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#009. お揃い帽子


 露店のうち、入り口付近をぶらぶらする。

 さすがにまだ初期だけあって、プレイヤー露店の種類はあまり多くない。

 それでも、なんだかんだ料理をしている人とか、レベルの低い装備を売っている人とか中にはいる。


 ヨミ>お兄ちゃん、今どこ?

 ルア>まだ西門露店街

 ヨミ>りょーかい。すぐログインするから西門入口で合流しよ

 ルア>わかった


 SNS連携ツールで連絡を入れる。


 もちろんゲーム内にも似たような個別チャットがあるけれど、どっちを使ってもいい。

 SNSのほうはゲームにログインしていなくても使えるから、きっとまだ向こうの世界にいるんだろう。


 俺たちが西門入口に到着してすぐに、金色に光る粒子をまといながら妹がログインしてきた。


「ん! お兄ちゃんからメスの匂いがする!!」

「ちょっとウタカ、失礼だろ」

「あはは、いいのよ。あなたがよみちゃん、妹さんね。よろしくお願いします。クラスメートのタピオカです」

「ご丁寧にどうも。キャラ名ウタカです。失礼しました……」

「ふふふ」

「ふーん。お兄ちゃんにガールフレンドねぇ、私知らなかったんだけど」

「ウタカ、が、ガールフレンドではない、クラスメートだ」

「ふーん、ふーん」

「……」

「まあいいわ、お兄ちゃん!」


 ウタカはガシッと俺にくっついてくる。

 そうするとタピオカさんも反対側にそっとくっついてきた。


「ちょっと」

「んふんふ♪」

「えへへ♪」


 なに張り合ってんだよ。

 お兄ちゃん困っちゃうだろ。


「まあいい、離れろ。歩きにくい」

「う、わかった」

「分かりました」


「ところで、帽子、お揃いなんですね」

「うん」

「いいでしょ」


 自慢する妹。


「私も、欲しい……」


 あー、言うと思った。これは薄々予感してたんだよね。


「それが結構レアでさ。なかなか出ないんだ」

「そうみたいですね。他に被っている人も見ませんでしたし」

「だろ、出ないかもしれないが、まあ今日一日頑張ってみて、無理ならとりあえず諦めて進めるってことでいいか?」

「はい、いいですよ」


 西門から外へ出て、またスライムエリアを通過、ストートエリアに移動する。


「この辺だな」

「ええ」

「では開始」


「えいやぁ」


「とやぁ」


「ふんがあ」


 ストラ、ストルンと手あたり次第、3人で攻撃していく。

 1人では3回以上攻撃を加える必要があるので、さすがに3人いると早い。


 黙々と戦闘が続く。

 さすがに作業になってくる。


 ピローン。


 >タピオカが「ストートペンダント(茶)」を取得


「おっ、おめでとう!」

「お姉ちゃん、おめでとう!」

「あ、ありがとう。うれしいけど、これじゃないのよね」

「うん」


 俺とタピオカさんは揃いのスライムのネックレスをしている。


「あ、ちなみに、ペンダントとネックレスは同種なので、効果は重複しません。装備と認識されるのは1個までですね」


 ガイド妖精のエリスがそう指摘する。


「じゃあ、これはウタカちゃんにあげる」

「えっ、お姉ちゃんいいの?」

「うん」

「ありがとう、ございます」


 ちょっと複雑そうな顔をしつつ、妹がペンダントを受け取って首に通す。

 ニコッと笑って見せる。


「なかなか似合ってるぞ」

「ありがと」


 その後も、戦闘を続ける。


 ストラ、ストルン、ストラ、ストルン。


 こいつら顔は可愛いんだがな。

 だがしかし、ずっと見てると、なんだが悪い笑顔の悪魔に思えてくる。


 ピローン。


 >タピオカが「ストルンカード」を取得


「お、やったじゃん」

「お姉ちゃん、おめでとうございます」

「あ、ありがとう……」


 カードだ。このゲームではカード集めもそこそこ意味を持つ。


「装備した?」

「うん。ちょっとだけステータス上がったみたい」

「まあ、よくわからんよな」

「そうね」


 まだ目的は達成していない。


 ストラ、ストルン、ストラ、ストルン。


「といやぁ、アタック」


「ふんがあ」


「えいやぁ」


 攻撃を続ける。


 ピコーン。


 >ルルがLv3になりました


「お兄ちゃん、レベルアップおめでとう」

「おめでとう、ルルちゃん」

「2人ともありがとう」


 なんだかこうやって人に祝ってもらうことがあまりないので、こそばゆい。


 いつもの新着マーク。


 ▼観光ガイドブック

 ・Lv3 闘技場でPvPをしてみよう


 PvPか、まあ今はパスだな。


 ああそうだった。

 レベルが上がったから3sp取得したんだった。


 アタック上げとくか。

 これもベースLv5になって転職したら振り直しだから、あまりに気しなくていいはず。

 3sp全部アタックに入れてスキルLv5にする。


 ◎Lv1 通常攻撃[Lv5/10][通常]

  ナイフ、素手などで攻撃する。低攻撃力。

 ◎Lv2 休憩[Lv1/10][パッシブ]

  座ったり寝たりすると、素早くHP、MPを回復できる。

 ◎Lv2 アタック[Lv5/10]

  攻撃スキル。剣などで物理攻撃。

 ◎Lv1 採取[Lv5/30]

  フィールド採取をする。


 現在のスキルはこんな感じ。


 さて俺もストラ、ストルン狩りに戻ろう。


 ストラ、ストルン、ストルン、ストラ。


 ストルン、ストラ、ストルン、ストラ。


 ……。


 なかなか出ない。


 それからさらに2時間ほど。

 だべりながら、戦闘を続ける。


 ピコーン。


 >タピオカが「ストート帽子」を取得


「うおおおきたー」

「やりましたね。お姉ちゃん」

「はい、ありがとうございます」


 ついにストート帽子が。

 しかしなんかタピオカさんばっかりレアドロップするんだけど、ドロップテーブルに贔屓ひいきとかないですよね。


「でも、これ茶だね」


 タピオカさんが物質化したアイテムを見て、ぽつりと言う。


「ああ、俺たちのは白だね。白がストラ、茶がストルン」

「私も白がよかったな。でもさすがに色指定までは難しいか」

「そうだね」


「よし、今日の任務はこれにて完了、いえい」


 タピオカさんがハイタッチを求めてきたので、それに応じる。

 妹とタピオカさんも同じようにハイタッチした。


「うふふ、ストート帽子シスターズだね。お兄ちゃんは中身男だけど」

「そうですね」

「俺もシスターズなのか」

「見た目はお兄ちゃんが一番かわいいんだよねえ」


「よし、もうストートはいい、別のモンスターと戦う」

「そうしよ」

「そうですね」


 ストートエリアを抜けて、今度はイノシシエリアだ。


 ふむ。


 大きいイノシシが1匹と小さいイノシシが3匹、パーティーを作っている。


「これは親子なのかな?」

「そうだな」


 戦闘開始。

 大きいイノシシは意外と強い。Lv5ワイルドボアだ。

 小さいほうはLv1ウリボー。


 1人で戦闘はちょっと避けたい。


「おりゃぁ、アタック」

「えいっ、アタック」


 スキルを使いつつ攻撃をする。


 ワイルドボアの突進が強力のようだけど、しっかり見ていれば溜めがあるので、なんとか避けられた。


 ドロップはウリボーがイノシシの小さい肉。

 ワイルドボアはイノシシ肉、イノシシの毛皮、動物の骨。


 7月イベントの七夕の「天の川の欠片」もドロップしていた。

 このアイテムは全モンスター共通ドロップで、自分の攻撃力に合わせて敵のドロップ率が変わるようなっているとのこと。


「よっしゃ。お肉ゲット」

「おお、肉ですか」

「肉だよ、お兄ちゃん」


 そう肉である。

 フルダイブVRMMOができたら、一度はやってみたい、お肉を取ってきて焼くという定番。


 ぜひやってみたいので、もっとお肉を取ろう。


「お肉ちゃーん」

「お肉ぅ」

「あはは、2人とも食いしん坊さんですね」


 こうしてワイルドボアを乱獲した。


 夕方、妹もタピオカさんもLv3になった。

 レアドロップは俺に魔石が1つ。

 3人合わせて、イノシシの牙が5つ。

 どうやらレアドロップだけど比較的出やすいドロップのようだった。


 こうして俺たちはそこそこの数の肉を抱えて2日目を終えた。


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