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第43話 これが……コンゴウ??

「面白い、だが……どうやってあの魔王達を退けるのだ? 魔族は物を造ってもいくらでも壊すだけだ。それでもお前は造るというのか?」

「魔王ならもう話はした。ベクデルさんは、今は別に人間と争うつもりは無いと言っている。それにアンタのいるここに案内してくれたのもベクデルさんだ」

「そうか、だが……魔王はベクデルだけではないぞ。水の魔王以外にも魔王は三人いる。お前はその三人に勝てるのか?」


 なんだって!? 魔王はベクデルだけではなかったのか!

 コンゴウのコアが赤く点滅しながら話を続けた。


「魔王が……四人?」

「そうだ、水の魔王ベクデル、雷の魔王ネクステラ、火の魔王エクソン、そして……空の魔王ヴォーイング。お前はこの四人の魔王に勝てるというのか?」


 なんということだ、この世界に魔王が四人もいるなんて……あの神様そんな事一言も話してくれなかったぞ。


 つまり、コンゴウは一体でそれらの魔王を退けてきたというのか……。


「どうした? 怖気づいたか、それなら帰るが良い。所詮我の力を使いこなせる者なぞこの世界には存在せんのだ」

「そんな事は無い!!」


 オレは思わず啖呵を切ってしまった。


「確かに四人の魔王の事は、オレは知らなかった。だが、ベクデルみたいに話せばわかってくれる相手なら、オレはオレの出来る事で戦いを阻止してやる!」

「ほう、戦いを阻止する……か、一体お前に何が出来るというのだ?」

「造る事だっっ!!」


 オレは自身ありげにコンゴウに叫んだ。


「造る……事だと?」

「そうだ、いくら潰されても壊されても、何度でも何度でも造ってやる。それがオレの戦いだ!」


 前の世界でオレが育った日本は災害大国だ。

 地震雷火事親父、日本は日常茶飯事で年中災害に襲われていた。

 なお……親父とは悪徳政治家の事ではなく、台風の古語から来ているのは豆知識だけどな。


 つまり、日本は先人が昔から小さな島国の中で幾多もの災害を乗り越えて来た、さらには戦後の焼け野原からでも復興できたんだ。

 先人がやって来た事がオレにできないワケがない!


 それに、オレはこの世界で希少なゴーレムマスターの上、現代日本の建築、建設技術を持っている。

 だからいくら魔王によってオレの建てた物が潰されても、いくらでも造り直してやる。

 材料さえあれば、後は人手さえ用意出来ればいくらでも可能だ!


「ほう、壊されてもその度に何度でも造り直すか。もし古の民にその気概があれば、彼らも滅びずに済んだだろうな……」


 コンゴウの態度が変わってきた。

 どうやらオレが言っていることがハッタリではなく本心からだと伝わったのだろう。


「良いだろう、それではお前に聞く。この我、コンゴウの力、お前ならどう使えるというのか? それを教えてもらおう」

「アンタの身体はここに来る前に見た、あれだけの巨体なら掘削でも建築でも土木でも何でもこなせる。いや、アンタでなければオレの理想は実現できないんだ!」

「お前の……理想だと?」

「そうだ、オレは歴史に残るような巨大な建造物を作りたいんだ! アンタが力を貸してくれるならそれが可能になる。そしてそれは多くの人達を助ける力となるんだよ!!」


 オレは心に思っていた事を全てコンゴウに向かって洗いざらいぶちまけた。


「こばやし、モッカもそのこばやしのゆめ、てつだうっ」

「お兄さん、ここにいる魂達もコンゴウの事を頼むって言っているのだ……」


 そして、コンゴウのコアの色が警戒色をイメージする赤から緑色に変わった。


「そうか、破壊の為に作られ、魔族と戦う事が生きる意味だった我に、人の為になる物を造れというのか。そんな事を言う者達は今まで一人とて、いやしなかった……」


 コンゴウのコアは青く光り、淡い光で点滅を始めた。


「いつ以来だろうな、我の力を求められるのは……かつて我が戦う事で古の民は平和を維持していた。だが、いつしか彼等は魔王の脅威が去った後、人間同士で争いを始めたのだ」


 コンゴウのコアが再び真っ赤に点灯した。


「我は戦う為に作られた人工的に作られた存在、そして、それをコントロールされた我は何度も操られ、共に過ごした仲間を焼く事となった。コアを手にした者によって我は自我無き破壊の巨人と化したのだ。我を使役した者、それは、ゴーレムマスターと呼ばれた者達だった」


 そうか、ゴーレムマスターのスキルは本来死者の魂ではなく、疑似生体エネルギーを元にして動かすモノだったのか。

 それが今は疑似生体エネルギーを生み出す古代文明が滅び、疑似生体エネルギーに似た人間の魂を核として動かす力になったというワケだ。


「でももうその文明は滅びたんだろう、もうアンタを悪用する者は誰もいない。だから、落ち着いて話を聞いてくれ!」


 オレの呼びかけにコンゴウのコアは黄色から緑色になった。

 どうやら少しは冷静になったようだ。


「そうか、そうだな。もう我を使役する者達は皆滅びたのだな。だが、今のこの時代になって我を操れる者が姿を現すとは……良いだろう、お前の心にウソは無さそうだ。我の力をお前に託そう……」


 そう言うとコンゴウのコアは点滅を止め、ただの金属の丸い球に戻った。

 透明の筒からそのコアを取り出したオレは、それを持ってあのコンゴウの巨体のある場所に運ぶ事にした。


 どうやらこのコアがあってようやくコンゴウが動くのだろう。

 オレ達は古代の遺跡を元来た道に戻り、コンゴウの巨体の前に立った。


 しかし、どうやればこのコアをあの巨体にしまう事が出来るのだろうか?


 もし鳥系モンスターが使えるとしても、ここは遺跡の奥深くでモッカもそんなところまで魔獣を呼ぶ事はできない。


 オレがあのコンゴウの巨体によじ登ろうとしても、長いロープも無ければ梯子も無い。

 また、鏡面のようにツルツルの黄金の機体は手をかける場所すらなく、よじ登るのも不可能だ。


 さあ、どうすればこのコアをコンゴウの身体にしまう事が出来るんだ??


「お兄さん、ボクに任せるのだ……」


 そう言うと、カシマールは何かの呪文を唱え、空中にコンゴウのコアを放り出した。


「な、何をするんだ!!」

「お兄さん、黙って見ているのだ……」


 なんと、空中に放り投げたはずのコンゴウのコアは、プカプカと空中に浮いていた。


「あの子がきちんとしまってくれるのだ、あの子はコンゴウの仲間だったのだ」


 なるほど、古代人の幽霊がカシマールに力を貸してくれたのか。

 それで空中にコンゴウのコアが浮いた状態になっていたというなら、納得だ。


「それをその中にしまうのだ、そしてその後にそのレバーを回すのだ」


 ギュルルルルルルッッ!! グォォォォォオオオン!!


 まるで地の底から響くような音が辺りに響いた。

 そして、今まで沈黙したままだったはずのコンゴウの巨体が、金色に光り出した。


 まさか、コレは黄金なんかじゃなくて……伝説の金属オリハルコンなのか!?


「グォオオオオオオオオオオオオーーーンッ!!」


 辺りにコンゴウの雄たけびが響き渡る!

 そして、数千年、いや下手すれば数万年前の伝説の黄金巨人はゆっくりとその巨体を起こし、遺跡がガラガラと崩れ出した。


「あ、危ない!!」


 オレ達は堕ちてくる遺跡の巨大な瓦礫に押しつぶされそうになった。

 だが、その時、コンゴウが巨大な腕を振り、その瓦礫を跳ねのけた。


「す、凄い……」

「で、でっかいのだ……」

「お兄さん、ついに……動き出したのだ」


 伝説のゴーレム、コンゴウはオレの指示に従い、動き出した。


「さあ、コンゴウ、この遺跡を出るんだ!」


 コンゴウの目が緑色に光る。

 どうやら緑は肯定、赤は否定のようだな。


「リョウカイ……マスター!」


 コンゴウはオレ達を手のひらの上に乗せ、遺跡の天井に向けて特大のビームを放った。

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