「そんな冷たい事を言わないで、私達は愛しあっていたじゃない! 急に冷たくなったのはそっちでしょう?」
「僕達は愛し合っていないし、冷たくもしていない。君が勝手にそう思っているだけだ」
「嘘よ!」
話がかなり行き違えているとティーラは思ったが。
どちらも嘘は言っていないようにも感じた。セジール様に性格が似ていて、ちょっと思い込みが激しい所がある、アミア様の方が怖い。
「毎日、屋敷に来てお父様と執務室で話していたわ。それって。私と結婚して、レオが伯爵家の当主になるから、お父様から森の管理の仕事を任されていたんでしょう? 夕食も何度かご一緒したし」
アミア様の言葉に、レオさんは違うと首を振り。
「悪いけど違う。森の管理を任されていた伯爵が、歳で領地に帰る事になった。彼の息子は王宮で働く騎士で森の管理は出来ない。彼らの娘には婚約者がいない。僕が王家から次の森の管理者に選ばれただけ」
「え?」
「森はかなり広いから、引き継ぎにも時間がかかる。僕が頻繁に屋敷へ訪れたのは仕事の引き継ぎもそうだけど、部屋を見に来ていた。食事は君の父上にぜひ夕飯をと言われて、ご馳走になっていたんだ。それに君達が住んでいた屋敷は、元々王家のものだから」
「じゃお父様が素敵な男性が、ここに来るら挨拶しなさいって、私に言ったわ。お母様も素敵な男性ね、こんな人があなたの婚約者だとよかったわね、頑張りなさいといった……レオだって私に笑って挨拶したり、手土産だって持ってきていたじゃない」
「普通、会ったら挨拶するだろう? 手土産は夕飯をご馳走になったお礼だよ」
彼女の両親は森の管理者に選ばれた、長身で素敵なレオさんをに気に入り、まだ婚約者がいない娘の婚約者にしたいと思い、娘をその気にさせた。
ただの仕事の引き継ぎなのに、アミア様はレオさんが頻繁に屋敷に来るから、彼は私の婚約者になりたくて会いに来ているのね。と勘違い思い始めた。
(ちゃんと話さなかった!彼女の両親も悪いわ)
「嫌よ。レオ、私の婚約者になりなさい!」
「無理だ。第一爵位がない僕には僕無理な話。ちゃんと身丈のあった婚約者を探したほうがいいし、君の両親とお兄さんにもそう伝えて欲しい、迷惑だ」
レオさんは「迷惑だ」とはっきり言葉にしたのに。
「いや、いやよ。絶対にあきらめないわ!」
アミア様は泣きながら乗ってきた馬車に乗り込み、走り去っていった。綺麗なアミア様の想いを、レオさんが断るのは、自分が獣人だだからかもしれない。
「はぁ、疲れる。いくら言っても聞かない人だ……」
「ほんと、疲れるわね」
ティーラはアミア様が来たて、レオさんから少し離れた位置にいた。レオがティーラさんまで巻き込まれないよう、自分からアミア様に近付いた。
「ティーラさん、せっかくのピクニックがごめんね」
「大丈夫です」
「初めは僕も、あの子の事を綺麗な人だと思った。……でも、あの家族は獣人が嫌いみたいなんだ。招待を受けた夕飯の席でも、獣人が王都に住むなんてとかね。――特に、あの子のお兄さんがそうなんだ」
レオさんは悲しい瞳をした。