それを見たスオウは腹を抱えて笑った。そして「なんだ、心配して損した」と、また大笑した。彼の横で、レオさんは嬉しそうにお菓子をパクつく、ティーラは何がなんだかわからず首を傾げた。
「ククッ。甘そうな菓子に、ミルクたっぷりで甘そうなコーヒー、それもレオの好みかよ」
「うるさい。ティーラさん、そろそろ夕飯の支度かな?」
レオさんは応接間の柱時計を見ながら言った。
「ほんとうだわ。レオさん、今日のメニューはハンバーグにしようと思います。スオウ様は嫌いなものがあったら教えてください」
彼は首を振り。
「大丈夫、好き嫌いはないよ。夕飯のメニューがハンバーグか、俺もいっしょに手伝おうか?」
ズズッと残りのアイスティを飲み終え、オオカミ姿のままだったスオウ様は人型にシュッとなり、シャツの袖をまくった。ティーラは一応、お客様だからと断ろうとしたが、彼はサッサと応接間を出てキッチンへと行ってしまう。
これでいいのかとティーラはレオさんを見ると、彼もまた人型になり、着ているシャツの袖を捲っていた。
「え、あの、レオさん?」
「スオウは、ああ見えて手先が器用で料理が上手い。ティーラさん、今日はみんなで夕飯を作ろう」
「は、はい」
ティーラは部屋に戻り、洗濯済みのエプロンを準備して、3人でキッチンに並び夕飯の支度をはじめた。
ティーラの横でテキパキと動くスオウ様とレオさん。ティーラはもっぱら洗い物をしていた。しばらくして出来上がった夕飯のハンバーグは手の大きな2人が作ったからか、大きい。
いただきます。と食卓を囲み、ティーラは出来立てのハンバーグをひとくち頬張る。苦汁がジュワッと広がるハンバーグ、ソースもハンバーグを焼いて出た肉汁で作ったからか濃厚。
ティーラがいつも作るハンバーグよりも美味しい。
「美味しい、すごく美味しいです」
「ハハ。そうかそうか、よかった」
「スオウはあいかわらず、料理が上手いな」
レオさんの言う通り、スオウさんは料理上手で、3人分をほとんど1人で手際よく作っていた。話によると、冒険者のスオウ様は一度冒険に出ると、ひと月ほど野営が続く。
「パーティじゃなく。1人で冒険に出たら、洗濯も料理も自分でやらなくちゃならないからな。レオも出来るだろう?」
「ああ、やってきたからひと通りは出来る。でも、ティーラさんの料理が美味しいから、いまは手伝うだけだよ。いつもありがとう」
「い、いいえ」
ティーラはレオさんに褒められて、嬉しそうに頬を赤らめた。