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第122話 動力炉の……修理??

 オレ達がボリディア元男爵の領地の渓谷にある穴の中で見たのは、古代文明によって作られた遺跡だった。


 どうやら、遺跡の側面の壁や床の造りから見て、あのウユニにあった古代遺跡と同じ時代の物だと思われる。

 というよりも、全く同じ造りに見えるくらいだ。


 その遺跡の奥にあったのが、壊れた動力炉と思われる物体だった。


「これは……古代文明のエンジンか発動用動力炉みたいなものなのか?」

「うーむ、残念だが、我にはこれが何なのか分かりかねるのだ」

「ワタシ達もこんな物見た事ありませんわ。お力になれず申し訳ございませんわ」


 残念だが、今ここにいる面々では、この物体が何で出来ていて、何のために使われていた物なのかは分からない。

 憶測だけでこれが動力炉と決めつけて修理しようとしても、材料も分からなければ、修理方法も分からない。

 下手に素人修理で直しても、コレが動かなければまったく意味が無い。


 これはやはり専門家に直してもらうのが一番良いかもしれないな。

 だが、ここに人を呼ぶのは難しい、どう考えてもあの渓谷の中に来るには空を飛べる必要があるからだ。

 だが、今はそんな事をして往復している時間は無い、世界はあのナカタと大魔王ガーファによってどんどん焼き払われているんだ。


 オレは、以前水の魔王ベクデルの言っていた事を思い出した。

 彼(?)は水さえあれば世界のどこにでも行く事が出来、その場所の事が分かると言っていた。


 それならば、この動力炉の残骸の近くにもし何か水の溜まっている場所があるなら、そこから水の魔王ベクデルを呼び出す事が出来るかもしれない!!


「みんな、頼む。どこかに水の溜まった場所が無いか調べてくれ!」


 オレ達は遺跡の中を調べ、どうにか地下水が溜まる場所を見つけた。

 お世辞にも綺麗な水とは言えない泥水だ。

 だが、それでも水には変わりないだろう、オレは水の魔王ベクデルに問いかけた。


「水の魔王ベクデル様、もしこの声が聞こえていたら、ここに来てくれませんか」


 すると、泥水の中から泡が湧き出て来て、その中から水の魔王ベクデルが姿を見せた。


「うへぇっ、ペッペッペッ……何なのよ、この汚い水は!?」

「ベクデル様、すみません。ここにあるこの水しかなかったので、ここに来てもらいました」

「まあいいわ、ツバやオシッコから呼び出されるよりはマシだから」


 いや、流石にいくら水分でも唾液やおしっこからは呼び出そうとは思わないだろう……。


「それで、アタシを呼んだのはどういった用かしら?」

「ベクデル様、あなたの力でここに人を呼んでほしいんです、お願いできますか?」

「そうね、コバヤシちゃんの頼みならきいてあげるわ。それで、誰を連れてこればいいの?

「オレも一緒に向こうに行きます、それから誰を連れてくるか言いますから」

「わかったわ、その前にここにきれいな水場を作らせてもらうわ、この汚い水だけじゃアタシの気持ちが持たないから」


 そう言って水の魔王ベクデルは、遺跡の一角に綺麗な水の溜まった場所を用意した。

 どうやらここに転送魔法を使う為のようだ。


「コバヤシちゃん、それじゃあいくわね!」

「はいっ、よろしくお願いします」


 オレはベクデルの要望で彼(?)の腰に手を回して一緒に瞬間移動でウユニに戻った。


「コバヤシさん、どうされたんですか?」


 オレがいきなり水の魔王ベクデルと一緒に現れた事で、そこにいた人達が驚いていた。

 だがそんな事を言っている場合じゃない、オレは魔技師のスチーブンソンさん、デービーさん、ディーゼルさん、ファラデーさんと、考古学者のスイフト博士、それにイツマの棟梁に一緒に来てもらう事にした。


 この人選は、ここにいる人達の中では最もベストともいえる人達だろう。

 いや、むしろこの人達以外ではあの古代の動力炉は修復できないかもしれないくらいだ。


 オレは水の魔王ベクデルの力で、彼等全員を遺跡の動力炉の残骸の前に呼び、修理の必要な実態を見てもらった。


「これは! かなり修理が必要みたいだが、もし材料があれば修復は可能そうだ」

「ど、動力炉のパーツは、オ、オリハルコンと、ア、アダマンタイトが、メ、メインに使われているようだ」

「このパーツは、文献に乗っていた物と同じです、これなら修理方法さえわかれば起動させる事が出来そうです」

「儂は詳しくはわからん、じゃが、設計図なり何なりがあれば、その通りの形をそっくり再現するくらいなら問題ないわい」

「これが大型の発電機みたいな物なら、システムは複雑ですが原理は変わらないはずですね」


 これぞまさに夢の技術者オールスターともいえる。

 彼等は足りないパーツをその辺りの残骸から修復し、みるみるうちに古代の動力炉を修理した。

 最初はただの残骸にすぎなかった動力炉は、古代文明のオーバーテクノロジーで作られた技術の粋を集めて作られた最高の工芸品ともいえるレベルに修復され、そしてついに完全修復が完了した。


「やった、これが古代文明の動力炉だ!」

「まさか生きているうちにこんな凄い機械を修理できるとは、魔技師冥利に尽きるわい」

「だが喜んでいる場合じゃない、コレが本当に起動するかどうかを確かめなければ」

「その通りじゃ、道具は動かしてみんと」


 四人の魔技師とイツマの棟梁のおかげで、壊れた魔力増幅装置と動力炉はみるみるうちに修理されていった。

 多分ここにいる誰が欠けてもこの修理は完全には行えなかっただろう。

 そう、ここにいる魔技師や技術者は誰もがその道のスペシャリストと言える。


 まあオレも建築や建設ではかなりの経験者と言えるが、こういった動力とかはやはり専門家でないと何がどのシステムに連結しているか分からないので、オレは全体の監督しか出来ないんだけどな。


 モッカやカシマールは水の魔王ベクデルの力で瞬間移動し、足りないパーツや材料を遺跡の外から届ける役目を引き受けてくれている。

 大きなパーツや細かい多いパーツの運搬は、彼女達の使役する浮遊霊や魔獣が引き受けてくれたのでスムーズに作業は進んでいる。


 おかげで修理は数日で完了した。

 思ったより時間がかかってしまったが、それでも何も出来なかった時よりはよほどマシだ。

 このまま何も出来ないままだと世界はあのナカタと大魔王ガーファによって滅茶苦茶に破壊されてしまう。


 だから何が何でもこの古代都市を浮遊させ、全員が助かるようにしなくてはいけないんだ!


 そして、修理の完了した古代都市の動力炉を動かす時が来た。


「起動スイッチはコバヤシさんがやって下さい」

「え? オレですか??」

「はい、ここにいる誰もがコバヤシさんを頼りにしているんです。これはみんなの総意です」


 い、いや、そんな責任重大な事を言われても……。

 まあ、仕方ないか、乗り掛かった船だ。


「わかりました。では、オレがやってみます」

「た、頼んだぞ。コ、コバヤシ」

「お願いします、コバヤシさん」

「お前さんなら出来る、儂が見ておるからな」


 オレはみんなの期待を背に受け、古代都市を起動させる動力炉のスイッチを入れ、レバーを最大まで回した。


 ……だが、動力炉はウンともスンとも言わない。

 まさか! 失敗なのか!?


「くそっ、どうなってるんだ!!」

「ねえ、コバヤシちゃん。ひょっとして、魔力量が足りないんじゃないのかしら?」

「え? ベクデル様、それって……」

「確か以前もあったわよね、アンタがネクステラちゃんに力を貸してもらった事覚えてないかしら?」


 そうか、確かにそうだ。

 以前、大型水路の海水組み上げ用の巨大アルキメディアンスクリューポンプを作動させようとした時、発電機の電力が足りなかったのが雷の魔王ネクステラに力を貸してもらうきっかけになったんだ。


 どうやらこの動力炉を動かすには、膨大な魔力による起動が必要らしい。

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