そういえばタピオカさんのペットはまだ見えない。
「タピオカさん、ペットは?」
「あ、ううん。まだガチャは引いてないわ」
「どうする?」
「これも今、引いちゃうね」
「うん」
タピオカさんがホログラムをポチポチするのが見える。
「ん、えっと、ネコちゃんだった」
「おおう」
彼女のガイド天使のワッフルちゃんが出てくる。
「ネコちゃんと契約しますか?」
「するわ」
ピコーンとネコが出てくる。
黒ベースでお腹と手足の先が白いネコだ。
「お、なかなか可愛い」
「そうですね」
『にゃーん』
「はい、にゃーん」
「にゃーん」
みんなで言ってみる。
ネコはタピオカさんの足に体をこすりつけて、愛情を表現しているようだ。
「名前はどうしますか? つけないこともできます」
「えっとそうね『ミルクティー』で」
「ああ、なるほど」
「うふふ、ルルちゃんわかった?」
「うん。タピオカとミルクティーなんでしょ」
「そういうこと」
さて白と茶のストート帽子を被った俺たちはけっこう注目されてしまっているが、今日は何をしようか。
「夕ご飯の予定まで2時間だ。何する?」
「そうね。レベル上げ?」
「普通だね」
「そりゃあね。まだこのゲームで何ができるか、よく分かっていないから」
「ああ」
「端末ゲーならそこそこのキャリア積んでるんだけどね。微課金でランキングに載ったこともあるわ」
「そうなんだ」
蒔絵ちゃんはショップとかすぐに使っていたし、そういうのには慣れているんだろう。
ある意味でベテランだ。
ただこういうMMOとかRPGの系統は経験があまりない、みたいなこと言っていたと思う。
「タピオカさん思ったんだけど、クマ水着を800ジェムで売れば、アバターガチャを4回引けるね」
「うん、それもそうだけど、一度に着れるのはセット装備一着かパーツ単位だけだから」
「そっか。でも4回でまた高いの引いて、それも不要なら売ってしまえば、欲しいの出るまで引けるかもしれない」
「確かに。ぬーん。でもそんな都合よくいかないよね、だいたい」
「そうだね」
タピオカさんは考えるようなしぐさをして、悩んでいる。
まあ春ワンピが十分可愛いから、別にいいという見方もできる。
「いやまて、俺の無料ジェムで、アバターガチャを引いて、中身を売るなりタピオカさんに譲るってこともできるんだよね?」
「そうね。でもありがとう。自分のお金は自分で使ってね? 私のために出費しなくていいわ」
「そっか、うん」
「レベル上げでもいいけど妹もいるし、また露店見て、剣とか装備とか探す?」
「うーん。私、キャットレイスじゃない?」
「そうだね」
「それでキャラ特性からみて、どの職業かまだ決めかねてて」
「俺はヒューマンだけど、俺も悩んでる」
ちなみにステータス特性はこんな感じ。
キャットレイス
攻撃力:★★★☆☆
魔法力:★★☆☆☆
防御力:★★★☆☆
俊敏性:★★★★☆
物理職向きで俊敏性に優れる。
運動神経がいいプレイヤースキルが高い人向けだ。
ちょっと玄人用。
このゲームでは物理攻撃系は避けられればそれだけでダメージを受けないので、かなり有利だ。
もちろん魔法とかあるので、意味がない場合もある。
蒔絵ちゃんは話によると運動神経も悪くないらしい。
ただし走るのはあまり得意ではないらしい、一部の部位に重りが2つついている関係で。
その動きを想像して俺はちょっと鼻の下を伸ばしそうになったけど、自粛自粛。
一次職は、冒険者、ファイター、メイジ、アーチャー、ヒーラー、魔法剣士、アルケミスト、テイマーの8種類。
物理で俊敏性が高いといえば、シーフだけど、Ver1.0現在は実装されていなくて、今年後半のVer1.1で追加されるというロードマップになっている。
さすがにそれまで待っていられないし、それなら2ndキャラにしたほうがいい。
「うーん、物理職って冒険者、ファイターしかないから」
「そうなのね」
「あとはテイマーとかどう? 自分のステータスとかあんまり関係ない」
「動物、モンスターを使役して、戦うっていう?」
「そうそう。それかアーチャーってのもあり。アーチャーも攻撃力系だから物理職」
「弓ね!」
「うん、弓」
「わかった。私、アーチャー目指すね」
「お、おう。決断の早いことで」
「えへへ」
さてそうなると問題は俺だ。
無難なプレイ。ノーマルプレイを是とする俺。
ステータスは平均でどれも星3で同じ。
今は冒険者だけど、攻撃力はキャットレイスとヒューマンで同じだ。
ただ俊敏性がキャットレイスのほうが高いので、避けたり攻撃を当てたりするときに有利のはずだ。
「俺はどうしよっかな」
「まだレベル2でしょ」
「うん。転職はレベル5になってから」
「もう少し考えててもいいよね」
「まあね。でも装備はそろそろ買いだしてもいい」
「うん。ワールドマーケットでも買えるのよね? 売ってれば」
「そうだね。でも露店の掘り出し物のほうがたぶん安い」
「そっか」
例えばすでにアクセサリーのネックレスを装備してるけど、これも本当は職業に合わせたほうがいい。
ストート帽子は防御力系なので、オールマイティーに使える。
「まあ、露店、見てくるか?」
「うん」
露店を見て回る。
これといって特殊なものはない。
料理はバフが乗るから、苦戦する時、例えばいわゆる「背伸び狩り」とか「ボス戦」とかに便利だろう。
俺たちはパーティーなので、そこまで苦戦してない。
「ジャムサンド2つください」
「はーい、ありがとうございます」
もうここまで料理スキルを上げている人がいるらしい。
▼ジャムサンド
効果:HP+150/20分
料理。各種ベリーのジャムサンド
「はいこれ、タピオカさん」
「ありがとう、いただきます」
「いただきます」
うまい。
絶妙な甘みと酸味のハーモニー。
それがしっかりした小麦パンに挟んである。
小麦パンも麦の風味とほのかな甘みのある絶妙なバランスだ。
「美味しい」
「ありがとうございます」
露店で買ったその目の前で食べたので、店主さんが見ていた。
「そういえば、ワイルドベリーの買取とかしてますか?」
「あ、はい。ぜひ」
「それなら、あるだけ買ってくれますか?」
「助かります!」
こうして俺たちが持ってるワイルドベリーを売り払う。
ただストート狩りに集中していたので、最初の頃の分しかあまり持ち合わせがない。
露店を開いたときには売れなかったけど、こういう場所には確かに需要がある。
なかなか露店ではマッチングがうまくいかない。
かといってワールドマーケットだとちょっと高くなってしまう。
なぜなら手数料があるからだ。
まず登録に1,000TEA、それから高額品はさらに100ジェムが必要だ。
そして手数料が20%とけっこう率が高い。
1TEAが1ジェムなんてことはないので、変換レートからしても、だいたい割高みたいだった。
全く需要がないのに高額の値段を付けると登録料で赤字の可能性もある。
こうして2回目の夜間の露店デートをした。