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第2話 オレのスキルって……??

 異世界に転移したオレはゴブリンの群れに襲われた。

 だが、オレは無意識にそのゴブリンの群れをスキルで撃退したようだ。


 しかし、あのスキル……一体何だったんだろう。


 オレがスキルを使おうとすると、いきなり地面から巨大な土の手が出てきてゴブリンを殴り飛ばした。

 つまり、オレのスキルは巨大な手を作る事なのだろうか……?


 確かに巨大な土の手を作るスキルだと、何かと使い道はあるかもしれないよな。

 オレは試しにスキルを使おうと念じてみた。


「巨大な土の手よ、出ろぉ!」


 だが、地面からは何の反応も無かった。

 おや? スキルの使い方が違ったのかな。


 だが、何度挑戦しても土の手は地面から出てこなかった。

 途方に暮れるオレだったが、そこを偶然通りかかった馬車に拾い上げてもらえた。

 やはりあれは何かの偶然で、オレは『なれる系主人公』みたいなもんじゃないのかな……。


「あんた、どうしてあんな場所にいたんだ?」

「それが、何も覚えていないんだよな。オレが何故ここにいるのか、それもわからない」

「そうか、まあ困った時はお互い様。近くの町までは乗せてやるよ。それに臨時収入も手に入ったしな」


 そう言って冒険者達が見せてくれたのはゴブリンの耳だった。


「何でかわからないけど、地面に瀕死のゴブリンが数匹転がっていたからな。これを冒険者ギルドに届ければちょっとした臨時収入になるってもんだ」


 アレって……ひょっとしてオレがスキルで吹き飛ばしたゴブリンの成れの果てか。

 つまり、この冒険者達の臨時収入はオレのおかげってわけか。

 まあ、ここは黙っておいた方が良いかもな。

 下手にアレは自分のスキルですとか言わないほうが、変なトラブルに巻き込まれないだろう。


 しかし、ゴブリンを一撃で倒したあの土の手が自在に使えるならオレのスキルも使いものになるのかもしれない。

 町に着いたらスキルの事に詳しい人に話を聞いてみよう。


 ――だけど、何でオレの言葉はこの世界で通じているんだろうか、まあ深く考えたら負けかも知れない。

 まあ、言葉が通じずに戦闘になった挙句に死ぬよりはよほどマシだからな。


 オレは冒険者のおかげでどうにか近くの町に着く事が出来た。

 そして冒険者の人達と一緒に冒険者ギルドに向かった。


「こちらが今回討伐したモンスターの分と、依頼の薬草採取の分ですね、しめて銀貨1枚と銅貨3枚になります」


 なるほど、こうやってこの世界では金を稼ぐのか。

 オレは他に引き取れる物が無いかギルドの受付嬢に聞いてみた。


「えっと、今着ている服でしたら銀貨3枚くらいになります」


 それって凄くね!? 普通に依頼をこなすよりもオレの着ていた服を売った方が高いなんて。

 まあ、この世界ではそこまで上等の服は存在しないみたいだな、その点オレの着ていたワイシャツとネクタイ、スラックスはどうやら高級素材や技術と見なされたようだ。

 本当はウニクロのセール品なんだけどな……。


 小銭の手に入ったオレは冒険者ギルドの人にスキルについて教えてくれる人がいないか聞いてみた。

 すると、教会に行けと言われたのでオレは外に出て教会に向かう事にした。

 その際気になったのが壁に貼られている賞金首の画像だった。

 どうやら子供のようにも見えるが、ずいぶんと凶悪な顔をしているな。


 よく見ると名前が書いてある。『カシマール・シュミッツ』か。


「あの、この壁の似顔絵って誰ですか?」

「ああ、それは呪いの魔法使いだよ。出会った人間を殺して自らの手下にするっていう恐ろしい悪魔だ」


 何だよそれ怖い。

 だがその賞金を見てオレは驚いた。

 この呪いの魔法使いにかけられた賞金は金貨100枚、金貨1枚で一年は遊んで暮らせると考えれば破格の金額だ。


 どうやら銀貨100枚が金貨1枚に相当するらしい。

 昔の日本で例えるなら銅貨が厘、銀貨が銭、金貨が円ってところかな。


 って事はこの呪いの魔法使いの賞金は最低100万以上って事か!

 でも下手にこんなヤツと戦うくらいならもっと別の事をした方が良さそうだ、命は惜しいからな。


 教会に向かう事にしたオレは、町の中で一人の子供を見つけた。

 なんとその子は溝にハマってしまい、動けないようだ。

 誰か助けないのかと思ったが、見事にスッポリと落ちているので下手に助け出そうとすると溝が崩れて大怪我をさせてしまう。


 流石にそんな状態の子を助け出すような技術を持っているのも周りにいないのでこの子は動けずにその場にいたようだ。


 仕方ない、ここは技術持ちのオレが助けてやるとしよう。

 こういう場合は周りの地面を少し削って、それでこの子にロープを握らせればいいんだが、だがロープを握る気力も無さそうだな。


 そうだ、ここはどうにか引っかける部分を作ってこの子を持ち上げさせながら紐を滑車のようにして引きずり上げるか。


 オレは周りの大人に手伝ってもらい、どうにか溝に落ちていた子供を助け出した。


「助かったのだ。このままだとボクがになってしまうところだったのだ……」


「オイ、キミ。大丈夫か?」

「うう、お腹が空いて……動けないのだ……」


 男の子? 女の子?

 ボロボロの黒い服を着た子供はどうやら何も食べ物が無くて彷徨っていてここの溝にハマってしまったようだ。

 このままでは放っておけないと思ったオレは、銅貨一枚でその辺りに売っていた普通の黒いパンと水を買った。


 本当なら菓子パンの一つでもあればクリームパンかあんパンをあげたいところだが、どうやらこの世界のパンはそこまでの文明に至っていないようだ。

 あーあ、この世界でオレは甘いパンやお菓子を食べる事が出来るんだろうか……。


 まあ今はそれよりもこのお腹を空かせた子に何かを食べさせてあげないと。


「ほら、これ喰いな」

「うう、ありがとうなのだ……」


 ニッコリと笑った表情を見ると、どうやらこの子は女の子だったようだ。


「お兄さん、これ……パンのお礼なのだ。お兄さんは良い人なのだ」


 そう言うと女の子はオレに黒い宝石を渡してくれた。

 オレはそれを受け取り、鞄の中にしまい込んだ。


 でも今はこれ以上この子に構っている場合じゃない、早く教会に行かないと。

 オレは女の子の事はその場に置いたまま教会を目指した。


 早くスキルの事を知らないと、銀貨が尽きてしまう。

 その前にどうにか冒険者なり何かで生活できるようにしないと。


 教会に入ったオレは神父にスキルについて尋ねてみた。


「そうでしたか、自身のスキルを知りたいのに以前の記憶が無いから思い出せないのですね」

「はい、そうなんです。どうかオレのスキルを教えてもらえませんか」


 転移前の記憶はあるがその事は黙っておこう。

 そして神父の言うようにオレは水晶玉に手を当て、念じてみた。


 さあ、オレのスキル……どうか当たりでありますように。


 すると、手を触れた水晶玉は茶色に輝いた後、光を激しく放った。


「貴方のスキルがわかりました。貴方のスキルは……ゴーレムマスターです」


 ゴーレムマスター?

 つまり、ゴーレムってあのファンタジーゲームで見かける土で出来たロボットみたいなものを使う能力ってわけか。

 それだとあの地面にいきなり手が生えてきたのも納得だ。

 アレはゴーレムの一部だったわけで、そりゃあ手だけを出そうとしてもスキルと認識されないなら、出てこないのも仕方ないってもんだ。


 でも、ゴーレムって結構強いんだよな。

 それじゃあオレ、十分に冒険者でやっていけるんじゃないのか?


 さあ、冒険者ギルドに戻ってみよう。


 オレが教会から冒険者ギルドに戻ると、その途中にいたあの黒い服の少女は姿を消していた。

 多分少しはパンを食べられた事で動けるようになったのかな。

 あの子がくれた黒い宝石は、その後ギルドで鑑定してもらったものの、ただの黒い石だったみたいで……あまり価値のあるものでは無かった。

 だからといって捨てるのもせっかくくれたあの子に悪いから持っておこう。


 そして、オレは自身のスキルがゴーレムマスターだったとギルドの人に伝えた。

 すると、このスキルはかなり珍しいものらしく、オレは冒険者のパーティーに入れてもらえる事になった。


 これで当分は生活できそうだ。


 だが……それはオレの甘い考えだった。

 オレ達は昔の古戦場跡に巣食うモンスター退治の仕事を請け負った。

 当然オレもその主要メンバーの一人だ。


 オレのスキル、ゴーレムマスターならモンスター退治なんて余裕で可能だろう!

 さあ、どんなモンスターでも出て来やがれってんだ。

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