ログアウト休憩をして、妹と夕ご飯を食べてからお風呂に入る。
さあ、再度ログインだ。
「ただいま、エリス」
「おかえりなさいませ」
ガイド妖精のエリスだ。
さてしばし、1人の時間を何に使うか考える。
やりたいことは無限にあるが、何から手を付けたらいいか、よく分からない。
ポーションも料理も露店デートで買い揃えた。
ステータス確認くらいか。
▼ステータス
ルル@ruru_highland
ヒューマン 女性 冒険者
Lv3 exp 36%
HP:356/356
MP:295/295
スキル 残り0/16sp
◎Lv1 通常攻撃[Lv5/10][通常]
◎Lv2 休憩[Lv1/10][パッシブ]
◎Lv2 アタック[Lv5/10]
◎Lv1 採取[Lv5/30]
装備
ストート
防御力+10、耐久92/100
Lv1 ナイフ
攻撃力+10、耐久76/100
Lv1 初心者アーマー
防御力+10、耐久85/100
+[AV]三日月のドレスアーマー
スライムのネックレス
攻撃力+5、魔法力+5、耐久66/70
Lv1 初心者の靴
防御力+8、耐久92/100
ガイド妖精:ルルコLv3[エリス]
テイムズ(1/3)
ペット:ゴールデンハムスター(メス)Lv1[よぞら]信頼度50%
モンスター:(なし)
騎獣:(なし)
カード(1/10)
ストラLv3
ちなみに武器と鎧装備には装備条件Lvがあるが、他のアクセ、アタバーにはない。
カードスロットは10個までだけど所持は1個しかない。
キャラクターの補正はレベルに応じて上昇する。
ちょっと耐久が減っている。
このゲームでは装備類は耐久値があるらしい。
「耐久値は0になると★0というアイテムに変化して壊れてしまいます。その前に修理をするのですが、修理をすると最大耐久値が少し減少します。だから消耗品です」
「え、ストート帽子もそうなの?」
「はい。アバターは大丈夫です」
「ああ、アバターな」
「ストート帽子をアバター化すれば、ずっと使えますが、補正は発揮されません」
「なるほど、それも考えよう。耐久値が減ってきてからでもいいんだよね?」
「そうですね。ちなみにアバター化は、コマンドを選ぶだけでできます。ただし戻せません」
「あっはい」
西門広場を眺めるのも、まあまあ面白い。
「よぞらは何食べる?」
「野菜、肉、なんでも食べるみたいですね」
「なるほど」
イノシシの小さい肉というドロップアイテムがあるので、あげてみる。
『ハムハムッ、ハム!』
お肉にかぶりついて食べるハムスター。
なんだか和む。
>ルルの[よぞら]の信頼度が1%上昇。信頼度51%
ああ餌をあげると上がるのね。
もう一個あげよう。
>ルルの[よぞら]の信頼度が1%上昇。信頼度52%
おお、これは面白いな。
ほいほい、もっと食え。
いくつもあげてみる。
>ルルの[よぞら]の信頼度が1%上昇。信頼度60%
10個あげたら、もうお腹いっぱいらしい。
11個目は食べなかった。
よぞらのステータスを確認する。
▼ペット詳細
ゴールデンハムスター
名前:よぞら
Lv1 メス
HP:130/130
MP:150/150
信頼度:60%
満腹度:100%
装備
(なし)
スキル
採集品探索Lv1
おお、スキルもあるのね。
採集系のアイテムを探索してくれると。
ふむふむ。
攻撃スキルとかはないのかな?
ペット枠だからないのかもしれない。
いわゆるシステム外スキルというやつか。
「よしよぞら、遊ぼうな」
『ハムハム』
よぞらと手で追いかけっことかして遊んでいるとシステムメッセージが。
>ルルの[よぞら]の信頼度が5%上昇。信頼度65%
へぇ、遊びでも上がるんだね。
「ほーらよしよし、よぞらいい子だ」
「ルルちゃん、かわいい」
「あっ、こんばんは、タピオカさん」
「こんばんは」
「あのな、ペットには信頼度、満腹度があるみたいで、餌をあげるか、遊ぶといいみたい」
「へぇ。ミルクティー、お肉食べる?」
『にゃぁ』
ほうほう。お肉を食べるようですな。
しばしミルクティーが食べるのを眺める。
しかしよくできていて、本当にネコが食べているみたいだ。
ミルクティーと俺たちで遊ぶ。
ネコとネズミじゃあ危ないんじゃないかと思ったが大丈夫みたいで、仲良く追いかけっことかしているが、食べられる気配はない。
現実ではネコとネズミを一緒にしちゃだめだぞ。
「あの、お兄ちゃん?」
「おお、ウタカ、来たか」
「うん。こんばんはタピオカお姉ちゃん」
「こんばんは」
最初はどうなるかと思ったが、妹はタピオカさんをお姉ちゃんと呼んで、仲良くしている。
――少なくとも表面上は仲良くしているように見える。
心の奥底でどういう扱いなのかは、さすがに分からないけど。
「なあ、そういえばウタカはアバターガチャ引いた?」
「うん……」
ウタカはなんか嫌そうな顔をする。
「どれどれ、お兄ちゃんに見せてみ?」
「どうしても、み、見たいの? えっ、でも」
「いいからいいから」
「わ、わかった。絶対に笑わないでよね」
「もちろん笑わないよ。ウタカは何着ても似合うから」
「そう……」
ウタカがささっと操作をして、着替えたんだが。
「その、たたた、体操着だった」
「ブルマじゃん」
「ブルマ、ですね」
白い半そでの体操着には袖と襟に紺の線が入っている。
膨らみ始めた胸の前にはでかでかとゼッケンがついている。
【うたか】
プレイヤー名が平仮名の手書きフォントで書かれている。
そして下は濃紺のブルマ。
足の付け根、
もちろん後ろもパンツみたいになっている。
足は白いハイソックスに白い運動靴だ。
「あ、ああ。その、ウタカ、ごめん……」
「うん……」
妹は嫌そうな顔のまま、服を戻した。
「……」
ブルマはさすがに予想外だ。
どうフォローしてやればいいか分からない。
「私、これ要らない。売るね」
「ああ」
ウタカがワールドマーケットを操作しだす。
「うっ、うそ。なんでこんなものが」
「どうした?」
「評価額が5000ジェムだった」
「はあ?」
「だから5000円だった」
「う、うん、まあ、世の中には物好きもいるし」
「そうだね。じゃあはい販売開始っと、こんなもの、売れるのかな」
「それは……」
俺はあまり言いたくないが、こういうものを大好きな男たちがいるのを知っている。
ブルセラショップという言葉が頭をよぎるが、考えないようにする。
たぶんまだ中学生の妹は知らないかもしれない。
「うっそ。抽選が入った……」
1000ジェム以上の商品は最初20分間、抽選タイムになる。
さっそく応募者が現れたらしい。
抽選は全額の前払い制で、当たらなかったら戻ってくる仕組みなので、5000ジェム用意した人間がいるのだ。
妹が不安な顔で仮想端末のワールドマーケットの画面を眺めている。
「抽選が、その、5人に増えた」
「ああ」
さっきからタピオカさんも台詞がない。
待っている間に、応募者はじわじわと増えていき、20分経過した今その数は。
「応募者が24人……」
「みたいだな、まあ、売れてよかったな」
「なんか、――すごく気持ち悪い」
ウタカが自分の身を守るように腕を抱く。
ワールドマーケットでは販売者や購入者名は分からないようになっている。
そして女性向けアバター装備も男性が買うことができる。
まあ、そういうことなのだろう、たぶん。
「そういえばな、あの、言いにくいんだが」
「なにお兄ちゃん?」
ウタカの目はもう涙目だ。
「あのなブル……体操服のアバターをプレビューするとゼッケンがな【うたか】になってる」
「はあ?」
「だから俺が着ても名前が【うたか】になってる」
「うっそん」
「本当」
「お兄ちゃん、着てみたんだ。この変態」
「ぐっ」
「なんかフクザツ。世の中って怖いね、お兄ちゃん」
「ああ、そうだな」
「売らないで、ガチャ券に解体すればよかった」
「そうだな……」
ウタカをタピオカさんがそっと抱きしめる。
「だ、大丈夫、大丈夫だから、ね?」
「うん」
「ちなみに俺たちのアバター4種の値段は?」
「評価額は以下の通りです」
エリスが値段表を見せてくれる。
500ジェム 春ワンピース
800ジェム クマぬいぐるみ水着
2000ジェム 三日月のドレスアーマー
5000ジェム 女性用体操服'80
「お姉ちゃん、これなんなの」
「私、なんか複雑な気分だわ」
「俺も同感」
その代わりにウタカは20%引いて4000ジェムを手にした。
こうしてウタカのブルマ事件は幕を閉じた。