ウユニに到着したオレ達は。辺りの風景を見て驚愕した。
「な、何だここは!? 鏡どころか一滴の水も無いぞ!」
なんと、オレ達が到着したウユニの湖は、周囲の川の水が枯れ、一滴の水すらないカラカラに乾いた塩の柱と塩の大地が広がる場所だった。
ここが本当に聖地と呼ばれた湖なのか??
オレは、ここがウユニだとはまだ信じられなかった……。
辺り一面に広がるのは、塩の大地と柱だけだった。
本当に、ここが聖地と呼ばれたウユニなのか??
オレは湖底だったと思われる場所を踏みしめた。
白い地面は塩で出来ているようで、踏みしめるたびにサクッサクッと音が聞こえた。
「ピゲェエエエーッ!」
「こばやしっ、このこ、めとはながいたいって、もうかえりたいっていってるっ」
「わかった、もう森に帰してあげてくれ」
モッカが合図をすると、ハシリトカゲが一目散にウユニから走って逃げだした。
どうやらこの塩の匂いと空気で目と鼻が痛くなったのだろう。
オレ達もあまりここに長い事いると、目や鼻にダメージを受けてしまいそうだ。
ここは早く遺跡の入口を見つけないと。
だが、見渡す湖底はどこを見ても真っ白な塩の大地と柱があるだけだった。
ここをいくら探しても遺跡なんて見つかるわけがない、延々と雪かきをするようなもんだ。
「わっっ!!」
オレは思わずつんのめって、前にコケてしまった。
「痛いっ痛いっ! 水っ水―!!」
オレはコケた際に目に塩が入ってしまい、激痛に見舞われてしまった。
「こばやしっ、みずっ、みずっ!!」
「お兄さん、大丈夫なのか? しっかりするのだ……」
モッカとカシマールがコケて目に塩の入ったオレを心配してくれている。
オレはどうにか水を器に入れて目を洗い、塩を洗い流した。
あーひどい目に遭った……。
どうにか落ち着いたオレは、辺り一面を見まわしたが、どこを見ても遺跡の入口は見つからない。
こうなったら奥の手だ。
「出てこい! ゴーレム!!」
これはオレの賭けだった。もしここに誰かの浮遊霊でも漂っていれば、どうにかゴーレムの核を作る事は出来るはず。
それならば無機物でゴーレムは造れるはずだ、今までもオレは土、金属、砂などの無機物を使ってゴーレムを作って来た。
だとすれば、塩も無機物の塩化ナトリウムみたいな物だろうから、ゴーレムの材料になってもおかしくないと考えたワケだ。
「ゾゴゴゴゴォォ!!」
成功だ、ウユニの湖底に積もっていた塩の大地は、十メートル少しの大きさのソルトゴーレムに姿を変えた。
ソルトゴーレムはサンドゴーレムの亜種と考えていいのだろう。
ソルトゴーレムは、サンドゴーレムのように形を自在に変える事が出来るようだ。
オレはソルトゴーレムに指示し、地下への入口が無いかどうかを捜させた。
すると、塩を取り除いたある場所に、地下に入る階段が埋もれているのを見つける事が出来た。
「ゴーレム、その扉を破壊してくれ!」
「ゾゴゴゴゴ……」
ソルトゴーレムは、塩の巨大な柱に姿を変え、一気に扉を貫いた。
すると、ガラガラと音を立て、地下への扉が砕けて階段の先に進めるようになった。
どうやらここが古代遺跡の入口だったみたいだな。
オレ達は、ソルトゴーレムを先端にし、遺跡の中に入った。
流石にモッカの魔獣使いのスキルもこの無人の古代遺跡では使えないだろうと考えた上でのことだ。
古代遺跡の中はこれでもかという程の罠が張り巡らされていた。
上から落ちる天井、下に鋭い棘の刺さった落とし穴、そして正面から飛んでくる矢といった定番のトラップや、謎解きを必要とするトラップだ。
どの罠も侵入者を殺す気満々といったキルトラップばかりで、この遺跡にどれだけ重要なものが有るかを証明している。
これだけの厳重なトラップで守るという事は、それくらい重要な何かをここに保管しているとも言えるくらいだ。
だがこれらの罠は、姿を自由に変化できるソルトゴーレムのおかげで無事掻い潜る事が出来た、落とし穴はゴーレムが先に埋まる事で床のスパイクの上を問題なく歩き、飛んできた矢はゴーレムが盾になって防いでくれた。
この遺跡の罠が水攻めや溶岩のトラップでなかったのが幸いしたと言えるだろう。
もしそのような罠がある遺跡だったら、ゴーレムは溶けて消えてしまっていたかもしれない……。
しかし、ここまでトラップが連続するほどの遺跡って、そうも無いだろう。
まさか、本当にこの地下に黄金の巨人コンゴウが眠っているという事なのか。
オレ達が遺跡の奥に向かうと、また定番の罠ともいえる巨大な丸い岩が転がって来た!
まるでよく昔の冒険ものの映画に出て来たアレだ。
だがその丸い大岩は、ソルトゴーレムの変形した壁によって食い止められ、オレ達は無事にその岩と地面の隙間を這いながら隙間を抜け出る事が出来た。
マジでソルトゴーレム無しでここに来ていたら、命がいくつあっても足りなかっただろうな……。
オレ達はどうにか罠を抜け、下に降りる階段を見つけた。
階段は殺風景で、ただひたすら下に降りるだけの場所だった。
そう、いうならば……まるで造船ドックか、ロボット格納庫に向かうような感覚だろう。
ソルトゴーレムは形を崩したまま、階段を滑り落ちていく。
だが、特に何の異常も見られないという事は、どうやらこの階段には罠は設置されていないようだ。
オレはこの地下にコンゴウが眠っていることを確信した。
どう考えても、これだけ長い階段を下に降りる造りになっているという事は、それだけ大きな物を置く場所が必要となっているからという事だろう。
つまり、この階段をずっと降りて下に行かないと、コンゴウの眠っている場所には到着できないという事だろう。
しかし、これだけ長い階段を下に降りていると、どこが最下層なのかと思う。
階段を降り続け、オレ達はついに遺跡の最下層に到着した。
遺跡の一番底は伽藍洞になっていて、大きく開けた天井が広がっている。
天井はどのような素材で出来ているのかわからないが、柱一つ無いのに屋根がアーチ状に張られていて、天井から落下物一つ落ちてきそうにもない。
――なんという高い建築技術だ!!
まさに、古代文明の結集したような遺跡の建築技術に、オレ達は感動すら覚えていた。
この遺跡が本当にコンゴウを維持、整備する為に作られた場所だとすると、他にも調べれば色々と見つかるかもしれない。
まあ今はそれほど時間に余裕があるわけでも無いので、全部を調べる事は出来ないだろう。
それよりも早くコンゴウを見つけ出さないと。
オレはだだっ広い格納庫のような遺跡の最深部を歩き、何があるのかを調べた。
ドンッ!!
「うわっ!!」
魔鉱石で光るランタンを持ちながら、広い場所を歩いていたオレは、いきなり巨大な壁にぶつかってしまった。
「イテテテ……何だ、なんでこんなところに壁があるんだ!?」
オレは思わず怒りにまかせて足で壁を蹴っ飛ばした。
「かっ硬い!! 何だこれは!?」
オレが蹴とばした壁は、恐ろしいほどに硬く、蹴ったオレの足の方が痛くなってしまった。
「こばやしっ、なんだこれっ」
「何だこれって、ただの壁だろ……って、何だこりゃぁああ!!」
オレがぶつかったのは壁でも柱でもない、何かの巨大な足のようだった。
これは……足!? それは……超巨大なロボットの足のようだった。
まさか、これが……コンゴウ!?
オレが上を見上げると、そこに存在していたのは……全身が硬い金属で作られた古代文明によって作られた超巨大なゴーレム、コンゴウだった。
古代文明の超巨大ゴーレム、コンゴウは、オレ達に反応する事もなく、その場で静かに沈黙しているだけだった。