カラフルなキャンディを選び、選んだ瓶に詰めてもらう。ティーラはそれをウキウキして見ていた。それは両親が亡くなってから、お菓子を買うことがあまり無かったから。
(可愛い瓶の中のキャンディがすべて、私のもの。大切に食べよう)
「ティーラさん、アーン」
「アーン?」
口を開けた、ティーラの口の中に甘いキャンディが、コロンと入ってくる。それはティーラの好きな苺のキャンディだった。驚いてレオさんを見ると、彼の口にもキャンディが入っている。
「甘くて美味しいね。店の人におまけしてもらった」
「そうなんですか。このキャンディ、とても甘くて美味しいです」
「じゃ。今日買った分を食べ終わったら、また来ようね」
「はい、来ましょう」
古本屋、雑貨屋、お菓子屋と、
また一つ、ティーラの好きな店が増えた。
季節は初夏を迎え、汗ばむ季節がやった来た。
ティーラが着るメイド服も半袖になり、外で洗った洗濯物を干し終え、家の中の掃除を始めた。
キッチン、お風呂とトイレ、レオさんの部屋の掃除を終えた。ついでに自分の部屋の空気を入れ替えようと、入り口と扉に待っていた箒を立てかけ、ティーラは部屋の窓を開ける。すぐ森から吹く風になびき、木々、草花の香りをティーラに届けた。
「涼しい。風が気持ちいい」
窓から見える森の緑に心を癒し、次の掃除に向かうティーラの瞳に、あの日に買って貰って貰った花の絵が入ったボンボン入れがうつる。たくさんあった綺麗なキャンディは、あと10粒くらいになっていた。
(もうすぐ飴がなくなる……また、レオさんと街のお菓子屋に行きたいな)
ティーラはそんなことを考え、扉に立てかけておいた箒を手に取り、次の掃除へと向かった。
「ふうっ、今日も雨ですね」
「ああ、雨は嫌だね」
「はい、苦手です。こう毎日が雨だと、外に出るのが億劫になってきます」
「それわかる。僕は外に出たくなくて、今日の仕事を書類整理にしたから」
今日一日中、部屋で執務中のレオさんにお茶を入れて、彼の部屋で雨の話、夕飯の話と他愛もない話をしていた。
その休みが終わりだ。というように、部屋の柱時計がボーンボーン鳴る。時刻は夕飯の仕込みをする時間、ティーラは飲み終えたカップをトレーに乗せ部屋を出る前、レオさんに夕飯のメニューを伝えた。
「レオさん。今日の夕飯は鶏のソテーにしますね」
「お、いいね。じゃ、僕も手伝うよ」
「え? 仕事はいいんですか?」
レオさんは「もう終わってる」と執務机の書類をサッと片付け、ティーラの手からカップが乗ったトレーを奪いキッチンに向かっていってしまう。「あ、待ってください」と、ティーラは慌ててレオさんの後を追った。