夕飯を一緒にレオさんと作り、食べ終え後片付けをするティーラに、レオさんは隣でコーヒーを淹れながら祭りの話を始めた。
「ランタン祭り、ですか?」
「うん。来月になったら王都で、ランタン祭りが開催される」
レオさんの話を聞くと。ランタン祭りとは3日間王都全体を色とりどりのランタンが彩り、たくさんの出店も出て、最終日になると願いを込めたランタンを飛ばすと教えてくれた。
「ランタンに願いを込めて飛ばすなんて、素敵ですね」
「ああ、そうだね」
「レオさんはいつも、どんな願いをしていたんですか?」
ティーラはランタン祭りにレオさんも参加していると思い、そう聞いたが、レオさんは困った表情を浮かべた。
「その祭りの3日間は森の管理が忙しくて、祭りに参加したことがない……」
「え、そうなんですか? でも、初めての祭りをレオさんとまわれるなんて……嬉しいです」
「僕もティーラさんと祭りに行けるのは嬉しい。参加は最終日の1時間くらいになるけど、一緒に行こう」
ティーラは「はい」と笑顔で頷いた。あとレオさんが守る森に不審者が増えるとも話した。それは祭りにかこつけてやってきた不届者たちが、この時期に森に生える魔女が栽培していた魔力茸と呼ばれる、トーラキノコを狙っていると。
「安心して、力の強い僕の仲間が多くきてくれるから、森の管理は大丈夫だけど……ティーラさんは祭りの開催される3日間、僕の側にいて欲しい」
「レオさんの側。はい、わかりました」
「僕がしっかりティーラさんを守るから、安心してね。それとその日、屋敷にたくさんの仲間が来るけど、ティーラさんの話はしてあるからね」
たくさんの仲間だと聞いて、ティーラは焦った。
「あのレオさん、寝る場所、食事はどうするのですか?」
「ん? 寝る場所と食事? あぁ大丈夫。食事はみんなが持ち寄り外でバーベキュー。ここに来てくれる仲間は、みんなは冒険者ばかりで、外にテントを張って寝るよ。風呂は交代で入るけど」
「外にテント?」
それと。朝晩交代で森を見守るから、その3日間はどうしてもうるさくなるから、寝れる時に一緒に寝ようとレオさんは言った。
次の日、ティーラは街に買い物に来ている。
いつもの通り店を周り、昨夜レオさんからランタン祭りの話と、屋敷にたくさんのレオさんの仲間が来る話を思い出していた。レオさんの話にはじめはティーラも驚いたが、ランタン祭りは楽しみでワクワクしている。
「ランタンにどんな願い事をしようかしら?」
パン屋にウキウキと向かって歩くティーラを見た、貴族服の男性が「……ラ?」と呟き、彼女をずっと見ていた。