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第22話 まさか……呪い??

 オレの新会社、異世界ゴーレムカンパニーに訪れた来客は、フォルンマイヤーさんだった。

 彼女はどういった要件でここに来たのだろうか??


「コバヤシ、早速ではあるがお前に仕事を依頼したいのである」

「フォルンマイヤーさん、お仕事とは……どういったご用件でしょうか?」


 異世界ゴーレムカンパニーが立ち上がって最初の客は貴族令嬢のフォルンマイヤーさんだった。


「お前に頼みたい仕事は、王家の離宮の普請工事なのである。話を聞いてもらえるか?」

「わかりました、内容をお伺い致しましょう」


 フォルンマイヤーさんの話は、第三王子の軟禁されている離宮の普請工事の件だった。

 確か第三王子と言えば、以前隣国と組んで国家転覆を企んだ人物だったよな。

 その軟禁されている離宮の普請工事とは……。


「第三王子はその身分故、下手に留め置く事が出来なかったのである。だからといって好きに動ける状態にも出来ない、だから離宮に現在は幽閉されているのである。だが、その離宮はかつてこのダイワ王国が敵国と戦った際の砦を改装した物なので、今となっては老朽化が激しく、要塞としての機能を発揮できていないのである」


 成程、それで普請工事が必要というワケか。


「期間は一か月。それ以上になると隣国の敵対派によって第三王子を奪われる可能性があるからだ!」


 そうか、期限付きの理由は第三王子を敵対している隣国に奪われて戦争の火種にされない為というワケで、それまでに老朽化した離宮を要塞の様な堅固な建築物に建て直して欲しい、それが出来るのはゴーレムで重量物を扱えるオレってわけか。


「わかりました、その仕事……引き受けましょう!」

「コバヤシ、助かる。お前ならきっと引き受けてくれると信じていたのである。この国の為に一肌脱いでほしい」

「こばやし、ひとはだぬぐってなんだっ?」

「モ……モッカ、それは言葉のアヤってやつだ、本当に服を脱ぐって意味じゃない」


 モッカはそういう言葉とかはよく分かっていないみたいだな。

 ってか、何で日本のことわざが異世界で通用するんだ? あまり考えたら負けな気がする……。


「コバヤシ、それでは頼んだぞ。簡略ではあるがここに契約書を持って来ている。これにサインをすれば仕事の成立だ」


 オレが見た契約書はそれ程理不尽な条件が記入されたようなものではなかった。

 だが一つだけ気になったのが、『期間の間に契約を履行できなかった場合、日時に応じた有償での罰金になる』という事だ。

 まあ、このゴーレムがいればそんな事になる事はまず無いだろうけどな!


「フォルンマイヤーさん? この契約書に書かれている契約期間に仕事が履行できない場合という文面は……どういう事ですか?」

「すまない、私も急いで書類を用意させたので、建築ギルドの様式に書かれている文面をそのままで持ってきたのだ。細かい部分まで目を通す時間が無かったのでな」


 多分だが、これは間違いなく建築ギルドにあのいけ好かないナカタのヤツが入れ知恵をして入れさせた文言だろう、これを悪用すれば契約不履行を盾に小さな会社なら差し押さえる形で買収していく事が出来るからな。

 本当にゲスな奴だ、やり方に反吐が出る。


 だがオレのゴーレムがいればこんな仕事、あっという間に終わらせる事が出来るだろう。

 一つ問題があるとすれば……最近オレの体調がすぐれないという事か。

 どうも体の調子が良くない、確かに仕事が忙しいとはいえ、ゴーレムが働いてる時間にオレは休んでいたはずなんだが、それでも何故か全然疲れが取れず、疲労が溜まっている様な気がする……。


 でもそんな泣き言を言っていたら仕事にならない。

 今はとにかく少しでも早く仕事を進める事を考えないと、万が一オレの体調不良のせいで一か月の契約が不履行になってしまうとせっかく立ち上げた新会社がいきなり不渡りで倒産してしまう事になる!

 それだけは絶対に避けないと。


 だからオレの体調よりもこの会社の未来をオレは選んだ。

 さて、出かける準備をしよう。


 工具とかは現地で建築ギルドの支部に言えば借りる事が出来るのでここからわざわざ持って行く必要は無さそうだ。

 どうしてもお気に入りの工具があるという場合なら工具箱を持ち運ぶことも考えるが、オレにとっての工具はあのゴーレム三体なので細かいものは現地のもので十分だろう。


 オレ達はフォルンマイヤーさんの案内で王族の住む離宮を目指す事にした。

 さあ、出発は明日だ。


 ……だが、オレは結局次の日に出発する事が出来なかった。

 オレの体調不良はまともに立つ事すらできないほど悪化していたのだ。

 この気持ち悪さと体中が悲鳴を上げているような痛み、これで動けと言われても動けるわけがない程だ。


「クソッ、何で……オレの身体が、こんな時に……動かないんだよ!?」

「こばやし、だいじょうぶかっ。モッカ、しんぱいだっ」

「コバヤシ、本当に大丈夫か? 私も心配になってきたのである」


 モッカ、フォルンマイヤーさんがオレの事を心配してくれている。

 オレが不調と聞いてイツマの棟梁とその新弟子たちも駆けつけてくれた。


「コバヤシ、お前さん無理しすぎたんだろう、少し休め」

「でも……工事の契約が……」

「コバヤシ、もしお前さんが体調的に難しいならその仕事、儂が引き受けても良いぞ。お前さんのゴーレム程とは言わないが儂らが本気を出せばかなりの働きになる」


 イツマの棟梁の言ってくれているのは、ありがたい申し出だが……離宮の普請となるとゴーレム無しには成り立たないだろう。

 だからここはオレが行くしかない。


 オレはフォルンマイヤーさん達に、以前オレの作った車椅子を用意してもらう事にした。

 文字通り這ってでも行かないと、契約不履行になってしまう。


 だが全員に出かけるのを止められたオレは一日ゆっくりと休む事になった。

 オレが動けないのでゴーレム達にも支持が出せない、だからこの日はゴーレムも仕事を休ませる事にした。


 一日休んだので少し体力が回復したのか、オレはどうにか出かける事が出来そうな状態だった。

 だが無理をするわけにもいかないのでオレは車椅子を使って離宮に向かう事になった。

 モッカが車椅子を押してくれると言ったので、オレは彼女に任せる事にした。


 だが……少し不安だ、変な所にぶつけたり、オレが乗っているのに無茶して曲がったりして放り出されそうな可能性がある……。


 それでも行かないと、仕事に穴を開けるわけにはいかない。


 だが、離宮工事の仕事に向かおうとしていたオレの前にいきなり現れた少女によってオレは道を遮られた。

 え……この子、オレが以前助けた子だよな。


「お兄さん、相当呪われているね。このままじゃ死ぬのだ」


 オイオイオイオイ、命の恩人に向かっていきなり何を言い出すんだよ!

 それよりも、オレが死ぬって、その不吉な予言……一体どういう意味なんだ!?


 少女はオレの目を見つめ、とんでもない話を始めた。


 それは……オレの予想だにもしない話だったが、その話を聞く事がオレの後々の方向性を決めたと言っても良いだろう。


 オレは彼女の話を聞き、自身の浅はかな行動が自らの首を絞めていた事に猛省した。


 彼女の話は、オレの使うゴーレムについての事だった。

 まさか、ゴーレムがそんな物だったなんて!!


 オレは、ゴーレムの正体やリスクすら知らずに好き放題に使っていたというわけか!

 そんなとんでもないものだと知らずにゴーレムを使っていたオレは、自身の浅はかさを痛感していた。


 オレが聞いたのは、確かに今までの不調が全部納得出来る話だった。

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