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第24話 鉱山に……向かえ??

 銀髪のネクロマンサー、カシマールのおかげでオレはようやくゴーレムの中にいた死者の魂の呪いから解放された。


 それから数日、オレは泥のように寝ていたらしい。

 ゴーレムの呪いのせいで抜けなかった睡眠不足からの慢性疲労、これがようやく解消されたからだろう。

 これほどスッキリと起きる事が出来たのは本当に久方ぶりと言えるだろう。

 前の人生の仕事でも一日丸々寝てられる休みの日なんて皆無だったからな。


 あーひどい目に遭った、でも自業自得と言えばそうだよな……。


 オレ自身が過労の末の低体温症で死亡してこの世界に来たってのに、そのオレが死んだ人間の魂に休みも与えずにずっと働かせ続けたわけだからな。

 オレが反対の立場でもブチ切れ確定な案件だ。


 でも今考えたら何であのゴーレム達が鞭に怯えたり、モンスターを怖がったり戦いを嫌がっていたのかの理由がよく分かる。

 戦奴として戦わされた時にその苦しい感情を嫌という程に味わってしまったからなんだな。

 それをオレがゴーレムの核が死者の魂だという事も知らずに便利で力の強いロボットや重機程度に見てこき使っていたわけだ。

 そりゃあ呪いもするわ、オレまるで部下に休みを与えないブラック企業の社長そのものじゃないか。


 しかしどうしよう、オレは異世界ゴーレムカンパニーと名前を付けてここで建築会社をやるはずだったのに、肝心のゴーレムがいなくなってしまった。

 だからって、死者の魂を使ってまでゴーレムを作って、また恨まれて呪いで苦しむのはもう勘弁だ。


 オレは自分が苦しむのも当然嫌だが、他人が苦しむのを見るのも嫌な性格だ、だから無自覚とはいえゴーレムの中の使者の魂を苦しめていたという事で、もう死者の魂を使ってゴーレムを使役するのはしたくない。


 そうなると、やはり現代人の技術でどうにか異世界チートっぽく建築の仕事をするのが良いのかな。

 だが、その程度の稼ぎだと一年後までのあのいけ好かないナカタとの勝負に負けてアイツの社畜として一生こき使われてしまう。

 どうやらアイツはオレがゴーレムを作り出す技術と同じようなスキルで、異世界で重機を作り出す力があるのだろう。


 そうなるとゴーレムのいないオレにはアイツに勝つ方法なんてもう無さそうだ。

 一体どうすれば良いんだ??


 ゴーレムで仕事をすれば、死者の魂をこき使う事になる。

 ゴーレムで仕事をしなければ、ナカタとの勝負に負けて一生社畜として奴隷扱いにされる。


 どちらに転んでもオレの道は真っ暗じゃないか!!

 ここはオレにどうしても他人を苦しめるブラック企業の社長をやれって事なのか……。


「お兄さん、どうしたのだ? 何だか悩みがありそうなのだ」

「こばやし、あまいものたべてげんきだせっ。はちみつがむらからとどいたっ」


 そうか、あの沈下橋を渡る事でオオミツバチのハチミツがこの町でも手に入るようになったんだな。

 ここは甘いものでも食べて少し気分をスッキリさせよう。


 オレはその場にいた全員分のホットケーキをフライパンで作り、オオミツバチのハチミツをたっぷりかけて全員に出してやった。


 モッカ、フォルンマイヤーさん、カシマール、三人ともハチミツたっぷりのホットケーキを見て目が輝いていた、やっぱりみんな甘いものが好きなんだな。


「お兄さん、これとても美味しいのだ。お兄さんは料理の腕もあるのだ」

「こばやし、これとてもあまいっ。うまいっ」

「たまにはこういうのも良いのである」


 さて甘いものを食べて少し脳がスッキリしたところで今後の事を考えよう。

 とにかくもう一か月無い間にどうにか離宮の工事をしないといけない。

 だが、肝心要のゴーレムがいないのでどう工事を進めればいいのかが分からない。


「お兄さん、どうしたのだ? 何か悩み事なら聞くのだ」

「実は……オレのスキルの事で考えていたんだ。オレ、本当にこのスキル使いこなせるのかな……」


 死者の魂を使って動くゴーレム、力は強いが死者の魂を使うという事は死者を冒涜するのと同じで使い続けると呪われてしまう。

 だからと魂の束縛が出来る石が無ければその場ですぐに土くれに還ってしまい、固定して仕事をさせる事が出来ない。

 こんな使い勝手の悪いスキルだったとは、これでどうやって建築、建設をしろというんだ。


 あのゴリマッチョの神、こんな説明受けずにオレを異世界に放り出しやがった。

 最初の時点でこの説明を聞いていたらこんな事にはならなかったのに。


 ホットケーキを食べ終わって少し一息ついていると、カシマールがオレに話しかけてきた。

 どうやら何かオレに伝えたい事があるみたいだな。


「お兄さん、ボク……死者の声が聞こえるのだ。それで、お兄さんに行ってほしい場所があるのだ」

「行ってほしい場所? でも工事の期限まで時間がもう一か月無いんだけど……」

「行くべきなのだ! いや、行かないとお兄さんが困る事になってしまうのだ!」


 カシマールはオレを突き刺すような鋭い目で睨みつけて来た、その気迫は……とても美少女のする表情とは思えない程だった。


「わ、わかった。それで、どこに行けばいいんだ?」

「トミスモ鉱山、ここにお兄さんにとって大事なものがあるのだ」


 トミスモ鉱山? そこに何があるのかは分からないが、オレはカシマールの言うように鉱山に向かう事にした。


「トミスモ鉱山か……あそこは数年前に大きな落盤事故があった場所で今は廃坑になっているはずであるが、そこに何があるというのか?」

「落盤事故? そんな場所行って大丈夫なのか??」

「大丈夫なのだ、そこでお兄さんを呼んでいるのがいるのだ」


 落盤事故って事はそこで何名もの犠牲者が出ているって事だろ。

 そこってまさに浮かばれぬ魂がウヨウヨと漂って良そうな場所じゃないか!

 そんな場所に行ったらオレ、憑りつかれないか?


「こばやし、モッカ……なにかいやなよかんがするっ」

「あの場所は今、一般人立ち入り禁止になっているのである、もしどうしても行くというなら私が許可証を申請するが、本当に行くのか?」

「行かないといけないのだ! このままではマズい事になってしまうのだ!!」


 オイオイオイ、死者の魂に呼ばれて鉱山に行けって、一体そこに何があるんだよ。


 オレ、モッカ、フォルンマイヤーさん、カシマールの四人はトミスモの廃坑目指して出発した。


 しかし、そんな場所に寄り道していていいのか? 離宮の普請工事の期限はもう一か月を切ってあと四週間少ししか無いんだぞ。

 だが、ゴーレムのいない今となっては、オレ達の会社は開店休業もいいとこだ。

それならカシマールの言う事に一口乗ってみるのも悪くは無い。


 トミスモの廃坑に到着したオレ達は、その場で崩れ落ちた鉱山の入り口を見つけた。

 ここに一体何があるというのだろうか。


 オレはヘルメットを被り、明かりを付けて廃坑の入り口から中に入った。

 鉱山の中は一体どうなっているのだろうか。


 オレ達はカシマールの案内に従い、廃坑の中をどんどん奥に進んでいった。


 すると、少し広く開けた場所に到着した、どうやらここが落盤のあった場所の上側らしい。オレが下を見下ろすと、そこにはポッカリと大きな穴が開いていた。


「呼んでいるのだ、この下にいる。お兄さん、ついてきてほしいのだ」


 オレはカシマールに連れられ、廃坑の大穴から下に降りた。

 そこは凄惨な落盤事故の現場跡だった、どうやらカシマールはここの魂に呼ばれたらしい。


 ここでいったい、どんな奴がオレの事を待っているというのだろうか??

 オレは廃坑の中を見渡してみた。

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