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第121話 渓谷の……側面の穴??

 ここが浮遊都市のメイン部分だとしたら、ウユニの遺跡はそれに関する施設で間違いがなかったという事か。

 考古学者のスイフト・オニール博士に聞けば詳しい事も分かるだろうが、当時の話を聞く上では残留思念や魂と会話の出来るネクロマンサーのカシマールの方がよほど確実だろう。


 そして彼女はこの浮遊都市の工場部分の遺跡にいた責任者らしい司令官の魂と会話を続けている。

 どうやらまだオレ達に伝えなければいけない事が残っているようだ。


「お兄さん、この人が言うには、浮遊都市を動かすには膨大な魔力が必要だという話なのだ。

そしてその動力になっていたのがこの世界で今使われている魔鉱石と呼ばれている物だったそうなのだ」


 そうだったのか、それだと以前オレ達が立ち寄ったトミスモ鉱山は、その浮遊都市を稼働させる魔鉱石を蓄積する為に人工的に作られた貯蔵庫だった可能性があるな。


 これで世界の謎の一部が解けたのかもしれないが、だが、今からあのトミスモ鉱山に向かって魔鉱石を集めてくるのは危険行為そのものだと言える。

 それに下手すれば、折角集めた魔鉱石をナカタや大魔王ガーファに奪われたら今度こそオシマイだ。


 だからその選択肢は使えないとして、どうにかしてこの浮遊都市を動かす方法が無いか、オレはそれをカシマールに聞いてもらう事にした。


「わかったのだ、この浮遊都市を動かす魔鉱石以外の方法が何か無いか聞いてみるのだ」


 そしてカシマールが聞き出してくれた話で分かったのは、廃棄された魔力増幅炉がボリディア元男爵の屋敷の近くの渓谷にあるといった話だった。


 そうか、あそこはオレ達が吊り橋を作った場所か、まさかあんな場所の渓谷の下に魔力増幅炉があったなんて……。


 そうか、魔力増幅炉がそこにあるから、この浮遊都市を浮上させる事が出来たと考えると納得だ。

 これだけ分かれば後は地上に戻ってから行動した方が良さそうだな。


「わかった、カシマール。もう時間が無いからいったん外に出よう。これから先の事は外にいるみんなと考えた方が良い」

「ちょっと待ってほしいのだ、ここのお爺さんが椅子の後ろを調べろと言ってくれているのだ」

「椅子の後ろ?」


 オレはカシマールに言われたように、椅子の後ろを調べてみた。

 すると、そこにあったのは何かのプレートのような物と、石だった。

 これを持って行けと言う事は、何かに使えと言う事なのだろうか?


「とりあえずこれを持っていこう、もう時間が無いんだ」

「わかったのだ、お爺さん……さようならなのだ」


 カシマールがお辞儀をすると、先程まで起動していたこの古代遺跡の動力が全て落ちたようだ。

 どうやらここの魂もカシマールに伝える事を全部伝える事が出来たらしいな。


「コバヤシ、カシマール、我に掴まれ。一気にここを脱出するぞ!」


 空の魔王ヴォーイングは大きな翼を広げ、以前コンゴウが地上まで焼き砕いたビームの跡から外にオレ達を連れ出してくれた。


「コバヤシさんだ、戻って来たんだ!」

「おお、コバヤシ、待っていたのである」

「コバヤシちゃん、ねえ、それで……何かわかったのかしら?」


 オレ達はこの地下にあった古代遺跡で何を見つけたのかをみんなに話した。

 そして考古学者のスイフト・オニール博士はその話を聞き、オレに何かを手渡してくれた。


「コバヤシ様、これはわたしが古くからの研究と発掘の末見つけ出した古代のパーツです。きっと何かの役に立つので、どうぞお持ちください」

「スイフトさん、ありがとうございます!」


 オレは全員に今からボリディア元男爵の屋敷の近くの渓谷に向かう事を伝えた。

 そして空を飛ぶ事の出来るファイアドラゴン、空の魔王ヴォーイング、ジャルとアナの二人がオレと一緒に来てくれる事になった。


「こばやしっ、こんどはモッカもついていくっ」

「お兄さん、ボクもついていくのだ」

「コバヤシ、ここの守りは私が責任をもって引き受けるのである」

「コバヤシ様、どうかご無事で……」


 モッカとカシマールはファイアドラゴンに乗りオレと共に渓谷に向かう事になった。

 そしてフォルンマイヤーさんとパナマさんはここに残って避難民の事を見てくれるらしい。


 ところでボリディア元男爵はまだ領地にいるようだ。

 彼はまだこの世界でナカタが大魔王ガーファと大暴れしている事を知らないのだろうか、それとも知った上で領民達を守る為に残っているのだろうか。


 オレはモッカ、カシマールをファイアドラゴンに乗せ、空の魔王ヴォーイングとジャルとアナと一緒にボリディア元男爵の屋敷を目指して飛び立った。


 数時間後、屋敷に到着したオレ達は屋敷から火が上がっているのを見てしまった。


「みんな、あっちに行ってくれ!!」


 なんだか嫌な予感がする。

 オレ達が到着すると、そこには火の海になった屋敷があった。


 ナカタの奴、オレが手掛けたもの全てを破壊する為にわざわざあの吊り橋を落とす目的でここまで来たってのか、どこまで執念深い奴なんだ。

 そうなると、シャウッドの森やイツマの棟梁の居た町が燃やされたのも、全部オレの手掛けた建築物、建造物を破壊する為だったって事だな。


 アイツ、なぜそこまでオレを恨んでいるんだ?

 オレアイツに対して何も出し抜いたとか嫌がらせをしたワケでも無いのに。

 まあ奴隷貿易を邪魔したのと、ダイワ王のプレゼンでアイツに勝ったってのは有るが、それはあくまでも成り行きの話で意図的な悪意で動いたワケじゃない。


 まあ今はそんな事を考えている場合じゃない。

 それよりも早く、ボリディア元男爵達を助け出さないと!


 幸い火はまだそんなに燃え広がった状態ではなかった。

 だから二階とかの逃げ遅れた人は、空を飛べる魔族のジャルやアナが助け、燃え盛る火の中はファイアドラゴンが踏み砕いて道を作ってくれたので全員が無事に外に出る事が出来た。


 死者がいるかどうかは、ネクロマンサーのカシマールが確認してくれたが、どうやら負傷者はいても死者が出る前に全員救出できたようだ。


「コバヤシ様、本当に助かりました。しかし、なぜ我々が助けを呼んだわけでも無いのにこんな場所に来られたのですか?」

「ボリディア様、実はオレ達はこの先にある渓谷に用があってここに来たんです」

「ここの渓谷ですか? はて、何故そんな何も無い場所に?」


 ボリディア元男爵にすれば、ここの渓谷のはるか下の方に古代都市の魔法増幅炉があるなんて知っているワケないよな。


 オレはこの地下に古代都市に関する遺跡が存在する事を伝え、そこに行く為にここに来たと言った。


「なんと、この場所にそのような場所があったとは、まったく存じ上げませんでした」


 まあそりゃそうだろう、古代文明の文献でもそこまで詳しく書かれていないだろうし、こんな渓谷の下となると何があるのかを知っている人自体いるワケない。


 オレ達はファイアドラゴンに乗せてもらい、空の魔王ヴォーイング、その娘のジャルとアナと一緒に渓谷の下の方に向かっていった。

 渓谷は切り立った壁のようになっていて、ところどころ巨大な模様が見える。


 そう、それこそまるで巨大な宇宙船か何かの壁面のような形だ。


 そしてオレ達は、壁面に空いた穴を見つけ、その中に入った。

 壁の中の穴は、ウユニの遺跡で見た遺跡と同じ造りをしている。


 どうやら本当にここは古代文明の遺跡だったようだ。


 そして、オレ達は、奥の方に行き、ついにとんでもない物を見つけてしまった!!


「こ、これは!!」

「す、凄いのだ……」

「こばやしっ、これ……なんなのっ」


 オレ達が古代文明の遺跡の奥で見つけたのは、壊れた動力炉と思われる物だった。

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