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第115話 魔王達の……協力??

 とにかく今は空爆された場所の被害を確かめない事には。


「ダイワ王、すみませんがオレはその空爆された現場というのを確かめたいんです。ここを離れて大丈夫でしょうか」

「待て、コバヤシ」


 オレを引き留めたのは空の魔王ヴォーイングだった。


「どうやら、本当に人間と魔族の間での戦争を企む者がいるようだな、我はそれに踊らされたというのが気に入らん。そこでだ、お前達にジャルとアナを貸してやる。二人の力を使えばすぐにその空爆された場所にたどり着けるだろう」


 なんと、空の魔王ヴォーイングはオレに協力してくれるというみたいだ。


「でも、何故……」

「我がそう思ったからだ。お前は我の領地の村を建て直した、それも誰かに頼まれたわけでなく、自ら率先してだ。だから我は誰かに頼まれたからではなく、我の思いでコバヤシに手を貸そうとしている」


 そうか、この空の魔王ヴォーイングは、恩には恩を、仇には仇をといったタイプの性格なんだろうな。


「ありがとうございます!」

「コバヤシよ、余も軍を出して救援に向かわせる、フォルンマイヤー騎士団長、良いな!」

「はいっ、勿論であります! このファンタ―ジェン・フォルンマイヤー。空爆された場所に向かい、救援活動に取り組みます!」


 本来ならコンゴウ、それに他のゴーレムに協力してもらいたいところだが、彼等は今ここから遠く離れた空港にいる。

 今すぐにここに来てもらうにしても時間がかかってしまう。


 さあ、どうすればいいのか。


「あら、困ってるみたいね。アタシが力を貸してあげようかしら」

「アナタは……ベクデル様!」

「はぁーい、それじゃあみんなここに連れてこればいいのかしらね」


 え? オレが躊躇している間に、城の中庭の池が凄い事になっていた!


「出、出たー! 巨大ゴーレムだぁぁ!!」


 オイオイオイ、いくら何でも無茶やりすぎだろ。

 だが、水の魔王ベクデルのおかげで空港にいたはずのカシマールやコンゴウ達が水浸しで巨大水路に出現した。


「アタシの力は水さえあればどこにでも行けるのよね、だからコバヤシが困っているみたいだったからアンタの仲間をここに呼んであげたってワケ」

「ベクデル、貴様はいつも水を差す行動ばかりするようだな」

「あら、ヴォーイングちゃん、どうしたのかしら。そんなに怖い顔して」


 水の魔王と空の魔王、二人が顔を合わせて何かを話している。


「今から我がコバヤシにジャルとアナを貸し、空から移動しようとしておったのだ。ソレを貴様というヤツは……」

「あらあら、今は空からとか水の中からとか方法を選んでいる場合じゃないじゃないのかしら。このままでは非常ーに良くない事になってしまうわ」


 確かに、飄々とした言い方だが、水の魔王ベクデルの言う通りだ

 空爆された場所では今も救助を待っている人達がたくさんいる。


「お願いです、お二人共、是非お力を貸してください、みんなの危機なんです」

「わかったわよ、そんなに大きな声で言わなくても最初からそのつもりよ」

「我も先ほど言った通り、コバヤシの恩に報いる為にも力を貸そう」


 世界最強レベルの魔王二人が、オレに力を貸してくれると言ってくれている。

 これなら空爆の被害を食い止めるのもそんなに難しくはなさそうだ。


 オレ達は水の魔王ベクデルの力で被害のあったダムに向かった。

 フォルンマイヤーさんは空の魔王ヴォーイングと一緒にアンディ王子の離宮のあった場所に向かってくれたようだ。


 オレ達がダムに到着すると、空爆の被害はまだそれほど出ていなかったが、ダム全体にひびが入り、このままでは水が氾濫して未曽有の大災害になるところだった。


 どうやら村の生き残りの人達はまだダムが決壊前だったので今のうちに避難して無事だったようだ。

 だが、このままではダムが崩壊してこの辺りは人が住めなくなってしまう!


 くそっ、オレ達のやった事は空爆で破壊される程度の事だったのかよ……。


 悔しそうなオレを見ていた水の魔王ベクデルは、空中に舞い上がり、結界寸前のダムを見下ろした。


「ねえ、コバヤシ。この水、どこに動かせばいいと思う?」

「どこでもいいからそれを動かせるなら動かしてくれ、お礼なら何でもする!」

「あらあら、まあいいわ。そうね、この水を動かすのに一番いい場所があるからそこにしようかしらね」


 水の魔王ベクデルが魔法を使い、ダムの下の川に何かを仕掛けたようだ。


「さあ、これでこの水がどうなるかしらね!」


 オレが見ている目の前で、ダムは決壊……水が一気に下に押し寄せた……はずだった。


「え? どうなっているんだ??」

 決壊した水は下に流れず、何かの水の上の魔法陣の中に吸い込まれ、どこかに消えていた。


「え? ええええ??」

「あら、驚いているみたいね。この水がどこに行ったと思う?」

「わ……わかりません」


 水の魔王ベクデルが意地悪そうに笑いながらオレに説明してくれた。


「この水はね、アンタの頑張って作った水路の上の湖に流れ込むようになったのよね」


 な、何だってぇー!?


 一時的なものとはいえ、流石は水の魔王。

 水の魔王ベクデルの行ったのは、決壊したダムの水を魔方陣でここから遠く離れたパナマさんの領地の閘門式水路の上の大きな湖に流し込むようにした事だった。


 確かに、あそこなら大量の水が流れ込んでも下に流れていくだけなので大きな被害が出ない。

 それでいてここのダムが決壊しても何の大きな被害も無さそうだ。


 助かった、もし水の魔王ベクデルがオレに協力してくれてなかったら、このダムの近くの村は完全に壊滅し、ダムももう再建不可能なくらいになっていたかもしれない。


 よし、とりあえずこれでダムの件は片付いた。

 次はフォルンマイヤーさん達の向かった離宮に行ってみよう。


 しかし、ナカタの奴……そこまでオレに負けたのが悔しかったのか。

 アイツはどうやらオレの造った建造物を狙い撃ちで空爆しているようだな。


「ベクデルさん、オレを離宮に送ってくれませんか」

「あら、アンタが自分から願い事を言うなんて珍しいわね、まあいいわ。少し待ってなさい」


 水の魔王ベクデルは巨大な水の球を作り、オレはその中に入れられた。

 そして、その後一瞬でオレ達はアンディ王子の住む離宮に到着した。


「ここは……そうか、来れたんだ」

「アタシ、少し疲れたから休んでるからね。後はアンタ達でどうにかしなさいよ」


 そう言うと水の魔王ベクデルは水の中に姿を消した。


「コバヤシ、よく来てくれたのである。今からこの離宮の中を確認するところなのである」


 オレ達が到着した離宮はあちこちの壁が壊され、屋根にも穴が開いていた。

 だがどうやらここで負傷者は出たものの、死者は出ていないようだ。


「コバヤシ様、お待ちしていました。アンディ王子がお待ちしております」


 オレ達は焼け残ったアンディ王子の住む塔に向かい、王子と会話する事が出来た。


「コバヤシ様、待っていました。是非お話ししたい事がございます」

「アンディ王子、お久しぶりです。お話ししたい事とはいったい何でしょうか」

「実は、僕には内密に調べていた事がありまして、それで分かった事を是非ともコバヤシ様にお伝えしたいと思っていたのです」


 まさか、ここが空爆された理由って、単にオレの功績を破壊したいというだけではなく、何か都合の悪い事を知ったアンディ王子を亡き者にしようという計画だったのか!


 アンディ王子がオレ達に話してくれた内容は、ナカタに関する事だった。


「どうやらあのナカタという男、エシエス帝国とかなり深い関係があるみたいなんです。コバヤシ様はエシエス帝国とはご存じですか」

「いいえ、名前くらいしか聞いた事ありません」


 アンディ王子は部下に命じて調べさせていたエシエス帝国とナカタに関する事をオレ達に伝えてくれた。

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