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第3話 冒険者……失格??

 古戦場跡にはモンスターが巣食っていたらしく、モンスター達がうようよと姿を見せた。


「よし、右側は俺がやる、左側は頼んだぞ」

「わかったわ、ファイヤーボールの魔法でまとめて吹き飛ばすわよ」


 冒険者達は手慣れた様子でゴブリンやオークの群れと戦闘を開始した。

 戦士が剣でゴブリンの攻撃を弾きながら袈裟懸けに斬りかかる。

 流石はベテランといったところか、冒険者は難なくゴブリンを数体倒した。


「今度はこちらよ、ファイヤーボール!」

「ギャギャギャァッ!」


 魔法使いが杖から放った魔法はゴブリンをこんがりと焼き、数体が消し炭にされた。

 よし、こうなったらオレもスキルで活躍してやる、行くぞ! ゴーレム召喚だ。


「出でよ、ゴーレム!」


 グオゴゴゴゴゴッ!!


 成功だ、どうやらゴーレム召喚のMP切れとスキルの使い方が分かっていなかったのが前回ゴーレムを召喚出来なかった理由だったみたいだな。

 これなら確実にモンスターを倒せる、なんせゴーレムの強さは弱くてもB級、もっと強ければA級モンスターに匹敵するからだ。


 これなら楽勝でモンスター退治が出来るぜ。


 ゴーレムは数メートルから数十メートルになる。

 今回呼び出したゴーレムは大体7メートルから10メートルくらいってところか。

 その素材は土ともセラミックともつかない物で出来ているが、とてつもなく硬い。


 …………。


 ゴーレム、動け! ゴーレム、何故動かん!?


 オレが召喚したゴーレムは動こうとすらせず、その場にうずくまって怯えている。

 どうなってるんだよ、ゴーレムってどう考えてもオークより強いオーガークラスのモンスターだろ?


 だがオレの召喚したゴーレムは、その太い腕で攻撃するどころか、背中を向けてオーク数体のサンドバックになっている。

 一体どうなってんだ、あんな木偶の坊じゃあ戦闘になりゃしないだろう。


「おい、兄さん。一体どうなってるんだよ。ゴーレムが数匹はモンスターを倒してくれるはずじゃなかったのか?」

「そ、それがオレにも……このゴーレム、完全に怯えてしまって、戦闘にならないんだ」

「はぁっ!? 何だよその役立たず。タンクにすらならないのかよ。期待外れもいいとこだな!」


 そ、そんな事言われたって……。


 ゴーレムは怯えた挙句、一目散に背中を向けて逃げ出そうとしていた。

 不幸中の幸いと言えるのはモンスターが抵抗の出来ないゴーレムを追いかけるのに夢中になったので無防備になった背中側からアーチャーと魔法使いの攻撃で全滅できたってところか。


 どうにかモンスターの群れを倒した冒険者パーティーだったが、オレは彼等のリーダーに小さな革袋を叩きつけられて追い出されてしまった。


「この役立たず、お前みたいなヤツはドブさらいでもやってろ!!」


 完全にブチ切れた冒険者達のリーダーの戦士にオレはキツい一言を浴びせられ、追放された形で一人、町に戻る事になった。

 町に戻ったオレは冒険者リーダーがギルドに報告した内容のせいで役立たずのレッテルを貼られ、その後オレが冒険者のパーティーに誘われる事は無かった……。


 どうやら彼はこの町の冒険者ギルドで一番有名だったらしい、そんな人物に役立たずと決められてしまえば他の冒険者もオレを誘おうなんて奴が出てくるわけが無い。


 それに……本来ならゴーレムは戦闘等が終わったら元の土に戻るはずなのに、俺の召喚したゴーレムは土に戻りもせずオレの近くにいるもんだから、デカいのが近くにいて動きにくいたらありゃしない。


 だからといって土くれに戻す方法もわからなきゃ、戦闘にも使えない。

 一体この巨大な木偶の坊どうすりゃいいんだよ?


 オレは仕方なく冒険者ギルドでソロでもできる雑務を引き受けることにした。

 どうやらこのゴーレム、戦闘はからっきしだがドブさらいや荷運びくらいなら出来るようだ。

 だが、いきなり馬車が通り過ぎたりして、毎回鞭を見ると怯えるのはどうしてなのだろうか?


 あまり細かい事は気にしないでおこう。

 どうにか雑務とはいえ、冒険者ギルドでオレは最低限の仕事を見つけたわけだ。

 これでどうにか宿代くらいにはなる。


 それに、ゴーレムは眠る事が無いので、夜中でもずっとそのまま働かせる続ける事が出来るからオレが休んでいる間は単純作業ならゴーレムにやらせれば安心して寝ていられる。


 そのはずだったんだが、何故かぐっすり寝たはずなのに疲れが取れない。

 やはり前の人生での疲労が溜まりすぎてたのかな……。


 荷運びの仕事をゴーレムにやらせていたオレだったが、商隊が荷物を全部積み終わったのでその仕事も三日ほどで終わってしまった。

 他の雑務を冒険者ギルドに紹介してもらったのは良いんだが、これちょっと一人とゴーレム一体だとキツくないか?


 今度オレが依頼を受けようとした仕事は、大雨で雨漏りが酷い家の屋根の補修工事だった。


 そうだ! 工事の請負はオレが前の人生でやっていた業務そのもの、それなら数体のゴーレムを使えばもっと効率的に工事が出来る!!

 人工にんく出しで人手が足りない時はオレも現場作業をしていた事がある。

 あまり体力には自信は無いが、効率よくやる方法と持続力には自信があるからな。


 そう考えたオレは、土のある場所でゴーレムを呼び出そうとした。


「ゴーレム召喚! さあ、出て来てくれよっ」


 だが、二匹目のゴーレムは姿を現さない……。

 どうしてだよ? 土の種類が悪いのか?

 その後何回かゴーレム召喚をしようとしたオレだったが、ゴーレムは結局姿を見せなかった。


 仕方ない、何故ゴーレムが出てこないのか分からないけど、こうなったらもう一度あの古戦場跡に行ってみるか。


 オレはこの数日で稼いだ賃金を使い、馬車で古戦場跡地まで送ってもらった。

 冒険者達がここにいたモンスターを全滅させたのでここには誰もいないはずだ。

 ここでゴーレムが出て来なきゃ、オレの読みがハズレという事になる。


「ゴーレム召喚、さあ、姿を見せろっ」


 ズゴゴゴッゴ……ドゴゴゴゴォッ!!


 成功だ!

 どうやら本当に環境か場所か土かわからないが、同じ条件下にするとゴーレムは新たに召喚できたんだな。

 これでゴーレムの数が三匹に増えた。

 三人工にんくでなら出来る仕事はかなり増えるはず、さあ、町に戻ろう。


 だがそんなオレを見ている誰かがいる事にオレは全く気が付いていなかった。


「モッカさま、アレはいったい?」

「アレはなにっ? あのおとこ、ごーれむをつちからよびだしたのっ?」


 後で分かった事だが、この時物陰からオレの方を見ていたのは獣人の二人組だったようだ。


 新たに呼び出したゴーレムを合わせて三匹、オレは彼等と一緒に街に戻る事にした。


 戦闘には全くからっきしだったゴーレム達だったが、家の補修工事ではそこそこに役に立ってくれた。

 土台の補強などはゴーレムが力仕事を引き受けてくれたが、流石に重量級のゴーレムが屋根の上に登るわけにはいかないので、そこはオレが板で雨漏りの補修をした。

ここでオレの前世の記憶が生きたわけで、ゴムみたいな樹液を使って屋根の補修をしたところ、住人にとても喜ばれた。

 もうちょっと余裕があれば断熱材を入れても良かったかもしれないな。

 だが、この世界で断熱材に当てはまるものが何かもわからなきゃ作り方も分からないからな。そこまでは出来なくても仕方ないか……。


 本来銅貨十枚だった予定の屋根の補修工事の報酬は、銀貨二枚になった。

 まあ本来の予定していた素人の突貫工事と違ったきちんとしたプロによる施工だからな、少しは色を付けてくれたってわけか……。


 オレがゴーレムを使って補修工事を施した屋根は、雨漏りする事も無くそれが評判になったようだ。

 そしてオレはこの異世界でゴーレムを使った建築業を立ち上げる事を考えた。


 さあ、この世界での会社立ち上げに何が必要か調べないといけないな。

 オレは冒険者ギルドに立ち寄り、新たに仕事を始めるにはどうすればいいかを教えてもらう事にした。


 さあ、何から始めるべきだろうか……?

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