ウユニの遺跡の奥深くに眠っていたのは超巨大なゴーレム、コンゴウだった。
そのデカさは間違いなく身長57メートル、体重550トン以上はあるだろう。
……って、このフレーズ何のネタだ?? 昔見たロボアニメの何かだとは思うが。
コンゴウは何一つ動こうとしない。
上の方にあった遺跡のキルトラップは侵入者を殺す気満々の激しいものだったが、いざ一番最奥部のコンゴウが眠る場所には罠一つ存在しないようだ。
いや、罠どころか迎撃システムの一つすらない。
これはコンゴウを持ち出されない自信がある為だろうか。
まああんなデカい物体、常人どころか魔獣を使っても持ち出す事は出来ないだろう。
しかし……オレなら動かす事は出来るはずだ、何故ならオレはゴーレムマスターのスキル持ちだから!
「コンゴウ、オレの指示に従え! さあ、起きるんだ!」
「…………」
だが、コンゴウは微動だにしなかった。
これ……ひょっとして死んでいるのか?
まさかそんなワケはないよな、ただのエネルギー切れかもしれない。
オレ達はコンゴウの周りを調べてみる事にした。
だが、ケーブルらしいモノも無ければ、動力ユニットすら見当たらない。
一体コンゴウは何で動いているのだろうか?
そもそも、コンゴウは動くのか? オレは不安になってきた。
ひょっとして、伝説は伝説なだけで……コンゴウはエネルギーが切れてもう二度と動かない、ロボアニメでいうとこの最終決戦が終わった後みたいになっているのか。
もしそうだとしたら、オレは何のためにこんなとこまで来たことになるんだ。
あーあ、これじゃあ無駄足だよ。
それに、このままだと結局オレはいつ暴走や呪いに振り回されるかわからない死者の魂を使ったゴーレムであのナカタと対決するしかないって事か……。
まあ以前に比べてゴーレムマスターのスキルはレベルアップしているのか、様々なタイプのゴーレムを作れるようになってきたが、それでも魂を固定して一つのゴーレムとして使役するのはかなり俺の精神力が必要みたいだ。
オレもカシマールが教えてくれるので、ゴーレムに適した魂とかを見分ける事は出来るようになったが、もしそうでなければ知らないうちに凶悪殺人犯でもゴーレムにしてしまうと暴走して大惨事が起きてしまうからな。
そういう点でも伝説のゴーレムであるコンゴウが動かせればオレはもっと大体的な仕事が出来たんだけどな。
やはり伝説は伝説でしかないのか、ここは諦めて戻るしかないのかな。
オレがそう考え、諦めかけた時、カシマールがオレの袖を引っ張った。
「お兄さん、ここに眠っている誰かがいるのだ」
「何だって? カシマール、それはどこなんだ」
「あっちの方なのだ、もっと奥、この中なのだ」
オレはカシマールの指差す方に向かった。
すると、見えない壁の向こうには、何かが別保存されているようだった。
この先に何があるのだろうか、ひょっとしたら……コンゴウのコアともいえるパーツは本体とは別の場所に保存されているのかもしれない。
オレは遺跡のさらに奥の隠された道を進んだ。
すると、古代的な遺跡だったはずの場所は、まるで近未来の宇宙ステーションのような金属質なパーツで作られた場所に通じていた。
まさか、これが本当の古代文明の遺跡の正体だというのか……。
オレは古代文明の秘密基地、いや……シェルターともいえる建造物のあまりの出来栄えに仰天していた。
継ぎ目一つない金属で作られた壁、地底深いはずなのにその場所に行くと光る照明。
そして、自動式のドアや古代に作られたと思われる透明なエレベーター。
さらにオレが驚いたのは、踏むと別の場所に移動出来る転送システムだった。
それらのどれもがオレの住んでいた時代よりも数世紀は先に作られたのではないのかという程のオーバーテクノロジーだった。
間違いない、コンゴウは古代文明のオーバーテクノロジーで作られた戦闘用ロボットだ。
そして、このオーバーテクノロジーを誇っていたはずの古代文明は、歴史の闇に消え去ったのだろう。
この古代文明が滅びた理由はわからない。
カシマールに聞けばその理由を知る事は出来るだろうけど、今はそれをわざわざ聞くような場合でもないな。
それよりも、この奥にコンゴウのコアがあるのなら、それを見つけ出さないと。
オレはカシマールの指差す方に向かって歩いた。すると、そこには半透明のカプセルの中に丸い物が浮かんでいた。
ひょっとして、あれがコンゴウのコアなのか!?
色の無かったコアが、オレンジ色にぼんやりと点灯し、話しかけて来た。
「誰だ……我の眠りを……妨げる者は……」
地の底に響くような声、これはどうやらあの丸いパーツが光るたびに発せられているようだ。
「お前は……コンゴウなのか!?」
「質問に質問で返すとは、無礼な奴だな……少し痛い目を見てもらおうか!」
丸いパーツが赤く光り、レーザーが放たれた!
危ないっ、オレは思わずソルトゴーレムを盾代わりにしてレーザーを免れた。
辺りに焦げ臭いにおいが漂う。
どうやら高圧のレーザーはソルトゴーレムを一瞬で黒焦げにしてしまったようだ。
何という破壊力だ、これが伝説の巨人コンゴウの力なのか。
「悪かった、オレは
「そうか、お前は我の敵ではない……というのだな」
コンゴウのコアはオレが質問に答えたので攻撃を止めてくれた。
「それで、コバヤシとやら。お前は何のためにここに来た? 我の力が必要になったというのか?」
「そうだ、オレはコンゴウ、アンタの力が必要なんだ」
「そうか、だが……断る。我はもう誰の力にもならぬ。ここで、古の仲間と共に眠るだけだ」
コンゴウはオレの願いを拒否し、ここで眠り続ける事を選んだ。
そして冷静さを取り戻したコンゴウのコアは緑色に点灯した。
「さあ、帰れ。素直に帰るなら帰りの転送装置まで誘導してやろう」
「オレは、ここで帰るわけにはいかない、どうしてもアンタの力が必要なんだよ」
「愚かな、人類はまだ戦いを欲するのか。世界中をあれだけの焦土にしておきながら、まだ戦いを求めるとは……」
コンゴウは昔話を始めた。
「我の名はコンゴウ、古の民に作られた最強の戦闘巨人だ。我は古代の民を守る為、魔族の軍団と戦った。魔族と古代の民の戦いは長きにわたり続き、古代の民は空飛ぶ船、光と火を噴く筒、雷を呼ぶ塔などを使い、魔族の大群といつ知れぬ戦いを繰り広げた」
「やはり、アンタが魔族と戦った伝説の巨人だったのか」
コンゴウは古代の人類を守る為、戦ったと言っていた。
つまり、コンゴウは戦うために生まれた存在だと自ら言っているようなものなのだろう。
だが、コンゴウの話し方は、もう戦いはうんざりといったような話し方だった。
それなら、オレの話を聞いたら少しは考え方が変わるかもしれない。
オレはコンゴウを戦わせるつもりなんてまるで無いんだ。
むしろ、コンゴウには戦って破壊する力よりも、その巨体を生かした力で多くの人の助けになるように動いてほしい。
この事をコンゴウに伝えれば何か考え方が変わるかもしれない、
「そうじゃない、オレは戦うつもりなんてない!」
オレの返答に、コンゴウは何か疑問を感じたようだ、これは脈があるかもしれない。
「戦わない、だと……?」
「そうだ、オレは戦う為にコンゴウを必要としているのではないんだ、オレの話を聞いてくれないか」
「良いだろう、このコンゴウの力、戦う以外に何が出来るというのだ? 我はかつて破壊の巨人と呼ばれた存在だ。その我にお前は何を求めるというのか」
オレはコンゴウに破壊以外の力の使い方を説明した。
「オレがコンゴウを捜していたのは、新たな建造物を作る為なんだ、アンタのその巨体は物を壊すよりも多くの物を作り上げる事が出来るんだよ」
「何? 破壊の巨人と呼ばれた我が物を造るというのか?」
少しした沈黙の後、コンゴウのコアは青く点灯した。
コンゴウはどうやらオレの話に少しは興味を持ってくれたようだ。