」

「そういうレベルなんだ」

「は、はい」

「だそうだ、妹ちゃん」

「う。じゃあそうする」


 11連を引くようだ。

 11連ガチャで1000ジェムだったと思う。


 ▼ガチャ結果

 ・Happy Tシャツ

 ・魂 Tシャツ(黒)

 ・ワイシャツ(青チェック)

 ・紐サンダル

 ・ミニスカート(黒)

 ・ヘッドホン(スノー)

 ・ホットパンツ(濃紺)

 ・ジャージ(濃緑)

 ・カーディガン(桃色)

 ・ウサギパーカー(薄桃色)

 ・ライトアーマー(西竜紅騎士団)


 画面を他者表示にして見せてくれる。


「お、おう」

「お洒落着とかもあるけど、実用的なのはライトアーマー(西竜紅騎士団)だけかな?」

「そうだね」

「うん、とりあえずライトアーマー着てみるね」

「ああ」


 妹がライトアーマーを着る。

 白銀と紅色の鎧装備だ。

 俺のドレスアーマーよりも金属部分が多めで騎士装備っぽい。

 それでも下はミニスカートとニーソックス仕様なのは共通だった。


「どうかな?」


 一周くるっと回って見せてくれる。


 カッコかわいいと思う。

 センスは悪くない。85点。


 ちょっと鎧がわちゃわちゃしてる感じが非常に惜しい。

 両肩の外側にワイバーンの紋章が入ってるのはカッコいいな。

 あと赤が映える。


 俺は黒と紺の宇宙色なので、対比として赤、青とバランスも悪くはない。

 そうなると普通の春ワンピースのタピオカさんが若干浮いているが、しかたがない。


 非常に強そうだが、防御力は初心者アーマーなので、まったく強くない。


「ああ、かっこいいぞ。それにかわいいところもある」

「えへへ、お兄ちゃんに褒められた」


「さて、強そうになったところで、どうする? エリスなにかおすすめは?」

「はい。そうですね。『試練の塔』や『ダンジョン』などはいかがですか」

「試練の塔?」

「そうです。各階層に敵が出てきてクリアすると報酬が貰えます」

「面白そうじゃん」

「パーティーで参加できるので、3人でも大丈夫ですよ」

「わかった、2人ともそれでいい?」

「いいよ」

「いいですよ」

「了解。場所は? 案内してくれる?」

「わかりました、エリスにお任せください」


 妖精のエリスに案内されて、歩いていく。


 というかすぐにわかった。

 天に向かって伸びているかなり高い塔が見える。

 試練の塔なのだから、外観も当然塔なのだろう。


 白亜の大理石かコンクリートのようなものでできた円形の塔だ。

 ピサの斜塔みたいなイメージだと思う。

 あれのもっと高いやつ。

 もっとも傾いてはいなくて、正確にまっすぐ建っている。


「お兄ちゃん、あの塔だよね」

「だろうな」

「はい、そうですよ。いわゆる古代文明の遺跡ですね。ダンジョンとかもそうです」

「ほーん」


 案内に連れられて、その塔のふもとまできた。


 入り口付近には、たまに人が出入りしている。


「ここはプレイヤーさんでいうインスタンスダンジョン、IDになっていまして」

「ああ、分かるよ」

「パーティーごとに別マップです。他の人と合流することはありません。ただロビーは共通です」

「了解」


 塔の入り口から1階に入るとロビーだった。待機室だ。

 ミニマップの表示によると正確には「0階 ロビー1」らしい。


「ここで上の階へのエレベーターにパーティー単位で入ります」

「なるほど」


 俺たちは壁際にある個室のようなエレベーターに入ると扉が閉まる。

 そして再び扉が開くと1階に到着していた。


「おお、スライムか」

「はい」


 1階の敵はLv2スライムだった。

 単独だ。


「これなら簡単だね、お兄ちゃん」

「そうだな」


「うりゃあ」

「おりゃあ」

「えいっ」


 三人ともナイフでスライムに斬り掛かかった。

 フィールドのものよりHPが高いらしく、すぐには倒せない。

 何回か攻撃すると倒すことができた。


 >試練の塔1Fクリア

 >ルルが初討伐報酬により「魔石」を取得

 >タピオカが初討伐報酬により「魔石」を取得

 >ウタカが初討伐報酬により「魔石」を取得


 なんだかゲームっぽい表示と共にピコーンと音が鳴り、アイテムボックスには魔石が1人1つ入手できていた。


 通常ドロップはないらしい。


「魔石だね」

「そうだね。これそこそこ高いんだよね」

「うん」


 スライム倒しただけで魔石なら十分な報酬だ。


「初討伐報酬なので2回目からは出ませんけど」

「あっそうなのね」

「はい」


 つまり1人各階層1回までということらしい。


 反対側のエレベーターに乗り込む。

 扉が閉まり、再び開く。


「お、2階はストラ、ストルンだ」


 1匹ずつ計2匹いる。

 Lv4ストラ、ストルン。

 見た目は可愛いが、こいつには飽きた。


「おりゃあ」

「ていやあ」


 俺たちは再び普通に攻撃して、まずはストラをそしてストルンを倒した。

 スライムよりは強いが、倒せないレベルではない。

 ちょっとだけダメージを受けてしまった。


 また魔石をゲットする。


「魔石だ、やったねっ」

「ああ、楽勝だな」


 続きまして3階。


 Lv6ホーンラビット。

 おでこに角の生えた白いウサギだ。

 とにかくを当て字で「兎に角」と書き、この「兎角」はあり得ないことの例えに使われるけれど、RPG世界ではポピュラーな存在だ。

 普通のウサギより幾分大きい。

 目が赤く光っている。


 ミルシーダ平原にはウサギもいるけど、もう少し王都から離れたところに生息しているらしく、俺たちはまだ遭遇していなかった。


「えいやー」

「とりゃぁ」


 ナイフで攻撃を仕掛けると、ダメージを与える。

 向こうもさっきまで我関せずと、眺めていただけだったのが、いきなり角を向けて突進してきた。


「よっと」

「おっと」

「ぐあぁああ、あうち」


 俺とタピオカさんは避けられたが、どうやら狙いはウタカだったようで、見事に命中、HPを50%以上削られた。


「うぅう……」


 妹はショックからうめいていた。

 このゲームは痛覚はほぼ無効化されている。

 痛くはないものの、びっくりはする。


「大丈夫か?」

「お兄ちゃん、大丈夫」

「ポーション飲んどけ」

「うん」


 妹に指示を出すと、俺たちは後ろにかばいつつホーンラビットをちくちく攻撃する。

 この塔のモンスターはHPがやはり多めらしく、簡単には倒せないが徐々に減ってきた。

 悪くはない。


「よっと」


 今度は俺がターゲットだった。

 攻撃にはワイルドボアと同じようにゲーム特有の溜めがある。

 しっかり見てれば、攻撃してきそうだな、と気づけるのでなんとか避ける。


 次の攻撃ターンで、無事倒すことができた。

 ターンといっても本当のターン制ではない。


 エレベーターで昇り、4階へLv8ウルフだ。

 茶色い毛皮に包まれた、狼犬のような容姿。

 実際には狼犬がオオカミに似ているのだろうが、まあいいんだ。


 現実のものより大きく見える。

 その目は本気だ。


 低姿勢に構え、俺たちがエレベーターから出てくる様子をうかがっている。


「よし、いくぞ」

「うおおお」

「うりゃあ」


 三人同時に襲い掛かったが、相手はまず妹に一撃入れて尻もちをつかせてくる。


「きゃぁ」


 帰り際にタピオカさんにさらに一撃入れてきた。

 そのまま俺に向かってくる。


「うおぉおぉ」


 俺は全力でナイフを前に突き出して攻撃姿勢を取った。

 いやナイフで防御姿勢を取ったのだが、それがウルフに軽くダメージを与えたものの、ひるみもしない。


「おおああ」


 そのまま俺も転倒させられてガブリ。

 HP全損。お陀仏さん。


 虫の息だった2人も、立て直す間もなくガブリ。

 3人全員、お陀仏さん。


 >パーティーは全滅し敗北しました。


 無慈悲にメッセージが出て、そのまま0階ロビー1に飛ばされてきた。


「負けちゃったね」

「そうですね」

「レベル8だろ、俺たちは3だし、まあ」

「うん」


「でもほら。魔石が3つ。収穫だぞ」

「そうだね、やったっ」

「また挑戦しよう」


 試練の塔、さすが試練とつくだけはあるようだ。


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